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「メタな構造を可視化したい」アーティストインタビュー three

Yoichi

みんなのギャラリーでの作品展示に合わせて行ったインタビューです。
threeのディスプレイシリーズを出発点に、二次元キャラクターと私たちとの間にあるものの正体を探ってきたthreeの視点を広く語ってもらいました。

ーえっと、今回は、ネコのおせんべいさんにもご参加頂きながら、色々と話を聞かせていただければと思います。よろしくお願いします。しかしほんと可愛らしいっすね。

はい(笑)、よろしくお願いします。

ー前回の香月恵介さんの作品展で展示したPixel Paintingというシリーズの作品は、ディスプレイ機器の構造を絵画に転用するという現代的な作品でした。そして今回threeさんの展示では、ディスプレイシリーズという作品にフォーカスしておりますが、ここでもディスプレイが作品のキーワードになっています。ディスプレイシリーズは、実機を使っている点が他の作品との違いですが、それによって強調されている部分があるとすると、それはどういったことなのでしょうか。

ディスプレイシリーズに限らず、実は平面型の作品のサイズは元々、ディスプレイ機器の画格に合わせて作っています。写真や絵画の規格寸法に準拠した形より、デジタルデバイスの画格に準拠した方が、フィギュアの文脈にも合うということで、活動最初期の頃にルール化したものです。

ーあ、そうか。今回のディスプレイシリーズに限らず、元々平面タイプの作品はディスプレイ機器の画格に合わせたサイズでしたね。そのことは、作品のタイトルからも分かりますよね。


『40V型 7307g』three|フィギュア、木、PVC / W886 × D41 × H498 mm / 2014


そうですね。「24V型 3209g」といった感じのタイトルで、これも最初に決めたルールに則っています。ディスプレイシリーズの場合は、「22V型 Display」というふうに、画格+Displayにするというルールになっています。なので基本的にどの作品もタイトルを見ればシリーズが判別できるようになっています。

それでまあ長いこと作ってきたんですけど、作品のサイズをディスプレイの画角にしているってことがより伝わるような形にしてみたいなとなりまして、だったら実際のデバイスそのものにはめてしまおうと。デバイスを額装的に扱って、より絵画らしいところを兼ねつつ、自分たちのやってきたことっていうのも強調できるかたちにしたのがディスプレイシリーズということになります。

『20V型 Display』three|iMac (MA876J/A)、フィギュア / W485 × D65 × H403 mm / 2022


ー初期の頃から実機を使っていてもよさそうな気もするのですが、割と近年になってから実機を組み合わせたディスプレイシリーズが登場したのは、作品のサイズをディスプレイの画角にしていることが、あまり伝わっていないかも、みたいなことが背景にあったりするのでしょうか。

そうですね(笑)。説明すると、ああなるほどってことは多いんですけど、多くの人がパッと見て分かるかというとそうではなくて。

活動初期から実機を使っていた可能性があったにはあったのですが、三人で活動していると、全員一致で決まったアイデアを優先しがちなので、ようやく最近になってやり出したという感じです。

ーキャラクターたちの居場所、ディスプレイの中の世界といいますか、そちら側からキャラクターが私たちと同じ次元の世界、こっち側に表出したのがフィギュア化だとすると、それをもう一回戻そうとする意識がthreeさんの作品の造形にあって、それによって、フィギュアの実体って何だっけとか、キャラクターが元居た場所はどんな世界なんだっけという問いが生まれているように思います。実機の使用は、そこを強調する意味でも、パッと見て分かりやすいという意味でも効果的なんだなと思います。

はじめ自分たちはフィギュアが溶けてる部分を主に面白がっていて、様々な情報や思いが渾然一体となっている画面の中の世界をイメージしていました。ディスプレイシリーズをはじめ、平面作品全般は画面を内と外の境界のように捉えていて、スクリーンの中の多様に溶け合う世界をスコッと引き出すような。境界からこちら側にある目前の画面は溶けていないフィギュアで満ちて、引き出された中の部分は煮こごりのように溶けているような。そんな情景を想像しながら創作していました。

ーディスプレイシリーズは、画面をスコッとひっぱり出すギリギリ手前の状態ということですね。

そうですね(笑)ディスプレイシリーズをひっぱり出す前の状態とすると、これまでの作品もわかりやすいかもしれませんし、違って見えてくるかもですね。

ーなるほど。一方で、人が見たい・知りたいものを表示する、あるいは見せたい・伝えたいことを表示するのがディスプレイの機能だとすると、作品を見る側のリアクションを受けて、作品に求められている形へのレスポンスとしてディスプレイシリーズが生まれたのは、ディスプレイ自体の性質ともリンクしているように思えますね。

