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PMP資格保有者が思う「日本の企業文化」独特のPMの難しさについて

こんなnoteを書いた通り、去年のGWから7月末はPMPの資格試験勉強に全力投球していました。

吉幾三で歌いだしたくなるくらい、日本の職場環境ではプロジェクトマネジメントは機能しづらいケースがあります。

PMという概念や言葉が浸透する前に、SaaS系スタートアップを中心にPdMという言葉が先に認知されがちな理由にもなる、日本の企業文化とPMの食い合わせの悪さについて書いてみます。

権限委譲が不得意な企業文化で起きること

昨今の受託側が発注者に勝つ裁判で登場する「特定のカテゴリではPMよりも役職が上かつ社歴の長い人物が反旗を翻し、全体の方向性を真っ逆さまに変えさせる大混乱」は、日本型組織の権限移譲の失敗です。
PMとして半端な権限移譲だと、どうにもできないんですね。私も経験したけれど、似たような夢を見て、メメントみたいにやり直して反芻して考えることがあります。

この日本IBMに野村HDが敗訴した件は「仕様変更凍結」がどれほどの意味を持つのかを知らない人にとってピンとこないはずです。

1)プロジェクトをやる意味や目的を明確にする
2)目標ローンチ時期を決める
3)仕様に必要な要件を目的に則って優先順位をつけ決める
4)仕様確定(正式ローンチ日をこの辺で決める)
5)システム構築期間
6)検証期間
7)正常に動くのを確認
8)ローンチ後に出たバグがどのレベルでどう直すかを決める
9)正式ローンチ
10)要件になく実装後発覚した大きな不具合は追加PJで修正

常識的な進め方をすると、だいたいこうなります。
けれども、日本の会社で権限移譲がうまくいかないと…

1)ローンチする手段とイメージを決める
2)ローンチやお披露目する日を先に決める
3)仕様の元となる要件の責任のボールを互いに投げ合う
4)仮案をPMが出すとたたき始めるが誰も最終案に決めない
5)やむなくハイコミットメンバーで最終案をまとめ全体説明
6)低関与度・非協力的の人間が「ないがしろにするな!」と最終案に突如反旗を翻し全体の修正を試みる
7)仕様が二転三転している間に凍結リミットに突入する
8)システム構築と検証期間に響くので延長や費用増加を提案する
9)反旗を翻した人間を中心に断固拒否
10)初期からのPMやハイコミットメンバーが外れる
11)ローンチは正常に動かなくても強硬
12)要件外の不具合も費用内での修正せよと受託先に強要
13)未完成か当初と違う完成、裁判沙汰かお客様トラブルに
といったことが起きやすい。

要件の優先順位をつける
仕様を確定する

この2つの「決める」行為を最初に行い「守る」だけの権限をPMに渡すことができれば、ウォーターフォール型でもアジャイル型でもハイブリッド型でも関係なくプロジェクトは機能しやすいです。

それがうまくいかない以上、受託でPMをする人はちゃんとやった分だけお金をもらう契約形態の必要があり最悪裁判で対応も頭の片隅に入れておくようPMPでは学びます。
(もちろんそうならないのがベスト)
ただ、社内でPMを担う人はもう少し煮え切らない結末も多々あります。
私は、上記の日本IBMと野村HDの裁判よりも、青い銀行でPMをやって道半ばで転職したり異動していった人の労をねぎらいたいです。何度も波乱があって、何度もやり直して、何度もうまくいかなかったけれど、それはあなた一人の責任ではないよ、と。

日本の企業文化でPMをやるときに大事なもの2つ

これは「錦の御旗」「ステークホルダーマネジメント」に尽きます。

「錦の御旗」

これは、「プロジェクトの目的」をプロジェクトオーナーに具体的にイメージした上で全社的に伝えてもらい、プロジェクトにアサインされた人全員が納得して同意したかを確認した上で、「このPMに権限を渡す」と話してもらうこと、と考えるとわかりやすいです。

