見出し画像

"らんまん"に構想力を学ぶ

#マーケティング #らんまん#フッサール#SECIモデル#センスメイキング#ReDアソシエイツ#構想力#牧野冨太郎#共感

【はじめに】"らんまん"から元気をもらう

毎朝、NHKの朝の「連続テレビ小説」植物学の父 牧野冨太郎モデルの"らんまん"を観ると、その日一日とてつもなく、元気が出る方がいるのではないでしょうか!(それは、私だけかな)

 実は、私は生まれて初めてNHKの連続テレビ小説を見始めたのです。

これに見事にはまりましたね。

 この"らんまん"に惹きつけられるのは、牧野万太郎こと冨太郎にだけでなく、他の周りにも夢を追う人間の清々しい生き方、自分の思いや願いを追求することの魅力を感じるからだと思います。

夢を追う人間がいると、それがまわりに伝播する、共感するということでしょう。

 毎回、何度何度もさまざまなパターンで出てくる「苦悩から決意へ」向かう様々な人達、体制に縛られない自ら新しい道を切り開く力に感動します。

 今、日本の企業に最も欠けていると思われる念い(おもい)を明らかにして、そのプロセスで喜びとまた新たなる発見に満ちた生命力溢れる生き方を"らんまん"は、みせてくれます。

コアになっている"日本独自の植物図鑑を編纂する"という万太郎の夢が周りの人間にプラスに伝播するんですね。

今週は、万太郎を幼いころから見守り続けてきた恩人竹男と、東大に通った時の万太郎の友人藤丸が、新しい酒を作る為の醸造の話をする夢を語るシーンに感動しました。

毎朝、いろんな場面に涙を流しながら観ています。

 この"らんまん”こそが、私が長年かけてきたビジョン思考、センスメイキングに通じる何かがあり、先般からお話ししている【構想力】を表す物語りではないかと考えます。

 脚本、演出、出演者相互の作り出すストーリーメイキング、ナラティブのうまさが光ります。

 今回はそんな思いを込めて、日本企業そして私達個々人に何が今必要になっているかを書きます。

1.構想は、共感から始まる
・・・【自分がやりたいことは何か】・・・センスメイキングの感知(Scanning)は、単に観察するだけでなく、ありのままに感じ、意味を作ること。

 牧野万太郎は、幕末土佐で造り酒屋"峰屋"の長男として生まれ、植物をこの上なく愛するようになっていきます。

 身体は弱いが、「日本独自の植物図鑑を編纂する」という信念で上京し、植物学者の紹介で、東大植物学教室で研究し、さまざまな業績をあげます。しかし、初代植物学教授田邊の思い通りにならないことで出入り禁止になってしまいます。

万太郎は、独学でかつ自費で、石板印刷を買い、植物学の雑誌を発表します。

その後紆余曲折ありながら、東大助手として復帰します。

 しかし、あらたなる日本の植物学は、ドイツから復帰した德永がドイツからの解剖学的方向にウェートにあり、万太郎の目指す方向とは異なって、また自分の在り方、やりたいことを考えます。

 次々と起こる変化に、万太郎は、常に【本質直観】を起点に、「何が問題なのか」を認識し、自己の経験や内面で考えを繋げて【自分自身が本当にやりたいことは何か】を追求し続けます。

