無法地帯の里山を開墾。ゼロ→サーキュラーエコノミーの起点に！【先生file①高橋としよさん_神奈川県】

間伐材を活用したアレンジメント『森のケーキ※本記事トップ画像』を通して、森林課題を提唱してきた社会派フラワーデザイナー高橋としよさんが、新しく、「放棄された里山を有効活用しサーキュラーエコノミーの起点を創出しよう！」と『森のテラスプロジェクト』を開始したと伺い、お正月明け早々に視察に伺わせていただきました。

そもそも高橋さんとは、2019年に「趣味のワークショップを通してSDGsを体感できるイベント」の運営をしていた際にお会いしたのがはじめでした。その時に言われた一言が、いまも印象に強く残っています。

「安い材料費でいらないゴミ作ってどうするの？」

イベント運営は予算ありき。会場、広告、スタッフ手配、ツール作成などの段取りが整い、ワークショップの企画詳細をつめるときには予算はかつかつ。このときも潤沢な費用はなく、いつもどおり「材料費は●●円以下でお願いします」とお伝えした際に言われた言葉です。ガツンと衝撃をうけつつ、あまりにごもっともなご意見でこれまでの進め方を反省しました。

ワークショップと言えば、商業施設やカフェなどの一角で、無料かワンコイン、高くても1000円くらいで、さくっとその季節の可愛らしいものを作れるイベントを思い浮かべる方も多いと思います。それはそれで楽しいのですが、SDGs、エシカル消費がテーマのイベントでは「暮らしの中で活用できるか」「長く使えるか」「気づき・納得を生むことが出来るか」を提供しなくてはいけない、という大事なことに気づく一言をくださった方です。

日本各地に存在する住宅地の荒廃森林

前段が長くなってしまいましたが、そんな高橋さんの新しい取り組みの現場を見れると聞いて飛んで伺いました。横浜駅から数駅目での待ち合わせ＆ご実家の持つ土地に行くということなのに、「山道を歩ける靴で来てね」と言われたのでどんなところかと思っていたら、本当に分け入るような山林でした。横浜にもこんなところがあるのですね。しかもあちらこちらに。

木々も茂っているし、竹もすごい。

家もですが、森も竹林も手入れをしないと荒廃してしまう。人手、費用の面で手入れができず放置された里地里山が全国に約15万㎢、都市部及び近郊の住宅街だけでも44,000㎢＝国土の11％もあることを知りました。（環境省資料参照）

荒廃森林（0円）→地域のハブ（サーキュラーエコノミーの起点）に。

竹林を抜け、森を抜け、広場に出ました。鳥の声、木々の揺れ、森の音、大小さまざまなどんぐり・・・天気の良さも相まって、とても気持ちの良い場所です。

高橋さんの活動に賛同した森林整備のプロたちが、人材育成の場としてこの森を使わせてくれるならと『無償』で開墾してくれた、想いと想いの繋がりによって生まれた広場です。　↓　開墾時の様子。

通りの反対側には、畑や住宅がたくさん。近所に学校もあるようです。この場所で何を出来るか。畑・ハーブガーデン、コンポスト、自然観察、工作、アレンジメント、料理・BBQ、仕事、ヨガ、ツリーハウス、マルシェ・・・その場に立っていると、あんなことしたい、こんなことも素敵が次々に浮かびます。

構想を図にしたのがこちら。

「森の整備」と「土地の活用」と「地域の交流」の循環を生み出そうという『森のアトリエ　里山モデル』です。この土地の利活用をモデルケースとして、他地域でも活かしていこうというところまで描いています。

地域住民それぞれのサードプレイスに

このモデルを見たとき、「ママ向け」とか「シニア向け」とか絞っていないことがとても良いなと思いました。限られた層同士のコミュニケーションを生むことが大事な場面もあるけれど、色々な人がお互い存在を認め合って、教えあい、伝えあいながら、もちつもたれつで交流していくことがその地域の深みや温かみ、暮らしやすさに繋がるのではないかと思います。誰かが主導するのではなく、みんな自分のやりたいことをするためにその場に来ていたら、自然発生的につぎの何かが生まれている。そんな場所にきっとなると思います。

追記：「社会課題とか環境問題とか難しいことこそおしゃれじゃないと浸透しない」と、信頼する編集者さんが言っていました。まさにだとおもいます。フラワーデザイナーの高橋さんにかかると、伐採した枝も、枯れ葉も草も、取り放題の夏みかんもこんな素敵な「作品」に。わたしが高橋さんの取組は成功すると信じてやまないのが、行動力や想像力・構想力と合わせて、このセンス。この他に替えがたいセンスを武器に、このプロジェクトを発信していくパワーを感じています。