プロジェクトオーナー⇔PM⇔メンバーがプロ同士コミュニケーションをとって進めることができますし、揉めたらちゃんと目的に立ち返って話し合いができるからです。昨今だと、自社のパーパスや企業理念との検証も最初にしておくと、企業として進む方向との合致を確かめやすくなります。

ステークホルダーマネジメント

これは、PMPの中でも「ステークホルダーの特定・登録簿・マネジメント」という部分で出てくる大事な項目です。
PMBOKでステークホルダーを「プロジェクト、プログラム、またはポートフォリオの意思決定、活動、もしくは成果に影響したり、影響されたり、あるいは自ら影響されると感じる個人、グループ、または組織」と評しますが、ステークホルダーマネジメントとは、ざっくり言うと「プロジェクトにかかわる利害関係者とその影響範囲を特定・把握し、プロジェクトへの関与を効果的に引き出す」こと、できれば支援や賛成や応援を強化してもらえるようすることになります。

なんで「錦の御旗」「ステークホルダーマネジメント」をセットにしたか?というと、プロジェクトには、権限移譲が不明瞭かつ日本型組織社会の縦割りの弊害が直撃しやすいからです。
例えば、「特定の領域でキャリアと社歴を積んだ人間」がもし「低関与度」のまま、プロジェクトの中盤以降の段階で参画したらどうでしょうか?
前提条件がわからず、低関与度だから理解もせず、特定領域に偏った視野で新たな事業モデルに挑戦するプロジェクトを見る時に出す「全体の利益と相反した持論」にこだわってしまうことも起きます。
彼らから見るとPMとハイコミットメンバーから見て当たり前の優先度で決めることは「俺の意見をないがしろにした何か」であり、自尊心が大いに傷ついた状況になります。
そうなると、何も受け入れられないですし、自尊心が傷ついた人が次にやることは、傷つけた人への仕返しになり、幼稚な応酬を仕掛けていきます。職場環境も大いに荒れてしまいます。

こうなると、プロジェクトの所産の仕様は二転三転しますし、受託PMも契約履行になるか考え始め、社内PMは疲弊します。
誰もハッピーじゃないし、プロジェクトの目的をコミットできなくなります。

こういったローンチまでのプロジェクトを形にする際は、錦の御旗で掲げられた内容に時々立ち戻って、メンバーが加わる度にオリエンテーションを行い理解度を図りながら、積極的に関与を増やしていく必要があるといえます。
※それでもうまくいかない時は、おいしいものを食べて自分をねぎらってあげてください……そういうこともあるので。

PdMという言葉の方が浸透するのもわかる

こういった経験を経てみると、ローンチ型のプロジェクトを念頭に置かず、継続的な商品・サービスの改善活動を優先的に視野に入れるためにPdMという言葉を積極的に使う企業が増えるのはすごく理解できます。

ローンチにこぎつけること、その後商品を改善し成果につなげていくこと両方にプロジェクトマネジメントスキルが必要ですが、力点の置き方はちょっと違ってきます。

形にするのが得意な人がたくさんいるフェーズ、回しながら改善が得意な人がたくさんいるフェーズ、をうまく調整しながら、その企業に生かしていけるようなプロジェクトマネジメントをしていきたい次第です。

共通の目的に全員でワクワクできる時間を多く作ること

プロジェクトマネジメントのダークサイドをだいぶ書きましたが、権限移譲が下手な社会でも、プロジェクトをより良くできます。

「共通の目的を時々思い出す」「ワクワクしながら改善する」「所産の先を考える」といった、全メンバーがワクワクして動ける時間を多く作ることは大きな原動力になります。

なんだよ!精神論かよ!と言いたくなるのですが、目的に向かって走れているか?を確認するスキルセットはPMPの勉強の中に結構含まれておりまして。
きっと、上層部への報告だけではなく、メンバーのモチベーションUPやステークホルダーマネジメントに使えたらよりよく機能するはずのものなので、私はこういった捉え方をしています。

このシリーズではPMPの知識領域の話を、現実に落とし込んで書いていきますが、「どうワクワクしながら走るか」は忘れず、走る方法を描いていきたいです。

#資格試験 #勉強 #PMP #プロジェクトマネジメント  

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