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とてもかなしいピアノ弾きの少女 11

テーブル席の客が立ち上がり、
読んでいたスポーツ紙をたたんで
ピアノの上に置いた。

このピアノは
まるでマガジンラックだ。

蓋が開けられることはないのだろうか。

もう
だれも
弾くことはない。

そう思っているのですか。

レジで支払いをする客の背中を見つめて
念を飛ばしてみるけれど、
僕にテレパシーは使えない。

物静かな高校生が
ただコーヒーを飲んでいるだけ。


僕は
いつも
だれかの背中ばかりを見ている。




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