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謹賀新年2024:元旦全面新聞広告分析

#元日 #新聞広告 #基軸 #企業メッセージ #広告分析 #広告 #ストーリーテリング

あけまして、おめでとう御座います。
 元日の朝、昨年と比較して穏やかな天候です。
例年と同様に朝3時に起きて中央紙(朝日、日経、読売、毎日、産経、東京)の広告15段(全ページ)の分析)をいたしました。

 この分析は、今年で22年目となります。今年も、昨年同様に、広告分析に止まることなく、各紙の一名目や社説と合わせながら面白いと感じた視点も加筆してみます。

 昨年は、20000ビューと数多くの方にご覧いただきました。
よろしければ、今年もお付き合い下さい

(以下2023年の参考)


【2024年 各紙一面のタイトル比較】

朝日新聞:「その未來は幸せか、希望は言葉の中に」
(8割(はちがけ)社会1:多和田葉子)
日経新聞:「解き放て」
読売新聞:「移植見送り60件超」
毎日新聞:「正義の牙 突如私に」
産経新聞:「森元首相の関与有無 解明へ」
東京新聞:「声上げた 政治が動いた」

各社新聞1面タイトルより

東京新聞は、昨年元日に第1面が「話し合いをあきらめない」というタイトルでしたが、今年は、「声上げた 政治が動いた」周到な請願 再生エネ促進 と一貫してみんなが主人公でまちを変える。みんなが主人公である、みんなが声を上げることを2年連続して新年で説いています。

東京新聞1月1日

 日経と朝日が、第一面に日本の人口構成比をベースに我々に未来の在り方をそれぞれに問うています。

朝日新聞1月1日

 朝日は、2040年に高齢者率35%、働き手の現役世代(15〜64歳)は、今の2割近くの1200万減ることでの変化を多和田葉子の「献灯使」を使い説明。
健康なシニアと体力が落ちて心を病む子供たちを対比させ
・・・年寄りが弱くて子供が強いという考えが通用しなくなる。動けない若者を90代がケアする時代を説く。

日本経済新聞1月1日

 それに対して、日経は、2027年に20〜30代の比率は37.7%で、底打ちして上げ、若年層中心世界で、世界へのアプローチを問います。

いずれにしても、時間の尺度の捉え方と、未来への描き方で、本年度のこれからの広告表現の未來の描き方に影響していきます。

【2024年新聞全面広告総評】

では、広告分析に話しを戻しましょう。
2024年、新聞広告6紙に掲載された全面広告は、トータルで142ページです。
過去6年間増え続けた新聞広告が、今年初めて減少しました。

インターネット中心の広告の中で、何故か元旦新聞広告だけは増え続けていましたが、昨年の164ページから13.5%減少です。

減少しても今年の広告で明らかに目立ったのは、【自社の基軸が見えた】企業はそれを新聞だけでなく、他のメディアでも発信しているようです。

 相変わらず、自分の存在領域を過去の成功体験、ケーパビリティに頼っていて、新しい方向性を見出していないところは、新聞広告だけでなく、発信力が弱まっていると感じます。

昨年も申し上げましたが、単なるモノを売る広告や自社アピールだけの企業は少なくなり、私達に新しいメッセージや共感するものが主目的の広告が増えています。

昨年、元旦広告に復帰した花王やAmazon初売りは消え、昨年消えたヤマト運輸が復帰。

・・・「大切なことを、ずっと、大切にできる未来へ。」-ヤマト運輸

日本経済新聞1月1日広告

ヤマト運輸が守るべきはなんでしょう。
それは目に見えないもの。
それは、数字では表せないもの。
安心。やさしさ。心づかい。

→【基軸】を明確に見つけた時に、企業広告のメッセージ方向が決まります。

A【基軸を明らかにした企業メッセージ1】

「この土地で生きていく。その歓びをつないでいく。
【大和ハウスグループ】(全紙)

読売新聞1月1日広告

大和ハウス工業株式会社は、元日のほかのハウスメーカーが初売り、もしくは商品機能・性能訴求をしているのとは全く異なる企業の在り方を鮮明に打ち出しました。

尾道市瀬戸田町。生口島と高根島、2つの島からなるこの町の特産品であるレモンに注目し、関東から移り住んだ斉藤明美さんのブランドAKEMILEMONの立ち上げ、レモン料理のレシピ考案、活動拠点ごちそうの森のワークショップ。

