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【ぐんぐん大きくなるよ】犬の行動の成長のステージ

犬の平均寿命は約15年といわれるほど長寿になってきていますが、よく人間でいうと何歳という言い方をしますよね。

こうした考え方は、犬の寿命やライフステージを考えるにはいいかもしれませんが、実は犬のしつけを考えた時、犬の行動や認知の発達の程度で学習内容を変えていく必要があります。発達行動学では犬の成長ステージを以下8ステージにわけて考えていきます。

1.胎生期:母親の胎内にいる時期
2.新生子期:出生から生後10~14日頃
3.移行期:生後13から19~21日頃
4.社会化期:生後19日から12~14週(生後約3週間から3.5か月)
5.若年期:3から5~14か月
6.青年期:6~16か月から18~24か月
7.成熟期:24から36か月
8.高齢期:7才以降

犬のサイズや犬種によって、時期にずれが生じますが、各ステージで犬の行動がどうやって変容していくのか、ご紹介します。


1.胎生期**

まだ母親のおなかにいる時期です。犬は多胎動物ですが、隣り合わせになった兄弟のワンちゃんの性別によって、性別に特化した行動の発達の強弱が変わるということがわかっています。例えば・・・

・メスの犬がオスに挟まれていると、男性ホルモンのテストステロンの影響で大きくなってからマーキング活動やマウンティング行動の増加がみられます。

・オスの犬がメスに挟まれていると、攻撃性が低くなったり、排尿時に、片足を上げず、しゃがんでするようになります。

こうしたホルモンの影響は、兄弟犬からだけではなく、もちろん母親からの影響も大きくなります。妊娠期に大きなストレスを感じている母犬から生まれた子は、成長してからの生殖行動や行動などに影響することがわかっています。妊娠期・授乳期の母犬にはできるだけリラックスしてもらい、ストレス状態を避けるようにしてください。


2.新生子期

生後14日頃までの生まれたばかりの時期ですので、皆さんも実際にご覧になったことがほとんどないと思います。生まれてから5日目くらいまでにはい回るようになり、10日目くらいまでに前足で体重を支え始め、15日目くらいから後ろ足で体重を支えることができるようになり、歩き始めます。目も耳も閉じた状態からようやく開き始めてきます。嗅覚や触覚にも反応を示しますが、この頃はまだ反射反応で、大脳を介さない神経中枢による筋肉の反射的な反応です。

たとえば、母犬がおしりをなめることにより排泄をしたり、母犬が舐めると体の温かさに向かって移動し寄り添います。これは巣から離れないように安全を確保する行動ですね。

この頃はまだ外の世界を知覚できているわけではないため、特にしつけはおこないません。ただ、将来的なストレス耐性を獲得するために、「手に乗せて優しくなでる」「子犬を30秒程度少しだけ冷たい床の上に置く」などして環境エンリッチメントを心がけるとよいでしょう。こうした短時間のハンドリングなどを経験することで、その後の成長過程において探索行動が増加し、中枢系の成熟系が早いという研究結果があります


3.移行期

生後13から19~21日頃で、この頃になると神経系および行動が発達し始めるころです。何か音がすると「驚き反応」とその音源を探す「探索行動」が見られます。また徐々に母親から自立し、自発的な排泄が始まります。さらに兄弟犬とのやり取りの中で社会行動(ボディーランゲージなど)が見られてきます。

詳しいボディーランゲージはこちらを見てください。

いよいよ、この時期から学習が本格的になりますので、いろんな刺激に少しずつ慣らしていきましょう。感触が違う床やマットを歩かせてみたり、多様な音を低い音量で聞かせるなどをしていきましょう。


4.社会化期

移行期が終わっていよいよやってくるのは社会化期です。この頃になるとペットと飼い主が出会う時期になりますが、実はこの社会化期は生後2.5か月目までと非常に短いのです。中枢神経系が成熟し、すべての感覚器官が機能し始めます。また、刺激と反応(古典的・オペラント条件付け)の学習も成熟期レベルまで達します。歯も生えそろい、固形物の摂取もできるようになってきます。排泄物のにおいも区別がつくようになり、寝床で排尿を避けるようになります(捕食者に寝床を気づかれないように、また寝床を清潔に保つための行動ですね)。

