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--Vol.3 人生はじめての挫折と「百万円と苦虫女」--

フリーターの僕が映画監督になるまで Vol.3

こんにちは。
前回は、今の自分をつくったと言っても過言ではない飲食店時代のお話でした。飲食店での勤務は2年ちょっと続きました。

まだ21歳だった僕は、飲食店でこのまま働き続けることにどんどん疑問を持っていきました。
このままずっとこうして65歳まで働き続けるのか?
まだ若いんだし、もっと自分に可能性を与えてもいいのではないか?
そんなことを思い続けていました。

そして転職活動をはじめたのです。
当時のアホな頭を使って、自分が何をしたいか考えました。

・やはりお金を稼ぎたい
・世の中に自分の足跡を残したい(若い・・・)
・人と話すのが好き(相談に乗るのが好き)

この3つでたどり着いたのが、「営業」でした。
僕が探した転職先は金融系の企業で、新しい部署を立ち上げるそこのメンバーの求人でした。すごく可能性がある部署と感じたし、何よりワクワクしたのを覚えています。
面接はその1企業だけ。
社長面接まで全部で4回面接があったのですが、採用していただけることになりました。奇跡。ですね。
こうして、僕は飲食店から180度違う職業、スーツを着るサラリーマンとなるのです。

採用していただいた理由を自分なりに考えると

・19歳で店長というブランド(当時はかなりの強みになりました)
・面接中は絶対に面接担当者の目を見つめ続けて話した。
・「思いやり」というキーワードで全ての質問に応えた。
・会社の優しさ。粋。「高卒で21歳という僕の採用」に面白さを持った。
挑戦しようとした。

んじゃないかと思います。

配属されたチームは本当に素晴らしかったです。
チーム長、3年目社員、2年目社員、僕でした。

チーム長は部署の中でもトップの成績で、厳しく、恐ろしく、面白い方。
本当に恐かった、そして本当に優しかった。これほどまでに、"その人らしく"飴と鞭を正しく使える方を他に知りません。

3年目の先輩は、寡黙ながらとてもアツい気持ちを持った方で、本当に可愛がってもらいました。飲みにもたくさん行ったし、プライベートでも何回か遊んでもらったり、先輩を思い出すと、心がじんわりとなります。

2年目の先輩は、いつも笑顔でした。怒られたり、辛い状況のときもずっと笑顔でいて、社会人の強さや我慢強さをその人から学んだ気がします。

入った当初は、本当に自信しかなかったです。
自分の得意なことで、活躍できてお金が稼げるようになるんだと。。
残念なことに。この会社を僕は8ヶ月という速さで去ることになります。

最初の数ヶ月は、研修なり、試験なり、先輩の後をつくなりでしたが、一人で飛び込み営業をするようになり、現実を知ることになります。
あれだけ自信があったのに、契約は1つも取れませんでした。
同時に、やっぱり自分ってバカだな・・・と高卒の頭、勉強に関して全く努力をしてこなかったツケが、新卒で入ってきた人たちと比べたりと、回ってきました。

頭も悪いし、営業もできない、先が見えない飛び込み営業という壁に、自分の未来が全く見えなくなりました。
見えないというよりは、"こんな1円も稼げないやつ、会社にとってなんの意味があるんだ?マジで無駄な存在だ"という先輩や会社に対してすごく罪悪感が生まれてきました。
先述したように、本当にみなさん素敵な先輩だったから尚更。

そんなとき、営業で自転車を走らせていたら、「百万円と苦虫女」という映画のポスターが外に大々的に貼ってある映画館がありました。
そして、その映画は当時リゾートバイトの会社とコラボしていたのをよく覚えています。吸い込まれるように映画館に入り、見てしまったのです。
本当に、本能的に、自然と。「今見なければいけない」と思ったのでしょう。

思えばこの時まで、ちゃんと見てきた映画(前回ブログで紹介した深夜枠で見た映画は別として)といえば、ターミネーターとかあるマゲトンとか、呪怨とか、リングとかそういうものしか見ていませんでした。

映画「百万円と苦虫女」 監督:タナダユキ 主演;蒼井優
就職浪人中の鈴子(蒼井優)は、アルバイトをしながら実家で暮らしていた。彼女は仲間とルームシェアを始めるが、それが思いも寄らぬ事件に発展し、警察の世話になる。中学受験を控えた弟にも責められ家に居づらくなった彼女は家を出て、1か所で100万円貯まったら次の場所に引っ越すという根無し草のような生活を始める。

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主人公が家を出ていき、地方で住み込みバイトをしながら1、00万円たまったら住む場所を変えていくということに、とんでもない魅力を感じてしまいました。
そして、土地を転々としながら自分探しをしたり、大切なことに気づいていくストーリーなど、あの頃の僕にとって、とんでもなく刺さりました。

蒼井優さん演じる"鈴子"が、いい意味でどんどん力が抜けていくんです。
常識から解放されるというか、古い自分から脱皮していく姿に、見ていて心が軽くなりました。

(ちょっときもい実際の話なんですが)
映画を見た帰り道、いい感じの夕焼けになっていました。
自転車をギコギコこいでいると、小学校の野球チームが校庭で練習していました。自転車を止めてしばらく少年たちを見ていると、その姿が一生懸命で一生懸命で。
自分や仲間を鼓舞する声、金属バットにボールが当たる響く音。泥だらけのユニフォーム、笑顔、真剣な顔。
そんな光景を見ていたら、マジで泣いちゃったんですよね。
自分はなんだろう?この自転車はなんだ?着させられているこの黒のスーツはなんだ?自転車のカゴに乗り切らないほど大きくなったこのビジネスバックはなんだ?
桜屋敷知直は、どこにいるんだ?
本当に涙が止まらなくて。
人生初の挫折でした。

その週、会社を辞めました。
退職届だけをデスクに置かせてもらって。
本当に申し訳ありませんでした。
多大なご迷惑をおかけいたしました。

このことをきっかけに「自分らしく生きなければならない。」ということを学びました。
この映画が、人生の第一のターニングポイントでした。

そして僕は、リゾートバイトに行くことになります。
本当は沖縄とかに行きたかったんですが、沖縄は非常に時給が安く、事故した車のローンがフルで残っていたこともあり(飲食店時代は歳の割には給与をいただいていたので毎月の支払いを高めにしていた)時給が高い箱根エリアにしました。

すごく覚えているのが、リゾートバイトに行く前、前職の飲食店の先輩社員さんが、「ローンだと利息あるだろ?一括で返しちゃえよ。バイトしながら返してくれればいいから、101万円で返してくれたらいいよ(笑)」と言って僕に100万円をポンと渡してくれました。この時は本当に驚きました。
僕からは貸してと言ってないのにですよ?
"信頼 "ってなんなんだろう。僕もこんな人になりたいと思いました。
自分探しの旅へ、箱根へーーーーー(近)当時22歳でした。

まとめ
・人生初の挫折。会社にとって自分の存在がなかったと自分で心底思った。
 すぐに決断して辞める。
・映画に影響されて会社を辞め、新しい職へ渡る。
・ここでも商業的に大きな作品ではない日本映画と出会っている。

Vol.4は、箱根のリゾートバイト生活のお話です。
ここで、僕は写真・小説・物語・映画・アートなどに触れる事になります。ここからが本当の(?)はじまりかもしれません。

よろしくお願いいたします。


自己紹介
桜屋敷知直 1986年生まれ
bird and insect / Direcor (写真・映像の制作会社)
https://bird-and-insect.com/company/
映画「雨とひかり」公式サイト
http://ame-to-hikari.com/