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同人誌の感想:伴美砂都(主宰)『文芸同人誌ロゼット』第2号

私も参加させていただいた文芸同人誌「ロゼット」第2号を読みました。

2022/5/29 文学フリマ東京の当日用POPとともに

※『文芸同人誌ロゼット』創刊号の感想はこちら

「ロゼット」第2号の特集テーマは「夏の恋」。8名の作家陣による、小説7作と短歌1作が収録されています。ジャンルや作風は違えど、いずれも丁寧に選ばれた言葉で書かれた作品たちです。
(わたしも至らぬながらできる限り頑張ったつもりです!)

うち瓜越古真さんの「汲み干す追想」は自由題となっていますが、ご本人のコメントによると「最初は『夏の恋』をテーマにするつもりだった」とのことなので、いずれの作品もその起点に「夏の恋」があったものと思います。

誤解を恐れずに言えば、参加者の私にとって「夏」はともかく「恋」は少々やっかいなテーマでした。

私が子どもの頃、恋愛物といえば当たり前のように男女間の恋愛を指すものでした。美男美女の俳優さんが恋人になる過程を演じるトレンディドラマが隆盛し、少女漫画はたいてい男の子と両想いになってハッピーエンド、少年漫画でヒロインが出てくれば、悪いやつにさらわれてヒーローがかっこよく助けに来る、などなど。

2022年は言うまでもなく、そういう時代ではありません。
男女間の恋愛以外の恋も、または恋をしない人も、本当は昔からずっと存在していたのだけれど見過ごされて(あるいは意図的に無視されて)いたのが、ちゃんと光が当たるようになってきた(いまだ途上ではあるでしょうが)と思います。少なくとも、私は見過ごしていたほうの人間でした。
もちろん、男女間の恋愛も変わらず存在しています。
いま「恋」というテーマを与えられて、何を書くのか。
「やっかい」と感じたのは、多様な恋のあり方にどう向き合っているのか、書き手の姿勢が問われるもののように思ったからです。

(その結果できあがった拙作はどういうことなのか……という話は、機会があればそのうち……)

ただ、書き手の姿勢を問うものは、とりもなおさず読み手の姿勢を問うものでもあるでしょう。
ここに集まった8つの「恋」のすがたは実にさまざまです。
成就する恋しない恋、恋する人しない人、現在か過去か、ここかここではないどこかか――。
私は「よかったな」とほっこりしたり、「大丈夫?」と不安になったり、きゅんとしたり切なくなったり、感情を忙しくして読みましたが、そのたびに「恋」に反応している自分自身を意識したように思います。

茜音沙耶さんによる今号の表紙を見てください。
「夏」らしくヒマワリの写真が選ばれていますが、私はヒマワリの写真にしては少し珍しいな、と思いました。
たいていヒマワリの写真って、入道雲や青空とセットだったりしませんか? おそらく空の青と入道雲の白とのコントラストがきれいだからだと思うのですが。
一方、今号のヒマワリは、緑の葉と葉の間にあり、少し影も指しています。
空と雲という完璧な舞台装置を伴い「見て見て!」と華やかに現れるヒマワリも素敵ですが、この写真はヒマワリを見ている自分自身をこそ強く意識させるようで、それゆえに今号の表紙にふさわしいのではないかな、と素人ながらに感じました。

この本を開いたとき、あなたはどんな恋を、そしてどんな「あなた」を見つけるでしょうか。


頒布情報

2022/5/23現在の情報です。

2022/5/29の文学フリマ東京では、私のブースにてお預かりします。
【ク-16】Our York Barにいらしてください。

続いて2022/6/19には、文学フリマ岩手にて同じく執筆者の新島みのるさんのブースにて創刊号ともどもお取扱があります。

来場される方、ぜひチェックしてみてくださいね。

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