【構想には、主観力が駆動します】

この"らんまん"がコロナ禍を経て2023年の今放映されている意味がそこにあると思います。

「今、わたし達は、新しい暮らし方を模索し、未來を構想しなければならないならない」と。

2.自分の本質を捉える方法 ・・現象学フッサールの相互主観の考えに求める

では、どのようにして、自分の本質に辿り着くのでしょうか。 

<フッサールの自分の本質を捉える過程>

①私達は、他者や環境との関係、相互作用によって様々な経験をします。

②次に、それを通して感覚と知覚によって認識が生まれて、それが【行為】に繋がります。

③-1 この認識が生まれた時、「ああ、そういうことなのか」と、まず主観の内部に変化が起きます。

③-2 同時に、自分の起こした身体的な行為が他者や環境を変化させます。

④ここで感情移入、【気づき】、予知、イメージの獲得などの反応が生じます。

自分と他者、自分と環境という区別が無意味になっていきます。

「人間が作るものは全て境目がある。それをガウディは悲しく思ったんじゃないかなと思うんですね。」

サグラダ・ファミリアの彫刻家外尾悦男

(NHK「サグラダ・ファミリア2023」8月19日放送)でも人間の在り方、根源をついた言葉が印象的でした。


【主観と客観】の区別が付かない。→【共通感覚】が立ち上がる→【共同化】(socialization)(*野中郁次郎名誉教授のSECIモデル)



デザイン思考やビジョン思考、センスメイキングでは、【観察・洞察】と呼んでいます。

つまり観察とは自分の本質をつかまえることから始まるのではないでしょうか。

万太郎の妻寿恵子は商売を始めるために訪ねた明治初期の渋谷の空き家で自分がいだいた印象を疑いながら言います、 「万太郎さんなら歩いて観察する」と。

3.エスノグラフィーは、観察しインサイトを探る唯一の方法である・・・共感に繋がり、自分ゴトで考えるとは

 現在行われているほとんどのリサーチの客観的な観察と解釈では、2のような洞察はできないでしょう。

 実際に顧客の立場に立って、暮らしの場やコミュニティに入り込んで感性を働かせ、対象者である顧客自身も気づいていない【潜在的悩み】を感じ取ることが必要です。それが、エスノグラフィーです。

 繰り返します。観察する前に対象者を分析し、解釈しようとするのではなく、バイアスを捨てて、包括的、直観的に知識・情報を得る為の方法がエスノグラフィーです。

 そのことを通して、現場や顧客の中にある暗黙知、インサイトとして潜む生きた情報を感受できます。

万太郎の友人東大助教授の波多野は万太郎の姿に感化されて宣言します、「僕は、みえないことを見る」と。そして、イチョウとソテツの精子を発見します。

この2〜3年の間に、様々なクライアントからご依頼を受けましたが、インサイトを探索するエスノグラフィーをできているところはほとんどなく、予定調和的に表面に見えるもの、対象者が話した回答から答えを求めているケースが数多く見られました。

 では、どうやって暗黙知、インサイトを知ることができるのでしょう。

<自ら考えて【自分ゴト】にするとは>

自分自身の主観も一旦停止する →自分自身の思いや好き嫌いを超えるテーマや概念を自覚する →自分自身の主観が何かを改めて知る →自分がなぜそう思ったのかを考える →だから本当は何をやりたいのかに繋がる。

“らんまん"では、【はじめに】で述べた万太郎の思いそして心の葛藤を何度も描きながら、作者長田育恵のストーリーメイキングで見事に作品が作られています。

【自分ゴト】になるのはストーリーメイキングの力。

 だから共感します。これがビジョン思考やセンスメイキングの根本概念だろうと思います。

4.人間や社会にとっての意味や価値の発見ができるか・・・解釈(Interpretation)から意味付け(Enactingt)のプロセス

①通常のブレーンストーミングではできない

まとめ方が上手いだけでは、新しい知は生み出されない。アイデアや意見を自由に出し合って、きれいにまとめられて、満足してしまいがちのブレーンストーミングがあります。

これまで何度も申し上げている「仮説生成力(アブダクション)」をベースに考えることが必要です。


 無意識の思い込みと思考のバイアスを捨てて、新しい知を生み出す視点には、【対話】が必要です。

 対話は、主観と主観のコンバットになります。


つまりブレーンストミーミングにない対話とは、

主観と客観を綜合するプロセス(自分自身との対話→言葉にならない暗黙知の気付き→この次に言葉による対話)です。

これを私達は、【ダウンロードミーティング】と呼んでいます。

(補足)
※ここで、言葉だけでなく、絵を描くなど、身体を使った対話や身体的な相互作業が有効になるケースもあります。寸劇や即興劇など言葉を超えて、体感を共有して相手の心を掴むことができます。

