見出し画像

海外で日本語を教える難しさと、その破壊力

デンマークで子育てをするうえで、甘く見ていたことの一つは、日本語を教える難しさ。

我が家では、夫は子供とデンマーク語で話し、私は日本語で話している。助産師や保育士を含めて、子育てをする時は親のネイティブの言語で育てた方がいい、と色んな人に言われてきたのもあるが、子供と日本語で会話するのはなんとなく自然な流れだった。

子どもたちの日常生活は、家を出れば保育園、幼稚園、学校とすべてデンマーク語なので、子供はもちろんデンマーク語が一番得意。これに対して、日本語で話すのは、私と話す時のみ。私がサボると、面白いほど子どもの日本語力に如実にあらわれる。

下の子が生まれた時、娘は4歳になったばかりだったが、ある日、ボディランゲージで話し始めた。私が新生児のお世話にかかりきりになっている間に、日本語をすっかり忘れてしまったようなのだ。娘と日本語でコミュニケーションが取れなくなってしまった!と血の気がひいて、そこからまた頑張って教え始めたものの、小さい子って覚えるのも早いけど忘れるのもこんなに早いのかと、ため息がでた。自分ひとりが日本語を教える仕事を担っているのかと思うと、気が重い。

3歳の息子にしても、普段、日本語を私と娘からしか聞かないので、「おみずのみたいわー」とか「おなかすいたわー」とか、女の子っぽい言葉になることがあり、うーむこれは修正すべきか、と悩んだり。

日本語が圧倒的に劣勢なので、使えるものは何でも使おうと、日本語であればテレビでもYouTubeでも自由に見ていい、ということにしている。一時帰国した時もかなり甘やかしていて、スーパーのお菓子売り場の充実ぶりに叫び声をあげて喜ぶ子供たちにも、太っ腹に買い与えている。アンパンマンミュージアムだとかにも積極的に連れていって「やっぱり日本って色んなものがあって楽しい!」「日本語がわかると役にたつ!」と思わせるよう必死である。

大変なのは覚える文字の数

日本に行くと、英語ができる子は「すごいねー」と褒められるけど、私ひとりで日本語を教える立場になってみて、こりゃ英語より日本語の方がよほど難しいな、と思うようになった。

我が家に遊びにきたデンマーク人には、日本語の本を見せながらこんなふうに説明している。

「日本語は、ひらがなの46文字とカタカナの46文字が基本だけど、それだけ読み書きできても幼稚園児レベルに見えてしまう。小学校で約1000の漢字、さらに中学校で約1100の漢字を習って、つまり約2,100字の常用漢字を読めるようになってはじめて、新聞も読めるし、大人らしい文章が読み書きできるようになる」

すると、小学生で1000の漢字、あたりのところで「What!?」とものすごく驚かれる。そうなんですよね、覚えなきゃいけない文字がめちゃめちゃ多いという壁がある。常用漢字を読めるところまで辿り着くのが、どれほど大変であるか。

こういう構造的な違いがあるためかどうかはわからないが、日本ではとにかく、幼児教育のスピードが早いと感じる。

ここから先は

2,333字

スタンダードプラン

¥600 / 月
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?