多文化共生関連のイベントでの原稿です
こんにちは。五味洋治と申します。私は1997年に韓国に留学して以降、朝鮮半島専門記者として過ごしてきました。
そのおかげで今があるわけです。
北浦和に20年ほど住んでいます。
もともとは川崎にすんでいて、指紋押捺問題をきっかけに韓国に関心を持ちました。会社の留学制度を使って韓国にいったわけですが、当時は韓国にいって語学を学ぶことは奇異の目で見られていました。勉強する教科書もなく、韓国の友人に大学の語学学校の教材を送ってもらったものです。今はたくさんありますから隔世の感があります。
今日のイベントははコロナの真っ最中に開かれました。コロナで困ったことがたくさん起きました。旅行に行けない、人と会えない。お店をやっていらっしゃる方なら、お客さんが減って大変でしょう。
でもいいこともありました。家にいることが増えたので映画やドラマを見る時間が増えたのです。愛の不時着、皆さん見られましたか。私もはまりました。北朝鮮の生活の実態を恋愛やサスペンス、文化や言葉の違いをコミカルに描いています。
北朝鮮と韓国はほとんど外国のようなものですね、あのドラマを見ていても、北朝鮮の特別な用語は、解説が画面に出てきました。
その一方で北朝鮮の人たちが韓国のドラマや歌に魅了されるシーンもありました。人間と人間の壁を壊すのは、映画や音楽という文化の力だと思います
閉鎖的だった日本もいま、韓国に対する印象が大きく変わりつつあります。
それも映画や音楽、踊りの力です。若者は韓国がクールだと思っている。踊りや歌を学びたいと韓国を目指します。そこには歴史は関係ない。
アメリカは違う文化を持っている人を大切にした。グーグル。アップル、フェイスブック、アマゾンという超大企業の幹部には、結構移民の人がいるのです。
グーグルの創業者、セルゲイ・ブリン氏はロシア系移民1世であり、
アップルのスティーブ・ジョブズ氏はシリア系移民2世として知られ、
フェイスブックの創設者の一人、エドゥアルド・サベリン氏はブラジル系移民1世、アマゾンのジェフ・ベゾス氏はキューバ系移民2世です。
まったく違う文化を持っている人たちを大切にし、その人たちの想像力を生かしてきたのです。
しかしこれまで、日本で暮らしている在日の人たちは、本当に不当、不遇な扱いを受けていたと思います。
留学時代の経験 みんな日本でも韓国でも通じる名前にしていた。通名を使わないと日本でなかなか仕事ができなかったのだとおもいます。在日の人たちのパワーを使おうというよりも、同化させ、同化しない人は排除しようとしてきました。
その排外主義的な雰囲気が、今日本の活力を失わせたのではないでしょうか。
留学時だ在日の人と飲みに行くと、よくケンカが始まり、私が仲裁に入りました。理由は、日本になじむべきでない。いやもうわれわれは日本文化を受け入れなければいけないんだ。敵視してどうなる。という口げんかです。朝鮮半島のアイデンテティが否定されているので、こうなるのでしょう。
深沢潮「海を抱いて月に眠る」という小説にも、在日の人たちの苦悩が出てきます。
韓国から来た男性と結婚する。韓国語ができないと韓国人として認めない。辛いものが食べられないと叱られる。日本でも韓国人として認められない、韓国人からも認められない。アイデンテティの危機に直面する人が多いのです。
多様性を認めない国は存続できないということは歴史上にも先例があります。
ライフネット生命保険株式会社創業者。現在は立命館アジア太平洋大学学長出口治明さんが近著の中で、スペインの例を挙げています。
アメリカを発見するなど、世界を支配する勢いだったスペインは16世紀「血の純潔規定」という法制度を作り、、祖先にユダヤ人やムスリム(イスラム教徒)がいたらその人を社会の要職から締め出しました。
ダイバーシティの真逆の政策をとったたことで幸福なス ペインの時代は過去のものとなり、大植民地を獲得していたにもかかわらず、スペインは早々に没落していつたのです。
逆の政策で没落した国スペインとは対照的に、追い出されたユダヤ人を受け入れたのがトルコのオスマン朝でした。
オスマン朝が巨大な版図を築いた背景には、東西をつなぐ要衝のコンスタンテイノーブル(イスタンブール)を手中に収めたことも一因ですが、やはりダイバシテイのウェイトが大きかつたと思います。オスマン朝はスペインから逃れてきたユダヤ人を受け入れたほか、宗教面ではコンスタンテイノープルに本拠を置くキリスト教の東方教会を寛大に扱つています。
日本人だ、韓国人だ、中国人だというのは、実は地球の歴史から言えば小さいことです。DNAの構成を調べると、東アジアの人たちはみんな似ています。
国立科学博物館人類研究部長篠田謙一さんは、日本人になった祖先たちという本の中で、
私たちの持っDNAを研究してみると、ほとんどが東アジアの人々に共有されている。少なくとも私たち自身が公人類700万年の歴史から見ればほんの少し前に分かれた 親戚関係なのです。
と書いています。これからも排外的な政策を取り続ければ、日本は外国の人が来たがらない国となり、第2のスペインになってしまうかもしれません。
多文化共生はやや硬い言葉です。ダイバーシティ(多様性)の方がしっくりきますが、これを実現できるか。日本の未来がかかっています。
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