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『わたしはまじめちゃん』の著者・江角悠子さんが語る「頑張り屋さんが楽に生きるヒント」

『わたしはまじめちゃん』の著者・江角悠子さんにインタビューしました。
江角さんは、出版社や広告代理店を経て2006年よりフリーランスに。『anan』『婦人画報』などの人気雑誌で執筆したり、大学の非常勤講師を務めたりと、さまざまな場で活躍しています。2020年からはライターを目指す人を応援するため「京都ライター塾」を主宰。2023年には『わたしは、まじめちゃん。』(京都暮らしの編集室)を自費出版し、エッセイストとしても活動しています。

前半では、江角さんがカウンセリングを受けて気づいたご自身の「まじめ」な性格や、その後の変化についてお聞きします。“まじめちゃん”ゆえに、失敗してしまったエピソードも伺いました。

※この記事は全2回の第1回目です


経験のない仕事は不安。でも不安より、やりたい気持ちを大切にしたい

ライター以外にも、大学の非常勤講師やライター塾主宰など、活躍の場を広げている江角さん。どんな仕事であっても、初めてのときは不安よりも好奇心が勝るそうです。

「やったことがない仕事のオファーが来ると、もちろん不安を感じます。自分にできるかを考えると、怖くなることもあります。
でもそれよりも、やってみたい気持ちのほうが強くて、『自分がやったらどうなるんだろう』を知りたいんです。そんな風に前向きに考えられるようになったのは、やりたい仕事のオファーが増えたから。実は過去には、やってみたいかどうかは考えず、ただがむしゃらに仕事を受けていたときもありました。

会社勤めをしていたときも、フリーライターになってからもずっと『人から頼まれたことは、断わってはいけない』と思い込んでいたんです。私に依頼してくれるのだから、望まれているのだから応えなくてはいけない。まわりが期待する自分でいないと受け入れてもらえないと、長い間信じていました。

ところがフリーランスになって依頼された仕事を全部引き受けていたら、寝る時間もなく、土日も関係なく働き続けることになり、疲れてしまって。ライターとして生計を立てている以上、ある程度の収入も考えなくてはなりませんが、それですごく消耗してしまい、働き方を変えないといけないなと思うようになりました。『断わってもいい』ことを知ったのは、カウンセリングを受けた影響かな。40歳手前くらいで、仕事の取捨選択ができるようになってからは、やりたい仕事のオファーが増えていきました

カウンセリングを受けて、初めて気づいた「怒りの感情の欠落」

江角さんはカウンセリングを受け、自分の感情について、ある特徴を指摘されます。

「あるときカウンセリングを受けたら、『あなたは怒りの感情が欠落している』と言われました。びっくりしたのですが、よく考えてみるとあてはまるなと。何か腹が立つことがあっても、怒っていいのかその場ではよく分からないんです。しばらく経ってから『この間言われたこと、よく考えたらすごく失礼だ』と時間差で気づいたりして。先生からは、『怒る練習をしてください』と言われました。

カウンセリングを受けて怒る練習をするようになってからは、徐々に『本当は嫌だ』と思っていた自分の気持ちに気づくようになりました。いつのまにか、自分の心に蓋をしていたみたいです。

いま考えてみると、夫や家族にも迷惑をかけていましたね。怒りを溜め込んでから、ある日ささいなきっかけで突然爆発するわけですから。相手にしてみれば、なぜいまそんなに怒っているのか、意味が分からなかったと思います。いまは溜め込まず、思ったことはきちんと伝えるように意識しています」

まじめな性格ゆえに、先回りして失敗した経験も

自分自身を“まじめちゃん”と語る江角さんは、頼まれる前に無意識に動いて失敗したことがあるそう。その経験から、何かするときは必ず相手に確認することを意識しています。

「過去に大手企業から、Webサイトのコンテンツ制作依頼が来たことがありました。『新しくWebメディアを立ち上げるので100件くらい記事を書いてほしい』と。その膨大な量に驚き、これは一人で取材して書くよりも、チームを作ったほうがスムーズに進められると考えた私は、ライター仲間に声をかけました。先方の担当者がちょうど京都に来る予定があると聞き、それに合わせて説明会をしてもらおうと先方とやりとりをしつつ、20人程ライターを集めたのです。

ところが当日、思った以上に大掛かりになっていたことに、先方の担当者がすごく驚いていました。『江角さんやその仲間内で少しずつ記事を書いてほしいと思っていたのに、ここまでの人数のライターさんを集めてもらっても困る』と。結局、先方が想定していた状況ではなくなったため、この仕事は白紙になりました。良かれと思って先回りした結果、失敗してしまったんですよね。何とかこの仕事を成功させなければと、頼まれていないことまで勝手にやると、逆に相手の迷惑になることもあると気づきました」

完璧主義を手放せば自分が楽になり、生きやすくなる

子どもが生まれてから考え方が変わった、という江角さん。仕事面でも、ライター仲間がいれば心強いと語ります。

「子どもが一人のときは、ワンオペでなんとかやっていたのですが、二人目が生まれたときに『これはもう一人ではどうやっても無理だ』と思いました。私と夫、二人の子どもなのだから、手伝うではなくて夫婦二人でやるのが当然だよね、と考えるように。夫に任せたことには口出しせず、相手を信頼するようにしたら、協力して家事ができるようになりました。

夫はよく夕飯も作ってくれるのですが、あるとき夜ご飯が鯛めしだけだったんです。おかずは一切なし。もちろん、魚を捌いてを作る大変さは分かるのですが、『おかずは?これだけ?』と思ってしまって。でもそこはグッとこらえて、おいしくいただきました。完璧主義のままの私だったら、せっかく作ってくれたのに、栄養バランスが悪いとか文句を言っていたと思います。

以前は、子どものご飯は手作りするべきとこだわっていましたが、いまはその考えも変わりました。疲れたときは、宅配でも冷凍食品でもいいんです。みんなでおいしく食べられるほうが大事。『100%を目指さないといけない』という考えを手放したおかげで、楽になったのかもしれません。


仕事面でも、頼れる仲間がいると心強いです。子どもが小さいと夜の取材は難しいので、編集部に代わりのライター仲間を紹介して行ってもらったこともあります。独身のライター仲間に、子育てに関するインタビュー依頼が来たときは、友達が私にやってみない? と言ってくれる。そうやってお互いに協力すれば、全部一人でやる必要がないし、うまくいくことがたくさんあると気づきました」

後半では、江角さんがZINE「わたしは、まじめちゃん」を制作したきっかけや、制作後の気持ちの変化、心と体のウェルネスのために行っていることをお聞きします。

後編はこちら

江角悠子さんの年表

1976年:広島県生まれ
18歳:広島修道大学に入学
22歳:京都外国語大学に編入・卒業
22歳:事務職、大阪の出版社、京都の広告代理店でデザイナー兼コピーライターを経験
29歳:結婚
30歳:勤めていた会社を退社、フリーランスに
32歳:長男を出産
38歳:長女を出産
40歳:仲間との共著『京都、朝あるき』(扶桑社)出版
41歳:同志社女子大学の非常勤講師に着任(「編集技術」の講義を担当)
41歳:ライターお悩み相談室をスタート
43歳:ブックライティングを担当した本『亡くなった人と話しませんか』(幻冬舎)発売
43歳:京都ライター塾をスタート
46歳:古い洋館の一室にある私設図書館「わたしの居場所」をお披露目
47歳:ZINE『文章を書いて、生きていきたい』(京都くらしの編集室)出版
ZINE『わたしは、まじめちゃん』(京都くらしの編集室)出版

企画・取材・執筆(香川けいこ)

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