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【往復書簡19通目】木枯らしが吹いたらキャベツの発酵漬けのスープで暖まって


みやうへ

先週までの夏のような陽気が打って変わって、今日は強烈な木枯らしが吹いています。すっかり遅れてしまったカリフラワーの植えつけを、今日はどうしてもしたかったので、さっき自転車を走らせてポタジェ(菜園)に行ってきました。自宅を出るときはそれほどでもなかったのだけど、走るにつれて風がひどくなって、最後は背後から吹く風に押されて自転車をこぐ必要がないくらいだった。笑
そんな中で植えつけできるの?と思うでしょう。実は、ポタジェの手前には防風林があって、林の間のトンネルを抜けると噓のように風が穏やかになるなのです。その差と言ったら、まるで楽園にたどり着いたかと思うくらいの穏やかさで、まったく支障がなく1時間半ほど畑仕事ができました。以前、この地域の平地林を研究している人のフィールドワークに参加したことがあって、気温や季節風の調整役として雑木林を農業に役立てて来た話を聞いたことが、役に立ったんだよね。いい土地を選んだなぁって、つくづく思うとともに、色々な人がつないでくれて今のポタジェに巡り合えたことが、スープ活動を楽しむ原動力にもなっていると、改めて感じています。

さて、美味しそうな無花果のデザートをごちそうさまでした。札幌と兵庫の合作だなんて、素敵!とろけるように美味しいのだろうなぁと想像します。 本当に好きなものを前にした時の、みやうの最高な笑顔も一緒に想像しながらいただきました。私も無花果は大好きな果物なのだけど、憧れ続けているフランス系の黒無花果にはまだお目にかかれていなくて、ぜひ、私のためにも庭に植えてください。笑 期待して待っています!

それにしても、2ヶ月も直売所に通って無花果を買い求めていたなんて、そののめり込み様、最高。笑 私も、最近改めてのめり込んでいる野菜があって、それはそろそろ冬の旬を迎えるあの野菜、「キャベツ」です。私がすごく気に入って作り続けているキャベツの発酵食品があって、千切りキャベツを瓶づめにして作る、ロシア版ザワークラウトといったところなのだけど、これを作るとキャベツの鮮度と旨味がはっきりと表れるのですごく面白いの。
今年は、そのキャベツの発酵漬けを使ったスープを人に食べてもらう機会が、ありがたいことにすごく多くて、より美味しい味を求めて季節と入手先を替えて、例年にないほどたくさん作りました。先日、信頼している八百屋さんに特別栽培のキャベツが並んだので、それを使って仕込んだところ、発酵させている間から瓶の中でポコポコと音がして、これまでにないくらい勢いよく発酵が進んで。発酵した香りも、仕上りのキャベツの味も、これまでとはだいぶ違って角が取れたまあるい風味がしたのは斬新だった。少し大げさに聞こえるかもしれないけど、新たな発酵の世界が目の前に広がるちょっと衝撃的な、味覚嗅覚体験だったよ。あいにく、そのキャベツは東北は青森県産のものだったので、これから地場産のが出回ってきたらまた色々とチャレンジしてみようと思う。再現できるだろうかと、ワクワクするよ。
ちなみに、ポタジェでもキャベツが栽培したことがあるけれど、美味しいと感じたのは唯一サボイキャベツ。煮ると甘くとろりとして最高でした。ただ、生で食べて美味しいキャベツは残念ながらまだできません。いつか、自分で育てたキャベツで発酵漬けができたらいいのだけどねぇ。

さて、今回の一皿。いつかご馳走したことがあるかもしれないと思いつつ、自分でも最近少し進化したと思うのでこのスープを贈ります。牛スネ肉でとったブイヨンと、ジャガイモ、キャベツの発酵漬けとその漬け汁を加えて煮込み、ほんの少し下ろしニンニクを加えて仕上げた、ロシアの家庭料理です。このキャベツはね、ぬか漬けのような風味がするので、ちょっと酸味が効いたような香りを想像してみて。発酵した漬け汁の塩味、旨味、そして酸味が調味料の代わりになっていて、その複雑な味が染み込んだお肉とお野菜が絶品なのよ。一晩置いて味を馴染ませるとまた最高なんだわ!ライ麦パンをスープに浸しながら食べてください。

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ロシアのキャベツの発酵漬けのスープ「シチー」。
それでは、どうぞ召し上がれ。

五十嵐洋子