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#02_どんなレジデンスがあるの?助成型と自己投資型

こんにちは!5大陸のアーティスト・イン・レジデンス制覇を目標に掲げている(?)現代美術家/イラストレーターのイチカワです。

第1回ではアーティスト・イン・レジデンスの概要についてお伝えしましたが、今回はアーティスト・イン・レジデンスの種類についてまとめていきたいと思います。


どんな種類のレジデンスがあるの?


アーティスト・イン・レジデンスと言ってもさまざまな種類がありますが、大きく二つに分類されます。

助成型:招へいアーティストとして滞在制作する

 助成型のアーティスト・イン・レジデンスとは、公募による審査を経てレジデンスを運営する団体/組織からアーティストとして招かれて滞在制作することです。

団体/組織から招へいされるので、金銭面や制作に関わるサポートを受けることができます。
宿泊先や制作場所を提供いただけるほか、滞在先までの交通費や食費、制作費などが支給されることがあります。(ただし、一概に助成型のレジデンスといっても金銭面のサポートがない場合もありますので、応募要件をよくチェックすることが大切です)


渋川アートリラ(助成型):群馬県渋川市にある伊香保温泉を舞台にしたアーティスト・イン・レジデンス。招へいアーティストはそれぞれ温泉旅館に滞在しながら、同時期に開催されるアートイベントに向けて制作を行う。筆者は温泉宿の一室に宿泊しながら、旅館内のオープンスペースで制作・展示した。

また、作品を制作する上でのリサーチを行う際にアドバイスをいただいたり、テーマをより深掘りするために有識者をご紹介してもらったりします。私はインタビューを基にした作品を制作することが多いため、事前にインタビュー先をご紹介いただくことがあります。

応募方法等については別記事でまとめたいと思っていますが、助成型および自己投資型どちらもアーティスト自身が応募書類を提出した上、レジデンスを運営する団体/組織が審査をします。助成型の方が提出する書類が多い印象です。

競争倍率100倍!?助成型への険しい道

 助成金型はアーティストへの金銭的な負担が少ない一方、応募の倍率が一気に跳ね上がります。国内外のレジデンス問わず、倍率が50倍、100倍になるのはざらです。

以前、私が応募した国内のとある助成型のレジデンス(採用1組)には、100名程度の応募があったそうで、ものの見事に落ちました。また、ヨーロッパの助成型のレジデンスにも応募しましたが、採用数が5組のところ600名程度の応募があり、審査は困難だったそうです(もちろん通過せず…!)

サポートがしっかりしている分、競争倍率が跳ね上がるのが助成型ですが、アーティストとしては大変ありがたい取り組みです。

自己投資(セルフ・ファウンデーション)型:アーティスト自身でマネジメントする

 一方、自己投資(セルフ・ファウンデーション)型は、アーティスト自身が費用を支払って滞在制作を行います。

滞在費、水道代、電気代、インターネット、スタジオ使用料等を1週間〜数ヶ月単位で支払います。比較的広めなAirB(民泊)に滞在するという感覚に近いかもしれません。

宿泊スペースに加え、制作環境が整った広々としたスタジオを用意してもらえるため、総合的に見ると、単純に宿泊するよりも安価だと思います。

さまざまなプログラム!

 自己投資型といっても、誰にも邪魔されずに制作に集中するためのレジデンスもあれば、他のアーティストと交流できたりするほか、独自のプログラムに参加できたり展覧会の機会が得られたりするものなど、さまざまです。

ギリシャ・アテネのレジデンスの様子(自己投資型):宿泊スペースに加えて、広々としたスタジオが完備されている。滞在中にオーナーから市内ツアーや公共の場での展示プロジェクトの企画などをしてもらえる。

応募はレジデンスのオーナーに直接します。ガッチリとした企画書を提出することはありませんが、おおよその制作スケジュールやプロジェクトの概要を応募書類と一緒に提出することが多いです。レジデンスのスケジュールやプロジェクトの内容で審査されます。オーナーの匙加減で審査が通過しないこともしばしばあるようです。

アーティストの皆さんにぜひ参加してほしい

 レジデンスに参加するメリットは、日常生活と距離を置いて制作に打ち込むことができることです。日常とは異なる環境下に行くので、レジデンスを運営する方々や滞在先の地元の方、他のアーティストたちと関われるので非常に良い経験になります。

私の場合は、都内を拠点にしているため、物を広げて制作できる環境がないため、あえて広々としたスペースが得られるレジデンスを選択+国内外での見識を深めるために定期的にレジデンスに参加しています。

「制作する場所がない!」「制作に行き詰まっている」「思い切り環境を変えてみたい」そんなアーティストの皆さんにはぜひレジデンスに参加してみていただきたいなと思います。


参考文献:
・菅野幸子, 日沼禎子ほか(2023), アーティスト・イン・レジデンス:まち・人・アートをつなぐポテンシャル, 美学出版.

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