ダイワハウス工業が、その土地に根ざす人達と生きるメッセージです。
地方創生、新しいハウスメーカーのあり方を提示したと言えるでしょう。

B【基軸を明らかにした企業メッセージ2】

①「はじめまして、地球」POLA(日経)

日本経済新聞1月1日広告

今年は珍しく化粧品メーカー3社が、元日広告に登場した。
中でも、POLAの宇宙発想のスキンケアcosmologyの発売。
JAXA採用のスキンケア。ウォータリークレンジング処方、三次元立体構造処方などスキンケアと宇宙の関係追求して興味深い。

②「肌から元気にする科学 ロートスキンケアサイエンス はじまる」ロート製薬(日経)

日本経済新聞1月1日広告

ロート製薬というと、従来までは目薬やメンソレータムというイメージが、今や、肌への挑戦にかなりシフトチェンジ。
人体最大の【臓器肌】へのアプローチへシフトするものです。

この臓器肌は、「皮膚、人間のすべてを語る」(みすず書房)モンティ・ライマンの万能の臓器と巡る10章に繋がりました。

ロート製薬の全体像に繋がる概念をこの広告原稿では示唆しているようです。

C【基軸を問い続けた企業メッセージ】

①「1枚の壁から、家族の100年の物語が始まる」-ベーベルハウス(全紙)

日本経済新聞1月1日広告

ベーベルハウスのこの数年のコミュケーションの進化は著しいです。
一昨年までは、A C Lコンクリートの頑丈さ訴求が、昨年は、「幸せよ、続け」そして今年は、「家族を考え続ける家」へと人間・家族を訴求。

D【基軸の転換か、展開か】・・・昨年のESG視点から変化させたみんなそれぞれの方向へ

「未來は、みんなでつくるもの」-トヨタイムズ(全紙)

東京新聞1月1日広告

昨年は、豊田章男前社長が、ESG視点の企業の想いを独占インタビュー、日本の底力を世界に示す局面を訴求。
今年は、未來掲示板で進むべき未來は方向性はないと明言。
グラフィックは、掲載新聞ごとに全て変える。
まさに、回答は一つでないことをビジョアルで明示化しました。

→センスメイキング理論でのストーリーテリングです。

E【基軸を考察するには】

お正月広告には、数多くの出版社の広告が出稿されます。
その表現には、イマをどのように生きるべきか、人間として、企業としての考え方をメッセージしているものが見えます。

①「ここに〈問い〉がある、私たちの〈課題〉があるーーー。」
岩波書店(朝日新聞)

朝日新聞1月1日広告

世界の「客観的」認識というのは、どこまで行っても私達の「主体」の側のあり方の問題であり、主体の利害、主体の利害、責任と分かちがたく結び合わされている、ということーその意味でまさしく私達が「どう生きるか」が問われているのだろうということを・・・
(「君たちはどう生きるか」吉野源三郎より)

これは私達が数多くnoteで論議してきたセンスメイキングの出発点であると考えます。

②「物語を、どうぞ。」ーK ODA N SH A

読売新聞1月1日広告

Inspire Impossible Stories
まさに第75回目に配信した「表現しなきゃ、思考ではない」と結びついて考えられます。

③「最高の主人公と、ひとりでは 行けない場所へ。」-新潮社

東京新聞1月1日広告

ひとりでは気づけなかったこと、ひとりでは見られなかった景色、ひとりでは聞けなかった言葉

そんなことを見つけることで、新しい自分を創造する。

【まとめとして】

 一昨年からのウクライナ問題が終わる前に、さらに昨年からは中東パレスチナ自治区ガザの惨状にあります。

日本市場では政治の不安定。円安・株高経済も決して全面的に回復したとはいえないと思います。

生成A Iの活用にもまだかなり課題があります。AIと我々人間との共生の為には、人間性そのものを考慮したものをベースにしたものがより必要になると思います。

 今回、広告表現、第一面、社説を同時にに並行して見ながら、新しい時代の転換期にあることがより鮮明に分かります。

 暮れの31日総理府発表の人口推計では、05年生まれの新成人は23年から6万人減少し、過去最少です。
合計特殊出生率は、1.26と過去最低で、少子化のままです。

ここから、我々自身が今度はストーリーテリングをすることが必要です。

 転換期にこそ、再度【基軸】を見直しているみるタイミングではないでしょうか。

皆様、お正月から長文お付き合いありがとうございました。

ご意見賜れましたら、幸いです。

改めてまして、今年もよろしくお願い申し上げます。

(完)