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言葉の宝箱 1062【やりとりの多い少ないが人間関係の貧富を表すわけではない。でも何かの拍子にふと考えてしまう】

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『バスクル新宿』大崎梢(講談社 2021/8/17)

たくさんの人々が行き交うバスターミナル『バスクル新宿』。
それぞれの目的地を持つ人々がひととき同じ時間を過ごし、
同じ事件に巻き込まれていく。
出発前に世間話をした女性がサービスエリアでの休憩後、
バスに戻って来ず行方不明に。
深夜のバスターミナルで起こる日常の事件を描いた5話連作短編集。
『バスターミナルでコーヒーを』『チケットの向こうに』『犬と猫と鹿』『パーキングエリアの夜は更けて』『君を運ぶ』
*『メフィスト』掲載に書き下ろしを追加。

この物語は門出を祝うかのように、こう終わる。
〈 待合室で無事を祈り続けた人たちの気持ちが、
「いってらっしゃい」の声になって、
彼の新しい一歩を応援できればいいなと思う P255 〉


・頻繁なやりとりを面倒くさがる人はいるし、自分もきっとそうだ。
やりとりの多い少ないが人間関係の貧富を表すわけではない。
頭ではよくわかっている。今のままでいい。鬱陶しいのはいやだ。
でも何かの拍子にふと考えてしまう P19

・大した理由もなく弟を蹴ったり兄を鼻で笑ったりするのは、
助け合う必要に迫られてないからだ。
それが幸福なことなのかそうでないのかはわからなくなる P84

・友だちには『やるつもりの金』しか出さないことだ。
返されなくても諦めのつく金額だけ。昔からそう言われてる P90

・奈良にある春日大社のお守りです(略)
オレンジ色の袋に緑色の山と白い鹿があしらわれている。
「白鹿守」と言い、幸運をもたらしてくれるそうだ。
白い鹿は神さまのお使いとも聞いた P105

・自分の知らない現実に揉まれてきたのだと思うと気後れする(略)
考えなしに薄っぺらいことを口走ってしまう
自分が想像できて嫌になる P131

・計画はすべて順調に進んだのに、肝心のそこだけ計画通りにいかなくて」「そんなものさ P144

・人が変わると目に映るものは異なる。同じものでもちがう P146

・この場合の〈かわいい〉は社交辞令だ。
気にしないでいられるような大人になった P156

・警察官が駆け回るような事件は
ネットニュースで見かけるくらいがちょうどいい P173

・さまざまな境遇があって、
嬉しいこともつらいことも口惜しいことも抱えながら
今、夜の底でじっろ目を閉じている。やがてそれぞれの朝へと運ばれる。
新しい一日が誰のもとにも訪れる P191

・自分も一度くらい、無茶をしでかしてもいいのではないかと、
薄まりかけていた覚悟が蘇った P205

・ただの決めつけだったのかもしれない。
もっと柔らかく自由に考えてもいいのかもしれない P253



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