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【ハッとする歯の話】歯磨きできますか?

ワンちゃんと生活していく上で、意外と重要なことが歯磨きです。犬は虫歯になりません。虫歯を起こす細菌が口の中にいないんです。ただ、歯周病の原因になる菌がたくさんいるんです。


1.歯磨きの目的

犬は虫歯になりません。道路に落ちている食べ物を食べたりスカベンジャーの習性を持っているので、犬の口内は高い殺菌力を持ち、虫歯の菌が口の中にいないんですね。ですが、歯周病にはなります。6歳以上の犬の80%が歯周病にかかっているといわれていますが、実は人間で40代では40%程度といわれていますので、人間の倍の割合!つまり歯周病でないワンちゃんのほうが少ないってことですね。

歯周病の怖いところは、治療ができず、ほっておくと進行してしまう病気であるということです。

よく子どもが歯磨き教室に行って、赤い液体で歯垢が残っているかということをチェックするかと思います。この歯垢(プラーク)というのが歯周病の原因ですね。歯垢の中の細菌が出す代謝物が歯肉などに炎症を起こし、歯周病を起こしていきます。さらにこの歯垢が唾液中のカルシウムにより石灰化したものが「歯石」ですが、この歯石は歯ブラシではとれません。。。硬くなった歯石はスケーラーではぎとるしかないのですが、この歯石がたくさんあると、大変です。状況によっては、全身麻酔をするなんていうケースも出てくるのですが、特にシニアになってからの全身麻酔は犬にとっても負担になってしまいます。

そもそもプラークが柔らかいうちに掃除をして、歯石になるのを防ぐ、歯周病になるのを防ぐ、というのが「歯ブラシ」の目的です。


2.どんな歯ブラシを使うのがいいの?

では歯ブラシグッズはどんなものを使うのがいいのでしょうか?一番いいのは人間と同じ、歯ブラシタイプのものですね。歯垢は歯周ポケットにたまります。掻き出すことで歯垢を歯石になってしまうのを予防できます。

一番お勧めのブラシは歯ブラシの中でも一番柔らかく毛先が密に集まっている「テペ スペシャルケア コンパクト」というものです。

こちらは本当は人間用です。特に歯周病の人にも優しい非常に柔らかな毛先のものです。同じテペのものでも、この「スペシャルケア」というのがお勧めです。


3.歯ブラシってどうやるの?

犬にとって、歯ブラシというのは健康のために必要!という考え方はありません。なので、いかに「歯ブラシの時間を好きになってもらうか」が大事です。歯ブラシは毎日するのが大事です。歯石には24時間~48時間でなってしまうという研究結果もあるので、できれば、毎日、少なくとも2日に一回はやりたいところです。

ただ、それを犬の一生15年やり続ける!となったら、嫌いにさせないのが一番です。ブラシを持ったら、すぐに駆け付けて、「わーい、歯ブラシタイムだ🎵」なんてなってくれたら嬉しいですね。

なので、一番最初にやるのは、「歯ブラシを好きになってもらうこと」です。その次に歯ブラシで磨けるようにしていきます。歯ブラシは前を磨くだけではだめですね。奥歯も歯の裏側も磨けるようにしていきましょう。


4.歯ブラシトレーニングの仕方

トレーニングの順番は大きく分けて以下のようになります。

①歯ブラシを好きになってもらう
②口の中を「シュッシュ」と歯ブラシされる感触に慣れてもらう
③歯ブラシで歯の表側を磨いていく
④歯ブラシで歯の裏側や奥歯も磨いていく
⑤ご褒美をなくしていく

ではそれぞれのプロセスについて詳しく説明していきますね。

①歯ブラシを好きになってもらう

よく歯ブラシを噛んで壊しちゃうなんてことを聞きますが、そもそも遊ぶものではないよ、と教えてあげたいですね。なので、歯ブラシにおいしいものを付けます。チュールやコングペーストでもいいですね。塗ったら、ワンちゃんの口の前に歯ブラシを差し出してみます。ペロペロ舐めてくれればOK、舐めずに逃げてしまうようならさらにおいしいものにしましょう。ワンちゃんが「歯ブラシ」自体にいい印象をもってくれるように条件付けしていくのが非常に大事です。

Tips
「え!歯磨きなのにチュールとか塗ってもいいんですか?」というご質問をいただきますが、このフェーズではまだ歯磨きをしません。「歯ブラシ」自体を好きになってもらう、という段階です。最終的にはチュールなしでも、歯磨きできるようにしますので安心して、おいしいものを使ってくださいね!

