毛利元就(もうりもとなり)と千足のわらじ(その3 全3回)
昔はね、夜を道を歩いて行く時には懐中電灯なんかないからね、松の木や竹や葦なんかを束ねたものに火を着けてその火の灯りで夜道を照らしながら歩いて行ったんだって。銀山城は山の上にあったからお城からはこの灯りがよく見えたよ。真っ暗な夜だものね。
「おお、毛利の者たちが太田川を下ってこちらへ攻めて来ている。たいそうな数ではないか」
そうさ、武田軍は流れていくわらじの火を家来ひとりひとりの持っている松明と思ってしまったのさ。大手門から攻めて来るに違いないと思ったんだね。これは大変だと銀山城では多くの城兵たちが武器を持って大手門へと集まって、いつ攻めて来るかと身構えていたんだよ。そうさ、元就の作戦に騙されてしまったのさ。
元就はその間に、強い兵たちを連れて銀山城の搦手門へと静かに静かに登って行ったんだ。搦手門とはお城の裏にある門の事さ。ほとんどの城兵たちは大手門の方に行っていたから搦手門側には少しの兵しかいなかったんだ。そこへドッと元就軍が飛び込んで来たよ。一気に本丸へと突き進んで行ってアッと言う間にお城を奪ってしまったんだ。銀山城はこうして落城していったよ。武田一族も消えていってしまったのさ。これが銀山合戦のお話さ。
毛利元就の千足のわらじのお話は今でも伝説として地元に伝えられているんだって。作戦上手なお殿様だったってね。おしまい。
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