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吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-5 宿舎探索 20XY年4月

 死体の処理はなんとか完了した。ただし、これで安心しているわけにはいかない。電気や水道がいつまでもつかわからないのである。止まった場合、宿舎を変更する必要がある。必要なのは、まず電気である。これは太陽光発電のパネルが載っている家を探すことである。充電池があれば、より好ましく、ガスはプロパンガスがよい。水は近くから汲んでくることになるだろう。

 適した家を探すには自転車ではスピードが遅く効率が悪い。そこで、オートバイを探すことにした。吉祥寺には店が何件か存在する。愛犬シロや荷物を載せたいのでサイドカー付きがよい。オートバイ素人にとって、安定性が高いことも利点だろう。最初の店にはサイドカー付きはなかったが、2店目の店で発見することができた。オートバイは初めてだったが、ネットで調べてなんとか使えるようになった。

サイドカー付バイク

 調査は自然文化園の南側に流れている玉川上水の周辺からスタートすることにした。環境に関心の高い家庭が多そうに感じていたためである。玉川上水は多摩川の羽村(都下羽村市)に築かれた堰から取水し、四谷までの全長43kmを流れている。江戸の住民にとって重要な水源だった。また、1948年、太宰治が女性と入水自殺したことでも知られている。

 吉祥寺通りを南下し、萬助橋を超えたところの道路に右折して、調査を開始した。山本有三記念館を過ぎたところで左折した。この一角を行き来した結果、太陽光パネル10枚を載せている家を発見した。充電池はなく、ガスは都市ガスだった。

 データを記録して、次に向かったのが、池の南側である。理由は前者と同じである。こちらは範囲が広く道路が直線ではないため、時間がかかった。ただし、それだけの結果は得られた。3軒の家を発見できたのである。うち1軒はパネルの数が20枚と多く乗っていた充電池とガスは同条件だった。まことちゃんハウス周辺では発見できなかった。

 最後にサンロードの北側を調査することにした。「末日聖徒イエス・キリスト」が見えたので、立ち寄った。「どうぞ良い物件を見つけさせてください」と不動産紹介所の様にお祈りした。シロもサイドカーの中から祈っているようだった。

太陽光発電パネル付きの家屋

 それから少し行ったところにその家があった。2階建てで、20枚を超えるパネルが載っている。周囲を回ると、充電池とエコ給湯機があった。さらに嬉しかったのは、プロパンガスだったことである。都市ガスと違い、ボンベを持ってくれば継続して使用することができる。都市ガスに比べプロパンガスの熱量は2倍以上ある。プロパンガスをつないだ場合、事故が起きても不思議ではない。

プロパンガス

 犬小屋では大型犬が餓死していた。裏口のカギを壊し、中に入いった。ソソフアーでご夫婦と思われる2人が手をつないで亡くなっていた。夕方になっていたので、帰宅することにした。教会にもう一度立ち寄り、理想的な家の発見について、感謝の気持ちを伝えた。武蔵野八幡宮でも同じことをした。日本の神様も助力してくれたに違いないからである。

 翌朝、マスクと手袋を準備して、昨日の家に向かった。オートバイにリヤカーを結びつけて、亡くなっていたご夫婦と犬を載せた。サンロードに入り、ペットショップと犬カフェから、餓死していた犬をリヤカーに移した。そのまま、ハモニカ横丁の火葬場まで運んで、前回と同じようにガソリンをかけて焼却した。もちろん、手を合わせて安らかな眠りを祈ったものだ。

 その足で、井の頭公園の池に向かい、亡くなっていた人を集めた。場所は隣接する「大盛寺」の境内にした。自然文化園に倒れていた飼育係らしい人も加えた。同じように処理をして、お寺で手を合わせた。明日から、すっきりした気持ちで引っ越し作業に入ることができるだろう。
*食品なんでも相談所 横山技術士事務所
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