もしこのときに歯ブラシを噛んでしまったりするようであれば、噛んだ瞬間にすっと手を引きます。「噛む=おいしいものが食べれなくなる」となれば、噛む行動量が減っていきますよ。辛抱強くこの練習を続けましょう。

歯ブラシを見せたら、近づいてくる、おいしいものがあるんじゃないかといって口を開けるようになってくれたら、次の段階に進みます。


②口の中を「シュッシュ」と歯ブラシされる感触に慣れてもらう

歯茎のところをシュッとされるのはどちらかというと嫌な感触ですね。なので、まずその感触に慣れてもらいます。歯ブラシを持って近づいてきて、ペロペロと舐めてくるようになったら、そのまま少し手を動かしてみましょう。

この「少し」というのが非常に重要で、ワンちゃんが嫌がるペースでやってはいけません。最初は1ストローク「シュっ」とやって、また静止する、くらいでかまいません。それでも、夢中になってペロペロしているようなら、2ストローク「シュッシュッ」とやる、というように増やしていきます。

もしワンちゃんが途中で嫌がったり、顔をそむけるようなそぶりが見えたら、すぐに止めて、近づいてくるか、舐めてくれるか、だいじょうぶだったら、回数を1回からやり直します。

つまり、「いやがらせたらダメ」ということです。ついつい、やりすぎちゃう飼い主さんが多いのですが、それをすると「歯ブラシ嫌い」になってしまいます。ゆっくり、その子のペースで進めていくようにしましょう。

舐めている間中手を「シュッシュ」と20ストロークくらい動かしていけるようになったら、次の段階に進んでいきます。


③歯ブラシで歯の表側を磨いていく

ペロペロ舐めているときに動かしていた手のストロークの向きを変えていきます。前歯だけではなく、斜めにして犬歯が磨けるか、さらにその少し奥にある肉を切るための大き目の歯が磨けるか、なんてことをトライしていきます。

ここでも焦らないことが肝心です。歯ブラシを見せただけで逃げるようになったら、①からやり直しになってしまいます。嫌がるそぶりがでないように、ゆっくりゆっくりやっていきましょう。

1日目:前歯ができた
2日目:前の歯+1本できた
3日目:前の歯しかできなかった
4日目:前の歯+1本できた
5日目:前の歯+1本+半分の歯ができた

このくらいのペースでかまいません。ただ、一日一回だと、このくらいゆっくりのペースになってしまうので、慣れさせるときは、一日何回でもやっていきましょう!そうするとより早く慣れてくれると思います。


④歯ブラシで歯の裏側や奥歯も磨いていく

さて、ワンちゃんの歯は全部で何本あるか知っていますか?乳歯は通常28本で、永久歯になると、42本にまで増えていきます。歯にはそれぞれ役割があり、

前歯・・・小さな切歯で獲物をつかむ
犬歯・・・鋭い牙のような形で獲物をしとめる
前臼歯・・・犬歯のすぐ後ろにあり、裂肉歯といわれる歯を含む。肉を細かく丸呑みできるサイズに切り裂く
後臼歯・・・奥側にあり、裂肉歯といわれる歯を含む。噛み砕く役割をもつ

これを合計して42本というわけです。どうですか?これを全部裏も表も磨いていくのが歯ブラシです、となると、結構大変ですよね。特に犬にとって重要なのは、「裂肉歯」といわれる歯です。ものを食べるときはほぼこの歯を使っているんですよ。犬歯よりも奥にある歯ですので、意外と磨けていないという方もいらっしゃるんじゃないかと思います。

まず表側を磨けるようにするために、脇から差し込むようにして、奥歯にタッチしていきましょう。タッチしても大丈夫、になったら徐々にブラッシングを開始します。

奥歯の練習とあわせて歯の裏側も練習していきます。マズルをつかんで口を開けることができるのであれば、口を開けて磨く、という練習をしてもかまいませんが、もしマズルに触れない場合は、犬歯の奥の隙間から歯ブラシを滑り込ませたり、ペロペロ舐めて歯の間に隙間があるときに、正面から差し込んでみたりしましょう。無理してこじ開ける必要はありません!

ここでも嫌がらせないことが一番の近道ですので、ゆっくりゆっくりそっとやっていくようにしましょう。


⑤ご褒美をなくしていく

ここまでできるようになったらいよいよご褒美をなくしていきます。歯ブラシの目的は歯垢を掃除するためのものなので、おいしいものを使っていては、本来の目的を果たせません。人間と同じように、ご飯を食べた後に歯ブラシをするのが一番いいですよね。

でもいきなりなくすと犬もびっくりしてしまうので、徐々に減らしていきます。

チュールのような液体を塗っている場合は、そのペーストを水で薄めていきましょう。

あるいは歯磨き粉をに切り替えていくのもいいですね。犬の好きなチキン味などの歯磨きペーストもあります。

※最初のうちからこの手法を使うと「歯ブラシ=大好き大好き!」までいかないかもしれないので、大好きになってからすこーしずつご褒美をなくしていきます。

または、今日はペーストありの日、明日はペーストなしの日というように、ご褒美の頻度を減らしていくのも有効です。


5.歯磨きができるようになると

歯磨きができるようになると、犬の健康寿命が延びることはもちろんですが、飼い主さんにとっての負担も減ってきます。家族の中でも、お母さんしかできない、だと大変ですよね。家族みんなが犬の歯ブラシができるようにしていけると、良いと思います。

このトレーニングは社会化期から行うと良いといわれていますので、子犬を迎えた瞬間からやっていきましょう。もう成犬になっているワンちゃんでも時間をかければ、歯ブラシトレーニングはできますよ。

歯ブラシトレーニングが完了するまでは、無理をせず、ガムやおもちゃで歯垢を取るタイプの遊びを併用していくといいと思います。

また歯磨きは電動歯ブラシを使うのもいいと思います!ワンちゃんが慣れてきたら、徐々にレベルアップしてきれいな歯をキープしましょう。


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