この頃はまだ好奇心のほうが恐怖心より強く、いろんな新しいものにも積極的に接近したり探索行動を行います。ボディランゲージも母犬や兄弟犬、周辺環境とのやり取りによって、増えてきます。こうした経験により、社会的行動パターンがほぼ形成され、その後の生涯における刺激や状況への反応の仕方がほぼ形成されます。

この時期にたくさんの刺激に触れさせて、怖いものを作らないことが重要です。人間でも男性、女性、おじいちゃん、子ども、制服を着た人、人混みなどいろんなパターンに慣れさせます。ほかにも車や電車の音、首輪やリード、クレートなど、犬がこれから生涯触れるであろうすべての刺激に少しずつ慣らしていくことが重要です。特に犬語が理解できない犬にならないよう、他のわんちゃんとも積極的に触れ合っていくようにしましょう。詳しくはこちらの記事も参考にしてくださいね。


5.若年期

8週目くらいから犬の恐怖心や警戒心が芽生え始め、12週目くらいから社交性が減少してきます。恐怖や警戒心がない、なんでも興味本位で近づいて行ってしまうと、自然界では危険ですよね。生存本能として、「これはなんだろう?怖いから近づくのをやめよう」という気持ちが芽生え始めるのが、社会化期の終わりで、およそ3から5~14か月に若年期を迎えます。

新しいものへの興味が少なくなったからと言って、社会化ができないわけではありません。社会化期までに学習した内容がベースとなり、これから先に学習速度が低下し始めますが、まだまだ成長期です。いろんなことを学習させていきましょう。

また、この頃から問題行動が多く見られます。3か月齢までは「甘噛みが少しあるのよ」「帰宅時に飛びついてきてかわいい」となっていたのが、徐々に体のサイズも大きくなり、飛びつかれると怖い、甘噛みも本格的な噛みに変わってくるのがこの時期です。飼い主さんにとっても難しい時期になり、6か月ごろでの飼育放棄が一番多いのです。

Tip
こういったことを抑止するのには、前述の社会化とベーシックトレーニング両方を行っていくことが必要です。早すぎることも遅すぎることもありません。犬を迎えたら両方行っていくようにしましょう。

若年期は性成熟とともに、青年期に移行していきます。


6.青年期

いわゆる人間でいうところの青年期ですね。性成熟から社会的に成熟するまでの期間を指しますが、個体や犬種により差があります。

一般的に小型犬は早熟で、大型犬は晩熟です。性成熟も小型犬は6か月ごろ、大型犬だと16か月ごろとかなり差があります。また小型犬でもオスは7か月以降、雌は6か月以降とメスのほうが早熟です。

7.成熟期

社会的な行動が完全に成熟してきたころで、約24か月~36か月目以降からシニア期に差し掛かるまでを指します。攻撃行動、生殖行動、コミュニケーション、摂食行動などの社会的行動が成熟し、成犬として落ち着いてきます。

この頃は人間同様、学習能力・スピードは子犬の頃に比べると低くなりますが、だからといって行動を変えることができないわけではありません。継続的な社会化、ベーシックトレーニングを行っていきましょう。


8.高齢期

寿命は小型犬のほうが長いため、シニアになるのも大型犬のほうが早く、7歳ごろからといわれています。小型犬は10から12歳くらいからシニアになります。シニアになると、聴覚・視覚が衰え、筋肉も衰え、角膜白濁、関節炎などの健康上の疾患にも注意が必要になります。老化とともに起こる身体的異常や行動の変化をよく観察しましょう。

シニアになったからと言って、トレーニングを行わなくてよいということはありません。遊びやトレーニングを行って精神的刺激を与えるようにします。こうすることで認知機能の低下を抑止することができます。


いま、あなたのワンちゃんはどのステージにいますか?それぞれのステージの行動特徴や学習内容を理解したうえで、適切なトレーニングを行っていきましょう。特に社会化期・若年期・青年期にいるワンちゃんを飼っている飼い主さんはラッキーです!社会化やトレーニングを行って、犬が犬として楽しい生活が送れるよう、また飼い主さんも犬との生活を楽しめるよう、問題行動を予防していきましょう!



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