人権リスクがあることが判ったらどうするか

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 昨日は1日涼しくて過ごしやすかったですね。
 しかし、町中に住んでいると、夜は、イキって走る車やバイクの音がうるさくて窓を開けて寝られません。

 ちむどんどんが、全開で寝ているのを見ると羨ましいです。

 さて、昨日は、人権リスクの洗い出しと評価をすることが大切であることについて書きました。

 今日は、人権リスクを見つけたら次にどうしたらいいか、について考えます。

ビジネスと人権に関する指導原則

 ビジネスと人権に関する指導原則は、人権リスクの評価をした後は、前者的に関連する職務部門と手続に組み込んで適切な措置をとるべきことを示しています。

19.企業は、人権への悪影響を予防、軽減するため、人権への影響評価で得た調査結果を全社的に関連する職務部門及び手続に組み込み、適切な措置をとるべきである。
(a) 実効的に調査結果を組み込むには以下が必要である。
 (i) そのような影響に対処する責任が、企業内の適切な階層の適切な職務部門に割り振られていること。
 (ii) 企業内の意思決定、予算配分、監督手続が、そのような影響への実効的な対応を可能にしていること。
(b) 適切な措置は以下に応じて異なる。
 (i) 企業が悪影響を惹起または助長しているか、それとも商取引関係先による企業活動、製品またはサービスが悪影響に直接関連していることにより関与しているに過ぎないのか。
 (ii) 人権への悪影響に対処する場合の企業の影響力の範囲。

担当部門と予算の決定

 人権リスクといっても、全てが1つの部門に関係するわけではありません。

 製造過程で従業員に対する安全衛生上の人権リスクがあれば生産部門、購入している材料調達先の会社に人権リスクがあれば購買部門、従業員の労働体系に人権リスクがあれば人事総務部門・・・というように、関連する部門に割り当てます。

 そして、それらをまとめて把握して調整する部門も決めておく必要があります。

 その上で、必要な予算もつけましょう。

製品のリコール

 もし、人権侵害が進行中であれば、人権に対する負の影響を止めなければなりませんし、今後の人権侵害を予防する措置を取らなければなりません。

 人権侵害のある原材料を使った製品を作って市場に出している場合は、リコールを検討することもしなければなりません。

 製品自体に欠陥があって消費者に害を及ぼすおそれが高い時はリコールすることも当然という感覚を持てますが、製品自体は安全な時に人権侵害があることを理由にリコールを決断することは勇気と気合いが必要になるかもしれません。

 しかし、消費者が害を被ることと、生産者が害を被っていることとは、人権侵害という意味では全く同じことですから、リコールを検討する必要があります。

是正の申し入れ

 取引先が人権に対する負の影響を与えているときは、それを是正してもらうよう申し入れをすることが筋です。

 そうしないと、人権侵害に荷担していると認定されて、社会的な制裁を受けることになるからです。

 しかし、そうはいっても、大企業の下請けをしている会社が、是正の発言力を持てることはそう多くはないでしょう。

 いやなら取引を辞めればいい、といわれるかもしれませんが、生活がかかっているので簡単に取引を辞めてしまうわけにもいきません。

 サプライチェーンの中で力を持たない中小零細企業にとって、人権リスク軽減・防止の取組みはかなりハードルが高いものであるといえるかもしれません。

まずは自社でできることを

 立場や事情によって、人権リスクへの取組みが限定されることはあると思います。

 しかし、だからといって何も考えずに漫然と事業を継続していると、人権リスクはいつまで経ってもなくなりません。

 まずは、自社内の人権リスクから取り組みを初めてみましょう。

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