思念によって何かを呼び起こすイメージも作品にはありますね。「ドロヘドロ」って漫画があるんですけど、この物語では、魔法使いの世界と「ホール」と呼ばれる世界が2つに分かれています。魔法使いはホールを行き来するための扉を魔法の力で作り出すことができるんですが、ホールの人間たちは自ら扉を作れないので、魔法使いの世界に行くことができないんです。ところが、ホール側のある博士が魔法使いの遺体を集めて、人造の扉を作り出してしまうんですね。フィギュアの平面シリーズってまさにそれじゃんと。当時よく作品について話すときに引き合いに出してました。他所ではこの話はあまり言ってないんですけどね、気持ち悪いから(笑)。

参照: https://twitter.com/gessanofficial/status/1223997509543981056

でもまあ、思念を込めたものをちょっとずつ積んでいく姿って色んな場面で表出しますよね、賽の河原の石積みとか、山でたまに見かけるケルンとか。それらを触媒に顕現するイメージというか。あちらとこちらの境界の象徴としてのイメージをディスプレイにもっているので、デバイスの画角に準拠した形になっているところもあります。

ードロヘドロはthreeさんに薦められて私もアニメ版を見ましたよ。言われてみるとたしかにディスプレイって境界のような存在ですね。イマジネーションから生まれたもの、例えば架空のキャラクターというのは、それが存在する場所というのも漫画とか小説とかアニメとか、要はメディアの中のフィクションの世界ですよね。ドロヘドロの扉のような、作品に関連する象徴的なイメージというのは他にもありますか?

ターミネーター2のT1000みたいな、ドロッと溶けてメタモルフォーゼしていく感じとか、僕らみんな水木しげる先生が好きなんですが、妖怪の中に「がしゃどくろ」というのがいて。国芳でも有名なあの妖怪です。無数のしゃれこうべが集まって巨大化するというのはコアイメージの一つですね。あとはAKIRAで描写されるような、手のひらに圧縮した想像を絶するエネルギー体とか、そういった表現描写はなんとなくメンバーが共通して持っているイメージだったりします。

ードロッとしたりグチャッとしたりギュッとしたりグワーッとしたイメージ、今挙げられた作品に馴染みのある同世代の私としてもなんとなく共有できる気がします(笑)。

そういったイメージを作品のサイズ感やテクスチャーから感じて頂ければと思います(笑)。

ーディスプレイって考えてみると、お店の陳列のこともディスプレイと言ったりして、結構広い意味がありますよね。

画面を指す言葉を考えたときに、最初はモニターとかスクリーンとか、言葉としては他にもあるなあと思って、作品タイトルをどうするか結構迷ったんです。

ーたしかに。

色々考えたんですけど、フィギュアが遊ぶためのものだとすると、遊びはプレイだなと。あと作品の造りとしてはフィギュアをバラバラにするので、そこに対してフィギュアが好きな人にとってはディスリスペクトに見える部分もあるかもしれない。愛でたりしながら遊ぶプレイと、批判や嫌いだという意味でのディスという言葉、相反する意味合いがくっついているのも面白いかもなと思ってディスプレイになりました。

ーへえ、ディスプレイの語源ってそういうことなんですね。

あいや、絶対違いますね(笑)。というか調べた結果違ったんですけど。

ーあ、そうなんですね。てっきりそういう語源なのかと。でもまあそこは違うとしても、言葉の並び的には自分たちにフィットしたと。

そうですね。ディスとプレイで分けるとそういう意味性も出てくる言葉の並びだなっていうのがあったので。実際はプレイは遊ぶ方のプレイではなくて、プリケア(plicare)、畳むに由来するみたいですね。畳むに否定としての接頭語ディスが付いて、解釈的には、畳まない=広げるということになるみたいで、畳まずに広げて見せるが語源だそうです。

ーなるほど開かれている状態ってことか。技術メディア的な話だと、テレビの一方向性から、インターネットの双方向性になり、最近ではメタバースとかWeb3みたいな話も聞かれるようになって、開かれた世界の中に自らがより入り込んでいく感覚がありますが、今のところそこにはまだディスプレイという境界が保たれているように思います。

