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同人誌の感想:伴美砂都(主宰)『文芸同人誌ロゼット』創刊号

伴美砂都さん主宰『文芸同人誌ロゼット』創刊号を読みました。

※以下、同内容を「尼崎文学だらけ」(あまぶん)の推薦文として投稿しております。

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2020年はなんといってもコロナ禍の一年でした。ことによると2021年もそうかもしれません。日本のみならず世界中の人々が、未知のウィルスによって苦しめられ、生活様式の変容を余儀なくされました。
マスク、ステイホーム、ソーシャルディスタンス。当たり前にあった日常が失われることのつらさを、だれもが思い知った年だったのではないでしょうか。

文芸同人誌『ロゼット』が企画されたのは、ちょうどそんな時期でした。
創刊号の特集テーマは「春を待つ」。
目下のコロナ禍を厳冬にたとえるなら、いまはみな春を待っているといってよいでしょう。

例えば受験生が志望校に合格することを「春が来た」というように、念願の成就や夢の実現は、しばしば春の訪れにたとえられます。
しかし本誌に寄せられた作品があらわす「春」は(写真作品や、自由題で書かれたものも含めて)いずれも常人には得がたい華々しい成功や幸福の訪れではありません。
もっとささやかでつつましく、それゆえに切実な、明日もまた今日と同じように生きていくための希望です。
このありようこそ、主宰の伴さんが求め、作家陣と写真家が応えた「いま」の文学のかたちなのだと感じました。

コロナ禍は、いまだ先行きが見えない状況が続いています。
たとえコロナ禍が過ぎ去っても、生きているかぎりはまた別の厳しい季節が訪れるでしょう。
どこにも行けないつらさに耐えかねる日は、『ロゼット』をそっと開いてみませんか。
きっとあなたにやさしく寄り添ってくれる本だと思います。


通販情報

・尼崎文学だらけ(~2021年7月31日まで)


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