第7回目の参考図書のご紹介は、金井壽宏・野田智義『リーダーシップの旅 見えないものを見る』(光文社、2007年) 2016年

参考図書の紹介記事から

あるところで、研修のための参考図書の紹介を書いていました。その時の紹介記事を再掲していきます。

第7回目の参考図書のご紹介は、
金井壽宏・野田智義『リーダーシップの旅 見えないものを見る』(光文社、2007年)

リーダーシップの形成過程を旅に見立てて、本質に迫っていきます。リーダーは見えないものを見て、それをフォロワーに描いてみせることが重要だと説きます。すぐにリーダーシップを身に付けたい、リーダーを育てたいという方のための本ではありませんが、リーダーシップとは何かを改めて考え、自らのリーダーシップのあり方や、生き方そのものを深く振り返るのには、とても良い本です。

リーダーというと、多くの人は「すごいリーダー」を想像してしまいます。立派な政治家、大統領や指導者、ガンジーのような偉大な指導者などを思い浮かべます。まさに、「すごいリーダー」という幻想ともいうべきイメージがあるといいます。

この「すごいリーダー」幻想が、リーダーシップ獲得の妨げになります。本書では、リーダーシップとは、私たち一人一人が自分の生き方、生き様を問うことだと説き、旅という比喩でリーダーシップ獲得のプロセスを3段階に分けて説明していきます。

本書の目次構成は以下のようになっています。

序章 「リーダーシップ」はなぜ心に響かないのか
第1章 リーダーシップの旅
第2章 なぜリーダーシップが必要なのか
第3章 旅の一歩を阻むもの
第4章 旅で磨かれる力
第5章 返礼の旅

どの分野でもリーダーが必要だと言われてはいますが、実際に多くの人たちは、リーダーシップなんて自分とは関係のないもの、縁のないもの、遠い世界のことだと思っているのではないでしょうか。

社長になろうと思って社長になった人はいても、マネジャーを目指してマネジャーになった人はいても、リーダーを目指してリーダーになった人はいません。マネジャーは組織が任命しますが、リーダーはメンバーが決めます。

リーダーは自らの行動の中で、結果としてリーダーになるのです。フォロワーが最初からいるわけではなく、リーダーになる過程で、フォロワーが現れます。リーダーシップは、本を読んで修得するものでも、誰かから教わるものでもなく、私たち一人一人が、自分の生き方の中に発見するものです。自らが何かを選択し、行動することで、人は結果としてリーダーと呼ばれます。

フォロワーの存在が、リーダーを決定するといっても良いでしょう。本書にはリーダーとフォロワーの関係について、次のように書かれています。

企業内でのリーダーシップを測る場合、私は「指揮系統下にいない応援団がどれだけいるのか」を試金石と考えている。「後ろを振り向いたら、嫌々ではなく、喜んでついてくるフォロワーがいますか?」という問いかけによっても、リーダーシップがその場に発生しているかどうかを目に見える形で試すことができる。あくまでも、リーダーからの視点にこだわるならば、「喜んでついてくる」を「勝手についてきた」と言い直してもいい。

「指揮系統下にいない応援団がどれだけいるのか」、「後ろを振り向いたら、嫌々ではなく、喜んでついてくるフォロワーがいますか?」という問いかけは、考えさせられます。後ろを振り向いたら誰もいなかったでは、リーダーとはいえません。

リーダーとは、リードする人という考え方もあります。従来のリーダーシップの考え方はこのようなものでした。先頭に立っていく人、引っ張っていく人、まさにリードする人です。しかし最近の考え方では、リーダーシップは、対人影響力という広い意味で使われることが多くなっています。

リーダーは自分自身の力でリーダーになったのではなく、フォロワーの力もありますし、周りの力も大きく影響しています。色々な力を、周りからギフトとしてもらっているのです。このギフトという考え方も、考えさせられます。

この「ギフト」についても、以下のように書かれています。

私たちは、人生において色々な力を「ギフト」としてもらっている。生まれつき両親から授かったものもあるし、努力してつかんだギフトもあるかもしれない。リーダーシップの旅を歩き続け、結果としてリーダーになった人はとてもたくさんのギフトをかち取っている。しかし、自分ではかち取ったと思っていても、その大部分は周囲の人たちの協力があってこそ、手に入ったものだ。それらのギフトは、人々の営みがつくり出す社会の上で花開き、育まれ、認められたものだ。ギフトというものには、世界共通の原則がある。もらったギフトは返さなくてはいけない、くれた相手にではなく、他の人や社会に対して返すという原則だ。

まさに至言です。

リーダーシップは一握りの凄い人だけのものではなく、すべての人に内在する可能性であることに気づかせてくれる一冊です。

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