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10爪:隠したり、火を灯したり

 爪(つめ)は動物の指の先端の上面に存在する。表皮の角質が硬化して出来た皮膚の付属器官である。体毛や歯と同じく、魚の鱗に由来する相同器官である。これからは主にヒトの爪について説明する。  表皮から変化して出来た点においては、爪と毛を総じて「角質器」とも呼ぶ。爪には指先を保護する役割がある。その結果、手足の動作において指先に力を加えたり、うまく歩くことができる。爪は動物にとって重要な役割を果たしている。爪の下部には毛細血管が集中しており、爪は血液の健康状態に影響されやすい。

    • 吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-6 引越し 20XY年4月

       日高は目を覚ました。悪夢を観ていたようだ。昨日は死体の処理をしていたが、慣れるものではない。習慣でTVを付けようとしたが、つかないことに気が付いた。顔を洗おうとしたが、水道も出なくなっていた。引越し先は多分大丈夫だろうが、やらなくてはならないことが増えた。  シロとともに朝食を済ました。向こうに持っていくものは最低限にしておこう。衣類、使い慣れた枕、食器、パソコン、CDである。それに冷蔵庫に入っている痛み易い食品も移さねばならない。缶詰など常温で大丈夫なものは後回しである

      • 9 皮膚&肌:肌が合って、肌を許す

         皮膚(ひふ)は動物の体の表面をおおっている層のことで、器官のひとつになる。体の内外を区切り、その境をなす。また、動物によっては、皮膚感覚を伝える感覚器の働きも持っている。ヒトの皮膚は肌(はだ)とも呼ばれる。毛、爪、羽毛、鱗など、皮膚に付随する器官をあわせて、外皮系としてまとめて扱う場合がある。  ヒトを含む高等脊椎動物における皮膚の構造は上から「表皮」、その下にある結合組織系の「真皮」、さらに「皮下組織」と続いている。真皮には、汗を出す「エクリン汗腺」、「毛根」が存在し、

        • 吉祥寺サバイバル Ⅰ 誘導期(lag phase) Ⅰ-4 A国L村&D国Mモンキーセンター20XY年2月

           北米のA国南部に存在するL村と連絡が取れなくなった。8000人程度が居住している小さな村である。村役場や警察、病院、学校などどこに電話しても、呼び出し音が鳴るだけで出る人がいないのである。そこで、州知事の指令により、ヘリコプターで上空から様子を観ることにした。夜間だったため、夜が明けてからヘリコプターが飛び立った。   ヘリコプターがL村上空に差し掛かると、異常が明らかになった。広場で大勢の人々が倒れているのである。何が起きているのが不明だが、近づくのは明らかに好ましく

        10爪:隠したり、火を灯したり

        • 吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-6 引越し 20XY年4月

        • 9 皮膚&肌:肌が合って、肌を許す

        • 吉祥寺サバイバル Ⅰ 誘導期(lag phase) Ⅰ-4 A国L村&D国Mモンキーセンター20XY年2月

          吉祥寺サバイバル Ⅰ 誘導期(lag phase) 1-3 東アジアB国軍基地とホワイ諸島20XY年1月

           B国のメテオハンター朴可欣(前回登場)は奇妙な情報を入手した。しばらく前に調査を行ったところに存在した軍の基地が閃光とともに消滅したという。その時は内部に入れなかったが、改めて調査しようと出発した。しかし、ずいぶん手前で軍の関係者と思しき者たちが検問を張っており、近づくことすらできなかったのである。   消滅というのはどうやら本当らしい。いったい何があったのだろう。閃光という情報があったが、核ではないらしい。ガイガー・カウンターの数値は正常であるためだ。考えられる可能性