画面の向こうのものがこちらへに来ると固まってしまうという風にフィギュアを捉えると、隣接する間の境界の、こちら側と接している面って例えば、かさぶたみたいな感じだなって気がしますね。

ーおお、かさぶたっていう表現は面白いですね。ディスプレイはかさぶたであると。

ちょ、ちょっと違うと思いますけどね(笑)。比喩としてね。今だとVRの中でフィギュアの身体を伴うことができるじゃないですか。自分の身体を伴わなくても自分といえるようになるし、自己が機械化していき、情報化していき、あらゆる状態になったときにもしかしたら、メタ的な自分として存在するのがフィギュアなのかもしれん、みたいにも思ったりして。

ー電脳っていうんですかね。意識・主体が完全にあっち側に移行した場合、元居たこっち側でかろうじてフィジカルな自分としてあるのは攻殻機動隊でいうところの義体で、フィギュアだと。だとすると人々がSNSを使いこなす今の時代、もう僕ら自身フィギュアっぽいじゃんみたいになってきてますね。threeさんはフィギュアというものをどういうふうに見ているのか、改めて聞いてみたくなりました。

『2414g』three|フィギュア、ステンレス、鉄、FRP、PVC、木 / W265 × D265 × H490 mm / 2018


制作の際は還元主義的なアプローチで見たりしてきたので、なかなかその、三人いることもあり、主観的に作品を作るよりは客観的にフィギュアを扱っている感じなんですよね。

僕らがフィギュアを大量に使うというのは、あるキャラクターに依った単一のカルチャーを囲む、より大きなカルチャーの存在、あるいはそれをも囲むもっと大きなカルチャーの存在を見ていくといった感じで、外に外に拡げていくアプローチを取るための素材なんですね。

ー外に拡張するほど、典型的な型になっていくと。

なので三人の中の主観的な想いがベースになった表現というよりは、キャラクターの典型的なポーズや表情→萌え要素→ネット空間の言語→時代や社会背景→昔からある人の業のような記号化されたり抽象化されたりしたメタな構造を可視化したいなという思いで使っています。

ーたしかに、threeさんの作品を見る側からすると、素材でもある個々のキャラクターへの反応、漫画やアニメのジャンル的な部分への反応、アートの文脈への反応、海外からの日本LOVE的な反応といった感じで、様々なレイヤーに対する反応があり、人によって異なる繋がりを作品に見出すことができますね。でそのアプローチ自体が、threeというアーティストの考え方によって成り立っているものの、threeが三人組のユニットであることからして、メンバーの誰かの考えに基づくというよりは総意であるというのも一つの特徴ではあって、多分そこが他のアーティストには見られない傾向にもなっていますよね。

アカウントはあるけど誰がアサインしてるのか分からないみたいな感じですね。

ー誰かの主観で成り立っていないものって、例えば音楽の話でいうと、シティポップとかも、現代の都会的なイメージがあるけど、元は荒井由実とかティン・パン・アレーの参加者たちがその時代の空気観を音楽として表現したってのがあって、じゃあ当時の東京の若者がそんなだったかというのは別の話で、あくまでメタ的なものだったと思うんですよね。昭和レトロブームもそうですが、もともとメタだったものをさらにメタ化して扱っている感じがして、もはやそこで言われているところの東京や昭和はどこにも実在しないような感じがあります。

みんなの中にもう一個東京があるみたいな感じですよね。AKIRAでいうネオ東京とか。そのイメージって郊外からみた東京に近いなと思うんですよ。都心に憧れてる若者が思う渋谷とか。でもほんとはそれって有機的な連なりで色んな人が作った営みとかが積み重なって複合的に作り上げていった総体としての東京なんですよね。

ーthreeさんの立体はまさにそんな感じですよね。無数のキャラクターの総体が一つのシルエットを形作っているけど、その総体を細部から捉えようとしても、細部はどこまでいっても個々のキャラクターでしかないという。

自分たち福島なんで、郊外からの目線に似てるなと思っていて、それで醤油さしの作品はTOKYOって全部タイトルに付けているんですね。あれは醤油さしを群衆一人ひとりに見立てて作っているので、その総体がカルチャーだったり社会だったりを表象するというか、そんなイメージを持っている作品です。

『Tokyo 3D』three
Fish type soy sauce container, Water, INK, Fishing line, Wood / W4000 × D4000 × H6900 mm / 2019
『Tokyo Binary』three
Fish type soy sauce container, PVC, Wood, Water, Ink / W8100 × D1100 × H2800 mm / 2011


