第6回目の参考図書のご紹介は、ケン・ブランチャード&ジェシー・ストーナー『ザ・ビジョン』(ダイヤモンド社、2004年) 2016年

参考図書の紹介記事から

あるところで、研修のための参考図書の紹介を書いていました。その時の紹介記事を再掲していきます。

第6回目の参考図書のご紹介は、
ケン・ブランチャード&ジェシー・ストーナー『ザ・ビジョン』(ダイヤモンド社、2004年)

原題のFull steam aheadは「全速力で前進する」という意味で、蒸気機関車や蒸気船など蒸気の力で動くものを、蒸気をめいっぱい出して全速力で前進する、という言葉が語源です。

組織が全速で前進するには、分かりやすく、説得力があり、メンバーがやる気になるような明確なビジョンが必要です。本書は、ビジョンの創造方法、定着方法を、物語仕立てで描いていきます。

主人公のエリーは離婚後、保険会社で経理の仕事に就きます。そこでひょんなことからジムと知り合いになり、毎日朝早くにジムと話をするようになります。実はジムは、この会社の社長でした。

エリーと社長のジムは、会社のビジョンについて考え始めます。二人は他の会社や組織のビジョンを調べ、分析し、ビジョンづくりに必要な3つの要素を見つけます。それは、有意義な目的、明確な価値観、未来のイメージでした。そして、組織内にビジョン定着させ、機能させるためには、ビジョンを創造するプロセス、ビジョンを伝えるプロセス、ビジョンを実践するプロセスが重要であることも明らかにします。

エリーは自らが所属する経理部のビジョンづくりに関わり、経理部の仕事の仕方も変えていきます。同時に、自分が家庭を顧みていないことにも気づき、子供たちと一緒に「我が家のビジョン」もつくり、自分の「人生のビジョン」も作成していきます。

本書の目次構成は以下のようになっています。

未知の世界へ
光のなかへ
「ビジョン」とは何か
ビジョンの要素(有意義な目的
明確な価値観
未来のイメージ)
めまい
今がなければ、未来もない
視界がひらける
新たな課題―ビジョンを現実にする
ビジョン創造のプロセス
ビジョン伝達のプロセス
ビジョン実践のプロセス
勇気
「成功」から「意味」へ

本書で提唱されている、説得力あるビジョンを生み出すための三つの基本要素は、「有意義な目的」「明確な価値観」「未来のイメージ」です。

有意義な目的の条件は、以下のようにまとめられています。
1.目的とは、組織の存在理由である。
2.目的とは、単に事業の内容を述べたものではなく、「なぜ」という問いに答えるものである。
3.目的とは、顧客の視点に立って、その組織の「真の使命」を明らかにしたものである。
4.偉大な組織は深遠で崇高な「目的」、すなわち社員の意欲をかきたて、やる気を起こさせるような、「有意義な目的」をもっている。
5.表面的な言葉づかいより、そこから人々に伝わる「意味」のほうが重要である。

価値観は、以下のように説明されています。
目的は「なぜ」を、価値は「いかに」を説明するもので、「価値観とは、ある種の特質を好ましいと考える、深い信念のことである。自分にとって何が正しく、何が大切かは、その人の『価値観』によって決まる。私たちは、『価値観』を目安にして判断や行動を選択していく。

未来のイメージとは、以下のようなものです。
1.未来のイメージとは、最終結果のイメージ。あいまいではなく、はっきりと思い描けるイメージである。
2.なくしたいものではなく、つくりだしたいものに焦点をおく。
3.最終結果に到達するまでのプロセスではなく、最終結果そのものに焦点をおく。

本書で提唱されている方法で考えていくことで、パワフルな、価値観あふれる、未来のイメージが明確なビジョンを描くことができるでしょう。地方自治体においては、まちのビジョンももちろん大切ですが、自組織のビジョン、課単位のビジョンも重要です。管理職は課のビジョンを示し、向かうべき方向を明確にし、職員を疲弊させることなく、前進させる必要があります。

本書にある、自分自身の死亡記事を書くことで、自分自身のビジョンを明確にしていく方法も、なるほどなと思いました。ドラッカーの「なにによって覚えられたいか」という問いにも通じるものがあります。未来から今を見つめ、そこからビジョンを考える方法も有効でしょう。

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