          吉祥寺サバイバル Ⅰ 誘導期(lag phase) 1-3 東アジアB国軍基地とホワイ諸島20XY年1月

          吉祥寺サバイバル Ⅰ 誘導期(lag phase) 1-2 メテオハンター 20XX年12月

           ふたご座流星群は盛りを過ぎた頃、地球に近づく隕石があった。その内に、隕石は多数の小隕石に分裂した。これらのかなりの部分が燃え尽きずに世界中に落下した。  メテオハンターのロバート・A・ナイニンガーは早速それを探しに出かけた。目的地はA国ケリフォルニア州など4州にまたがるメハーヴェ砂漠である。磁石やドローン、金属探知機と地図は欠かせない商売道具だ。調査は数日に及ぶため、食糧と水も欠かせない。いつでも出発できるように、オフロード車にこれらを積んであるのだ。  砂漠に着くと早

          吉祥寺サバイバル Ⅰ 誘導期(lag phase) 1-2 メテオハンター 20XX年12月

          吉祥寺サバイバル Ⅰ 誘導期(lag phase)   Ⅰ-1 ふたご座流星群 20XX年12月

           20XX年12月、例年通りにふたご座流星群を世界各国で観測することができた。ふたご座α星(カストル)付近を放射点として地球に降り注ぐ流星群である。母天体は小惑星ファエトンと分かっている。元々は彗星だったが、揮発成分を放出しつくしてしまった小惑星である。以前に放出したチリが地球の軌道と交差する軌道を巡っており、これが流星群となっている。  この年も流星をたくさん観察することができた。「1つの流星が輝いている間に願い事を3回唱えると、その願いが叶う」といわれている。数秒以内に

          吉祥寺サバイバル Ⅰ 誘導期(lag phase)   Ⅰ-1 ふたご座流星群 20XX年12月

          吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-5 宿舎探索 20XY年4月

           死体の処理はなんとか完了した。ただし、これで安心しているわけにはいかない。電気や水道がいつまでもつかわからないのである。止まった場合、宿舎を変更する必要がある。必要なのは、まず電気である。これは太陽光発電のパネルが載っている家を探すことである。充電池があれば、より好ましく、ガスはプロパンガスがよい。水は近くから汲んでくることになるだろう。  適した家を探すには自転車ではスピードが遅く効率が悪い。そこで、オートバイを探すことにした。吉祥寺には店が何件か存在する。愛犬シロや荷

          吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-5 宿舎探索 20XY年4月

          8 胃:腑に落ちて、穴が開く

           胃は食道に続く消化管を成す管状の器官であり、十二指腸に続いている。食道との間が噴門、十二指腸との間が幽門である。入口と出口が狭く途中がふくらんで袋状の構造になっている。全体の形状は多くの場合、図のような鈎形(かぎがた)である。  胃壁は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層からなり、筋層の外側は漿膜に続く。粘膜には胃小窩(いしょうか)という微細な穴が無数に並んでいる。ここから分泌される胃液には塩酸が含まれている。したがって、pHは通常 1~1.5 程度と極めて低い。感染症の原因に

          8 胃:腑に落ちて、穴が開く

          吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-4 死体焼却 20XY年3月

           幸いなことに当面の食料と子犬という友を得ることができた。子犬に名前を付けよう。日高は「クレヨンしんちゃん」を観たことがあるので、「シロ」にすることにした。次になすべき仕事は明確だった。死体を集めて焼却しなくてはならない。  朝食を済ませた後、バールを拝借した工務店に向かった。ここにリヤカーがあることを確認していたのである。ついでに、金切り鋸と大きめのトンカチも拝借した。「拝借」という言葉を使うのは、きれいに整理されているため、使用後は返却したいと思っているからである。

          吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-4 死体焼却 20XY年3月

          7 のど捕捉&食道:違和感あれば検査

           前回の喉について、書き損ねたことがあるので補足しておこう。食品に関する最大のハザードについてである。死者は毎年4,000名を超える。原因食は多様だが、先日はウズラの卵で発生した。通常はもち、米飯、パンが多く、ナッツ類、飴玉、プチトマトが続く。お分かりだろう。多くの命を奪っているハザードは化学物質や食中毒菌という生物的要因でもない。食品そのものの物性と大きさという物理的要因であり、窒息が死因である。  やはり、65歳以上の高齢者が圧倒的に多い。高齢者はだ液の分泌と嚥下(えん