ー話は戻るようですが、様々な意見・解釈みたいなものが乗っかる可能性が潜在的に作品にあるので、例えば「プラスチックを減らそう」という今の時代の考えが発生したときに、その文脈が作品に結びついても別に違和感がないというか、作品にとってマイナス要素に感じられないのは、あくまで多数の個体の総体として成り立つ客観的な作品だからなのかなと思いました。

そうですね。平面にしても立体にしてもインスタレーションにしても、表したい先というか形が、総体としての在りようなわけで、それは様々な意見の受け皿でもあるので、色んな人の解釈とか想いとかが溶け合ってできているのをどういうふうに解釈するかは、パラレルにそれぞれの考えや状況をリフレクトしているというか、結びつくような構造の作品なのだと思います。

醬油さしを作っているメーカーが今どんどん減っていて、流通している型の種類が少なくなっています。フィギュアの作品の多くは美少女フィギュアで作ってますけど、フェミニズムとか女性蔑視とか女性嫌悪といった点も言及できると思います。そういった社会の様相が変わっていけば、自分たちの作品で扱うものも変わっていくことになります。

『3017g』three|フィギュア、鉄、PVC、木 / W.340 x D.340 x H.580 mm / 2022

互いの営みはどこかで繋がっているはずというか、作品に照らしていうなら溶け合っているようなものだと思うんです。他者の営みと溶け合い、人とは何か、他者とはなにかが分かる、そして自分自身もそこに含んで、全体をメタに捉えることができればいいなって感じはありますね。

ーなんだかWeb3っぽい話になってきましたね。Web3ってなんなのかちゃんと分かってないですけど(笑)。

そうですね。この溶け合う感じって、メタバースとかWeb3とかの、デジタル空間上に表出しているところが最新なんですよね。

ーthreeさんの作品的に考えるとですよ、要はネットの世界っていうものが一つあるのだとすると、例えば自分や他人がネットにポストした文章とか画像っていうのは、threeさんの作品で言えば一つ一つのキャラクターになりますよね。

そう、それ!(笑)

ー(笑)例えばツイッターで、自分の考えと近い他人のツイートを見つけると、人の意見なんだけど、自分の考えでもあるなみたいなことを勝手に思ったりして、だから逆にいうと自分自身も誰かの考えの一部であるってことが、ネットだと割と成立する話なんじゃないかなという気がしてくるんですよね。

その話の感じを作品としてビジュアライズしてるんですよって言っても、なかなか伝わらないんですよね。ツイッターだと、自分のプロフィールページには自分のツイートだけじゃなくて、リツイートした他人のツイートも一緒に並びますよね。つまり他人の意見も自分の意見としていて、その総体が自分みたいになってますよね。自分が一つのフィルターやレイヤーで。

僕ループミュージックが好きなんですけど、あれって色んなストーリーとか、歴史があってできてる元ネタを、チョップしてサンプリングしていって、別の一曲を作るわけですよね。日本でも本歌取りって方法があると思うんですけど、歌の造りをサンプリングして、今だったらこれだよねみたいな味付けをして、別のオリジナリティを発生させたりしているんだと思います。

引用のみで作ってますみたいな、コンピレーションアルバムみたいな造りから発露するオリジナル性みたいなものが、どう機能したり評価されたりしていくのかなっていう、社会実験的な側面が自分たちの作品にもあるんじゃないかなって勝手に僕は思っていて。

『84V型 30.94kg』three|フィギュア、アルミ、PVC、木 / W1863 × D115 × H1049 mm / 2016


ーもしかしたらそれって、実名のアカウント一つで展開しようとすると結構難しいのかもしれないですよね。ユニットとか、匿名アカウントとか、あるいはゲームとかだと展開しやすいのかな。

threeって名前はそもそも固有名詞ではないですし、第三者とか三人称みたいな意味合いも含んでいて、匿名性が備わっていると思います。それからアジア圏だと、共感覚というか、他者と自分とが共有し合ってるような感覚が文化としてあるみたいな話を読んだことがあります。たしかそれを一言で表すと「縁(えにし)」とか「縁起」と言うんだってことだったと思います。

ーなるほど、繋がり合うことで起こすことができるんだと。私も今日のインタビューを通じて、だいぶthreeさんと同期できたような気がしています。今後は、私もthreeである、あなたもthreeです。という感じで作品を説明していきたいと思います。作る人、語る人、見る人、三位一体ですとかって。

(笑)。よろしくお願いします。


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