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【往復書簡/5通目】夏の終わりに届けます、ジャガイモの冷製スープ

みやうへ

8月も終わるころになって、例年になく残暑厳しい札幌にもついに秋が訪れそうだと聞いたけど、どお?気温が下がって、ビールよりワインな気温になったかな?(笑)
美味しそうなお手紙ありがとう。果樹庭のブドウのお手入れをしながら、ブドウの葉を使ったお料理が作りたくなって、自分の持っている知識だけでなく他にどんな国でブドウの葉の料理が作られているのかを調べて、その中から一つ選んで作ってくれた、とっておきの一皿。一つの食材への探求心がみやうらしいなぁ、と思いながらお手紙読みました。トルコはいつか必ず行きたい美食の国。ブドウの葉の料理は私もすごく興味があって、みやうの果樹庭のはどんな香りがするのだろうと、想像するだけでもワクワクします。これは!!という一品をごちそうさまでした。料理から広がる色々な国の話しを、一緒にテーブルを囲みながら、夜が更けるまでできる日が楽しみだよ。

みやうからの手紙に、前回私が送った「5月の庭のスープ」を見て、私が”絵を描くようにスープを作っている”と言っていたことを思い出した、と書いてくれたけど、確かに印象派の絵画のようなスープだったね。”絵を描くように”というのは、素材(主に野菜)の色彩や形など個性をよく見極めたり、何かから得たインスピレーションをスープづくりに反映することを大事にしている、という意味ではあるんだけど、実は、スープづくりのプロセスに於いては、一つ一つの素材ごとに切り方(サイズや厚み、包丁の入れ方)や火の通し方(ゆで加減や、煮るか焼くか調理方法を変えたり)、スープの具に入れるのかトッピングにするのかなど、細かく扱い方を変えて素材の良さを引き出すことをベースに置いているんだ。芸術家は、素材を知り尽くしてこそ多彩な表現ができるでしょう。私も、野菜を育てて野菜を知り尽くして、スープを創造していくことが一番の醍醐味だと思っているんだ。そんなこだわりは、残念ながら手紙だけでは伝わらないことだから、ぜひいつか私が料理したスープで、それを実感してもらいたいな。

さて、今回作った料理ーまたスープなんだけどーは、私の長年の憧れのスープ、ジャガイモの冷製スープ「ヴィシソワーズ」です。たくさんあるジャガイモの品種の中から、ヴィシソワーズにぴったりな品種に出会えたからこそ作りたいと思ったスープです。ポタジェでは毎年2,3種類のジャガイモを栽培しているのだけど、今回ヴィシソワーズに使用した「北海こがね」という品種は、加熱した時のザラザラした食感が少なく、とってもクリーミーで、食味が良いの。これはヴィシソワーズに絶対合う!と直感的に閃いて、自家製のスープペースト(ポワローを使用して3時間かけて仕込んだもの)を活用して作ってみたところ、イメージ通りのヴィシソワーズの味を再現することができました。高校時代、両親に連れて行ってもらったフランス料理店で一口食べた瞬間、こんなに美味しいものがあるなんて!と感動した、ジャガイモの旨味と上品なポワローが香るヴィシソワーズに少し近づけたかなぁ。夏に栃木を訪れてくれたらごちそうするから、ぜひいらっしゃいよ。北海こがねは北海道生まれだけど(笑)、栃木の美味しい白ワインを冷やして待っています。

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それでは、どうぞ召し上がれ。


五十嵐 洋子