          7 のど捕捉&食道:違和感あれば検査

          吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-3 信仰心 20XY年3月

           翌朝6時過ぎ、日高は空腹で目が覚めた。夕飯も食べずに寝てしまったのだ。目覚ましのセットも忘れていた。テレビやネットの状況は昨日と変化はない。スマホも着信記録は皆無だった。  目玉焼きとソーセージ、茹でたブロッコリーで朝食を済ました。入手したいものは、ドアをこじ開けるためのバールと抗生物質である。今日は時間がかかる可能性が高い。朝食に伴いそこで、おにぎりを2個作った。水筒に水を入れ、これらをリュックに入れた。  今回は自転車を利用した。下宿を出て、五日市街道を駅に向かう。

          吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-3 信仰心 20XY年3月

          6 のど&首:手が出たり、長くしたり

           口を開けた状態でのどを観てみよう。口腔の奥がのどになる。のどは嚥下(えんげ:食物を飲込む)や呼吸、そして発声に関わる重要な機能が集まった器官である。断面図を観てほしい。のどは咽頭(いんとう)と喉頭(こうとう)と大別できる。前者は口の奥にある鼻腔から食道に至る部分になる。後者は気管の上に存在し、声を出すのに必要な声帯(せいたい)が存在する。  目立つのは舌の上に垂れ下る口蓋垂(こうがいすい)、いわゆる「のどちんこ」である。その奥にあるのが口蓋扁桃(へんとう)である。  扁

          6 のど&首:手が出たり、長くしたり

          吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-2 行動 20XY年3月

          「ジリリリィ~~ン!」というけたたましい目覚まし時計の音に日高は起こされた。いつもの朝であれば、目覚ましが鳴る少し前に目が覚めるのである。昨晩は少し飲み過ぎたのかもしてない。  スマホを確認するが、新しい着信はない。念のため、銚子の実家にかけてみる。昨日と同じで、呼び出し音はなっているが、出る気配はない。思いついて、銚子の市役所や友人にもかけてみたが、同じ結果だった。最悪の事態を覚悟しなければならないだろう。  テレビをつけてみる。どの放送局も新しいニュースはない。「L村

          吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-2 行動 20XY年3月

          5 耳:すましたり、揃えたり

           耳は情報(音)を集めるために重要な役割を果たしていることは自明である。もう一つ重要な役割があることをご存じだろうか。それが、平衡感覚を感じとる働きである。  まずは音からチェックしよう。ヒトの耳は外耳・中耳・内耳の3部分に区別できる。外観として目立つヒトの耳介(じかい)は音を集める集音器の機能を持っている。ここから鼓膜までが外耳道になる。入ってきた音は鼓膜を振動させ、3つの耳小骨(ツチ、キヌタ、アブミ)により内耳まで伝わる。鼓膜の内側が中耳腔になり、下部にある耳菅は咽頭や

          5 耳:すましたり、揃えたり

          吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-1 主人公紹介 20XY年3月

           舞台は吉祥寺に移る。話を進める前提として、主人公を紹介しておこう。 名前は日高陽向(ひだかはるむ)、成蹊大学理工学部の電気電子を専攻している大学院生である。もう少し具体的な研究内容に触れると、自然エネルギーがテーマである。大学と駅の中間にあるアパートに住んでいる。大学に通うにも、駅に出かけるにも便利な場所だからである。  実家は温暖な気候の千葉県銚子市の農家である。水稲の専門農家で、とれる米は自慢のおいしさである。自家消費として野菜も栽培している。通称お山(市立銚子高校)

          吉祥寺サバイバル Ⅱ 対数期(log phase)Ⅱ-1 主人公紹介 20XY年3月