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VOL.13寄稿者&作品紹介29 ふくだりょうこさん

某SNSを拝見していると、とにかく最近のふくだりょうこさんはお忙しそう。仕事絡みのエントリーではとくにインタビューやライヴレポートのものが多くて、その顔ぶれがまた、煌びやかなこと。今年になってだけでも、最近はNHK大河ドラマくらいしかリアルタイムに見ていない私にも〈顔と名前と役〉が一致する人が続々と出てきて、びっくり。松山ケンイチ(「どうする家康」の本多正信!...っていうか「平清盛」の清盛!!)、山本耕史(「鎌倉殿の13人」のメフィラス三浦義村!...っていうか「新選組!」の鬼の副長!! )、山田裕貴(「どうする家康」の本多忠勝! )と間宮祥太朗(「麒麟がくる」の明智左馬助!)...ええと、基本的にインタビュアーは黒子ではありますが、これらの記事にはふくださんのスタッフ・クレジットが入っているので紹介させていただきました。他にもあの人とかあの人とか、すご〜い! 今度サインもらってきて(嘘、でも発行人はけっこうミーハーw)。

そんなふくださんは文芸誌「Sugomori」を主宰し、プライベートではまろんさん(兎)の世話も怠らず、そしてWitchenkareには第10号から掌編小説をご寄稿し続けてくれて...前作「死なない選択をした僕」は近未来が舞台でしたが、今作はお葬式という、ちょっとセンシティヴな物語設定。昨今のPCな風潮では取り扱いがむずかしいテーマではあるものの、でもだからこそ、人間の心の動きを率直に記した本作は意味のあるものだと私は思いました。祖母の死に立ち会っている主人公の「私」。冒頭からしばらくは祖母の介護〜葬儀にまつわる母親と父親のスタンスの違いが描かれており、こう言っちゃなんですが、祖母が長寿だったこと、家族にとってはあまり喜ばしいことではなかったとわかります。キツい状況。

後半の「私」と妹との会話も、どちらが優しくてどちらがドライ(冷たい、ではないような...)なのか微妙な展開。器量(←とりあえずルッキズムのことは置いておいて)のことで、祖母目線では二人の間に贔屓差があったようなことも語られていて、いやあ、年寄りに「考えかたを変えろ」と若い人が言ったって、年寄りにすると自分の来し方を否定しされているようでなかなか受け入れられない...このことは、私自身が年寄りになったので痛感しています。なかなか、ねぇ。「うるせえ、オレはいままでこうやって生きてきたんだ!」...反省します。あっ、なんか愚痴みたいになってきたので、とにかくみなさま、本作を読んでいろいろ、それぞれ、の立場で思いを馳せてみてください。

「お姉ちゃんは、どういう気持ち?」
 じっと私を見つめる妹。適当な返しが許されない気がして、椅子に背中を預けて考える。自分の気持ちを言語化するのは思いのほか、ためらわれた。
「腹が立つ、かな」
「怒るんじゃないんだ」
「さんざんひどいことをしてきたくせに。せめて、苦しみながら死ねばよかったのに。あんなに朗らかな顔して死ぬとか許せない」
 自然と声が小さくなる。ここで言うべき言葉ではないことぐらい、私にもわかっている。少しばかり、うしろめたさを感じながら隣を見る。妹の表情からは何も読み取れない。
「ごめん、引いた?」
「ううん。お姉ちゃんは優しいなあ、と思った。ちゃんと、おばあちゃんが死んだことに感情がある。私は何も感じない」
「何も?」
「強いて言うなら、せいせいした。うるさかったから。あたしがやることなすことにうるさかったから。女らしくいろ、なんて、くそくらえだよ。そう。くそくらえ」

〜ウィッチンケア第13号掲載「この後はお好きにどうぞ」より引用〜

ふくだりょうこさん小誌バックナンバー掲載作品:〈舌を溶かす〉(第10号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈知りたがりの恋人〉(第11号)/〈死なない選択をした僕〉(第12号)


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