風 7
自分の中から声を発しているはずなのに、聞こえてくるのは頭のずっと上の方からだった。
聞きなれた自分の話し声とは別の領域で、歌声がひとりでに零れ出していくような感触。
魂の抜けた芯のない体の感覚。
他人に聞かれる声は、自分に聞こえてくる自分自身の声とは違っているらしい。
そのことをふと思い出した。
ふわぁさ
白いカーテンが舞い上がる。
ひらかれたままの窓から風がぐんぐん吸い込まれ、カーテンは大きくかっぽりと風を包み込んだ。
抱えきれずに溢れ出す風は、私の体の空洞に入り込む。
「次、棟居さん」
私の出番は終わった。
(おしまい)
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