プロゲーマーがバーチャルの肉体を手に入れたら

最近、VR界隈が加速している。バーチャルYoutuberが増えていたり、VRChatで日々新しい過ごし方が開発されていたり、VirtualCastというVRライブ・コミュニケーションサービスが発表されたり——。VR上で自己表現する方法がどんどん模索されている。

では、プロゲーマーがVRを活かす道はあるだろうか。

プロゲーマーがバーチャルの肉体で表に出て、動画作成や生放送、ファンとの交流を行なうのだ。そうやってリアルの肉体の殻を破ることで、新しいファン層の開拓や、既存のファンと新しい形で触れ合えるかもしれない。

そもそもそんな需要があるのかわからないが、未来の光景を考えてみる。

ファンとの新しいコミュニケーションの形

まず、見た目がアバターになることで、新しいファン層の開拓ができるかもしれない。

プロゲーマーのファンになるのはどういう人か? ゲームを知っている人やプレイヤーだ。ある程度ゲームを知らないと、プレイのすごさなど選手の魅力はわかりにくいからだ。しかしアバターを介することで、見た目のかっこよさや可愛さが魅力の一つとなる。ゲームを知らない人に対してもアピールできるのだ。

ゲームを知らない人にも、ひとまずアバターに興味を持ってもらえる。そこから動画や生放送を開いてもらえれば、「この人たち何がすごいんだろう」と思われるかもしれない。つまり、無認知層から認知層になる間口が広がるのだ。さらに「同じゲームやってみようかな」とプレイヤー層が増えコミュニティも育つ、という流れになれば御の字だろう。

また、VR上なら選手とファンが触れ合うハードルも下がる

興味が深まると「選手と触れ合いたい」という需要が出てくる。これは既存のファンでも同じだろう。しかし、地方在住だったりシャイだったりと、オフライン大会や対戦会に足を運びづらい場合もある。そこでVRChatやVirtualCast、ClusterといったVR上でコミュニケーションがとれる場を活用してはどうか。VR上でファンミーティングを実施することで、アバター越しではあるが、家にいながら選手と会えるのだ。選手側もリラックスしてファンと接することができる。

未知のものが混じり合うハードル

いろいろと妄想してきたが、いざ実行することを考えると、ハードルは多い。

1 アバターを見て来た新規のファンを疎ましく思う既存のファンも出てくるだろう。既存のファンをないがしろにしてはいけないし、双方に温度差がなるべく生まれないようにしたい。たとえば、新規のファンと選手が一緒にプレイできる機会を設けるなど、新規のファンもesportsへ引き込むようなムーブを考えたい。

また、ファン以外に関するハードルも出てくるだろう。

2 そもそも、始める前にオリジナルの3Dのモデルや2Dの絵といったアバターを用意する必要がある。

3 既存の選手とバーチャル空間の選手を区別してはいけない。ゲームの中で誰でも競いあえるのがesportsの魅力なのだから、住む次元が違っても同じトーナメントやリーグ上で競いあってほしい。オフラインの大会でも、リアルの選手とアバターを介した選手が対戦している光景を見てみたい。バーチャル上の舞台なら、設営や演出のコストを抑えることもできるぞ。

4 動画や生放送での活動に注力しすぎて、肝心のゲームの腕を鈍らせてしまっては本末転倒だ。あくまで、ゲームでの実力を柱とするのがプロゲーマーの姿だろう。

手探りで進む道

このように、選手がアバターに魂を移すにはハードルは多いが、ファンに対して新しいアプローチができるかもしれない。

しかし、ファンの反応を見ながら方向性を考える必要はある。フィクション寄りのアバターなのか、リアル寄りのアバターなのか? アバターのキャラクターを全面に出すのか、選手の人格をそのまま出すのか? チーム主導で行なうのか、選手主導で行なうのか? 既に活動している選手が取り組むのか、新しくチームに所属する選手が取り組むのか(すでに顔が出ている選手がそのままVR化するのは厳しいかもしれないが)?

また、選手の意志がしっかりあることも大切だろう。やっぱり「やりたい」や「好き」という気持ちを抱いている人に取り組んでほしい。やらされている感が出ては反感を買いやすいし、選手が楽しんでいる姿を見るほうがファンも嬉しい。

VR界隈の進歩は、そこに愛とリスペクトを持った人たちがいるから成り立つものだと思う。それを土足で踏み荒らすような姿勢ではお互い不幸になるだけだ。「俺/私も、美少女になりたい!」「これまでできなかった楽しいことがしたい!」そんな純粋な気持ちから成り立つ世界なので、打算的に、好きでもないのにやるのは好ましくないだろう。

技術を活用して幸せに

選手がアバターになることへ拒否感を覚えるファンもいるかもしれないので、一歩ずつ、たとえば「VR上でのファンミーティング」などから、VRを活用できないだろうか。


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