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グローバルサウスはなぜ欧米を嫌うのか

ニュースの中でグローバルサウスという言葉が頻繁に出てくる。

分かったような気持ちで聞いているが、さてどの国のことを言っているのかが今一つわからない部分もある。実は話し手によってグローバルサウスの範囲は変わってしまうんだそうだ。

グローバルサウスってそもそも

ネットにはこんな定義もある。

グローバルサウス(Global South)とは、インドやサウジアラビア、インドネシア、イランをはじめとするアジア・アフリカ・中南米などの新興国や発展途上国の総称として用いられる。グローバルサウスの多くが南(south)半球に位置していることが名称の由来である。

 グローバル・サウスという言葉に明確な定義はなく「誰が」「どのようなシーンで使用するか」によって、その意味合いや対象国が都度異なっているのが実情だ。
 対象国も諸説あるが、その中でも代表的な考えは次の3つである。

冷戦時代における第三世界(西側諸国にも東側諸国にも属さない国)

1960年代にできた国連内の新興国グループ「G77プラス中国」から中国を除いた77カ国

2023年1月に開催された「グローバル・サウスの声サミット」に参加した125カ国

https://www.sbbit.jp/article/cont1/137798

ウクライナ戦争では、じつはグローバルサウスの国々は態度を曖昧にしている。その背景を、直接現地で探ったのが、「ウクライナ侵攻とグローバル・サウス」(集英社新書)だ。

グローバルサウス自体への掘り下げはやや物足りないものの、アフリカまで出張し、外交、市民団体の関係者に直接インタビューしている部分が貴重だ。

グローバルサウスの対応として最も 象徴的な南アフリカのケースについて、本書はこう書いている。

南アのあいまいな姿勢


ウクライナ侵攻に対するグローバルサウスの態度は、特に南アフリカ共和国に象徴される。1994年、南アフリカはアパルトヘイトの終焉を迎え、ネルソン・マンデラ大統領が「虹の国」としての国際連帯を強調した。

しかし、2022年のロシアのウクライナ侵攻に対しては一貫して棄権を続け、国際連帯から距離を置いているかのように見える。

南アフリカの立場は、ロシアを非難する国連総会の決議に対して一貫して棄権し続けている。2022年3月2日の国連総会では、ロシアを非難しウクライナへの攻撃を即時停止する決議が採択されたが、南アフリカは棄権した。

相次ぐ国連決議棄権


3月24日には、ウクライナでの人道状況の改善を求める決議にも棄権した。さらに、ブチャでの市民の虐殺が明らかになった後、4月7日にロシアの国連人権理事会からの除名を求める決議も棄権した。10月12日には、ロシアがウクライナの一部地域を併合することを非難する決議にも棄権した。

南アフリカは、ウクライナ侵攻に関する国連総会での決議において、一貫してロシアに対して直接的な非難を避ける姿勢をとっている。3月24日の国連総会の会合に先立ち、南アフリカはロシアを名指しで非難しない内容の決議案を提出し、これも最終的に採択された決議案に対抗する形となった。

南アフリカ外務省は、ウクライナでの紛争の激化や国際社会への影響を憂慮しつつも、「決議は外交や対話、調停につながる環境を作らない」として棄権の理由を説明している。

ロシアとの関係重視


これは、アパルトヘイト時代の国際連帯とは対照的であり、ロシアのウクライナ侵攻に対する態度が、南アフリカの国際的な立場の変化を示している。

南アフリカのこのような態度は、グローバルサウス全体の反応の一部を反映している。グローバルサウスの多くの国々が、ロシアの行動に対して曖昧な立場をとっている。冷戦時代の歴史的な経緯や現在の地政学的な利益が影響している。

特に、南アフリカのような国々は、ロシアとの経済的・軍事的なつながりや、過去のソ連時代の支援を考慮していると考えられる。

結果として、ウクライナ侵攻に対するグローバルサウスの反応は一様ではなく、各国の歴史的背景や現代の地政学的な状況によって複雑に絡み合っている。

若い世代ほど反欧米


グローバルサウスには反欧米感情が広がっている。特に若い世代で強く、その要因として本書は以下のような点を挙げている。

植民地支配の歴史: アフリカ諸国はかつて西欧諸国に植民地支配されており、その歴史的な遺恨が現在の反欧米感情に影響している。

例えば、フランス、ポルトガル、ベルギー、イギリスなどの旧宗主国が謝罪を行わず、未だにアフリカの天然資源を持ち去りつつ、アフリカからの移民を拒否する現状に対する反発が強い​​。

若者の情報アクセスの向上: インターネットやスマートフォンの普及により、若い世代は瞬時に欧米の報道や行動を目にする機会が増え、その中で感じる不信感や反発が反欧米感情を助長している​​。

過去植民地支配への怒り


ロシアへの支持: 植民地支配やアパルトヘイトの歴史に対する怒りが、欧米と対立するロシアへの支持に繋がっている。

これは過去の現実に基づく感情的な反応だが、その国の外交政策と食い違いを見せることもある​。

政治学者の見解: 南アフリカの政治学者ウィリアム・グメデ氏によると、特に若い世代において反欧米感情が強く、それがロシアへの支持に繋がっていると指摘する。


グローバルサウスのイメージ図 筆者がcopilotで作成

一方、ロシアもグローバルサウス取り込みのため、外交戦を展開している。

ロシアのラブロフ外相は、エジプト、コンゴ共和国、ウガンダ、エチオピアのアフリカ4か国を訪問し、ムセベニ大統領とも会談した。

欧米のスキを突くロシア外交


 ラブロフ外相は、ウクライナ情勢におけるウガンダのバランスのとれた立場に感謝し、国連総会での棄権を評価した。ムセベニ大統領もロシアとの長年の関係を強調し、ラブロフ外相の訪問を歓迎した。

ラブロフ外相は「ロシアはアフリカに石油を提供する用意がある」と述べ、これによりロシアはウガンダに石油外交を展開した​​。

ロシアは、アフリカ諸国との外交を進めており、2019年10月には「ロシア・アフリカサミット」を開催している。

プーチンがアフリカへの武器輸出約束


このサミットでは、経済をテーマにロシアとアフリカ54か国の代表が一堂に会し、プーチン大統領はアフリカへの武器輸出や農産物取引について言及し、アフリカ諸国を喜ばせた​​。


ウクライナ戦争は正義のための戦争という欧米の主張は正しい。しかし正しさを訴えるほど、反発する人びともいる。ロシアがグローバルサウスから一定の支援を受けている背景を、考えたいものだ。

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