万太郎は初め一人で植物図鑑を作ろうとしていましたが、周囲に思いを伝えることで、仲間が現れ、対話を繰り返すことで新種を発見し、図鑑を作る方法にも気づいていきます。

②ウォーターフォール型からアジャイル型へ変換しなければ時代遅れになる

ウォーターフォール型とは、企画や要件整理をきちんと整備して、どちらかというと上位から指示を得て進めるやり方です。ほとんどの日本企業では、まだこのパターンです。

a)要件整備、課題明示

b)自分の頭で分析

c)発想する

d)立案・構成・設計

e)シミュレーション或いは現場の検証

f)その構想案やプログラムを関係者に移転

PDCAを回すことを重視し、その為の検証リサーチをする。
(PからAまでが長すぎて、意味を持たないものが、ほとんどですが、自己防御の検証になります)

このモデルは、自分の脳から発して他者に伝わるという1950年代のコンピュータ導入期のモデルであり、計画管理という視点からは、優れています。

しかしながら、伝達がかなり一方的であることと、構想前と構想後のタイムラグがあり、時代変化に合わなくてなっているケースが多くあります。

 現在アジャイル型は、開発プロセスでの俊敏性で、開発が上流から下流に段階的でなく、成果を顧客と共有し、顧客からのフィードバックを取り組むと方法です。
これが、ビジョン思考、センスメイキング理論やその前にあった2011年からのデザイン思考に共通する考え方です。

③中期経営計画の形骸化・・・「組織は戦略に従う」常識を疑う

 中期経営計画で時間がかかるという経営者クラスの方が時々います。 

中期経営計画は悪いものではないのですが、現在のように変化が早い、しかも複雑な経営環境で数年先の計画が成り立ちにくくなってしまっています。

どんどん中期経営計画を策定しない企業が増え始めました。

それは、計画は立てても、実行できなくなると、【自分ゴト】でなくなってしまうからでしょう。

 戦略策定の際に戦略立案と実行が別だという慣行も見直されています。つまり、戦略立案担当が戦略を立て、決められた戦略で組織に属する個々の業務を遂行する(組織は戦略に従うという)常識が見直されています。

④ビジネススクールで、「戦略論」と「組織論」を別々のカリキュラムにするのは?非現実的

 21世紀に入り、従来までの科学的、分析的、演繹的マネジメントモデルの行き詰まりをベースに、戦略とは、経営者や策定部門の所有物ではなく、全組織員の実践するものという考え方に変換してきています。

⑤会社の存在意義は、人や社会にとって価値あるものを生み出すことが如何にできるかに変わった

20世紀型の規模の経済による効率性追求ではないと、ジョン・ヘーゲル3世(デロイトの会長)が言っている。

急激なDX、デジタルインフラ化は手段にしか過ぎない。問題は、何度も言及している様に目的であるはずです。

昨年、あるセミナーで講演した際に、そのような話をしたら、次のような質問がありました。

「まずは、DXにするのが第1ステップなんです。それから目的やXを考えるんです」

目的がないと企業の方向性はなく、手段だけの会社になり、自分ゴトで考えなくなります。

5.まとめとしてのご提案

今回まとめとして、今までさまざまクライアントにご提示しながら、積み上げできた内容を2枚の図解にしてみました。

一般社団法人センスメイキング・アソシエイツは、まだ存在していない、私どものvision名称です。

まだ、世界では、デンマークに存在するReDアソシエイツなる人間科学を基盤とした戦略コンサルティング会社が唯一センスメイキングの研究し、コンサルしている状況です。

そのノウハウは、オープンにされてはいません。

そこで私どもは、日本独自の文化や文化人類学、哲学、社会学をベースに動き出しました。

最後までお読みいただきありがとうございました。