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2023年半年のスタッフとしての滞在から感じた。エコビレッジはVUCAの縮図だ。

こんにちは。みかです。環境保全の分野でお仕事をしていたことをきっかけにエコビレッジの代表 坂本純科さんと出会い、短期滞在の体験やお仕事をとおしてエコビレッジに訪問していましたが、この度2023年7月から12月の長期で滞在する機会に恵まれました。2023年7月の記憶がもう遠い昔のように思えるぐらいエコビレッジでの滞在は内容が濃いものになりました。新年を迎え、私が心に残っていることをここに記していきたいと思います。なぜ書こうと思ったのか、それはエコビレッジで出会った本に下記のような一説があったからです。

良い文章とは、誰も思わなかったことを書くことではない。
誰もが思いながらも、言葉に出来なかったことを書くことである。
                             橘川 幸男

これを読んだときに私が敬愛するインドの思想家サティシュ・クマールが思い浮かびました。彼も大切なことを何度も繰り返してくれます。愛や平和の祈り、自然の大切さ、そして食料を作ってくれる人たちへの尊敬などについて何度も訴えてくれます。私も大切だと思ったことを「言葉にしてみる」に挑戦してみようと思います。
エコビレッジってなんぞやって方は、おはぎが書いた記事をご覧いただきたいです。生活の様子がわかりやすく書かれています。


VUCAの時代が体現されるエコビレッジ

とタイトルも含めて断言してみましたが、ふとVUCAな状態がエコビレッジで起こっていたのではと思いました。
なお、VUCAとは、
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)
という4つの英単語の頭文字を並べたもので、予測が困難で変化が激しい社会を表す言葉です。日帰りや2泊3日では体感しにくいかもしれません。もし体験したい人はエコビレッジに1か月以上いるのがよいと思います!ボランティアは募集中です。

特に夏の繁忙期は8人の共同生活に加え宿泊のゲストたちの滞在や修学旅行や企業などの研修受入、さらに余市町内外のお世話になっている皆さんとの出会い等々、とにかく豊かな関係性によって様々なことが進んでいくエコビレッジでした。裏返せば人間関係だけを切り取っても多くの人との関りは複雑かつ多様であり、常に変化に富んだ場でもありました。

北海道大学Campus Asia

また、農的な暮らしをしているからこそ、天候に左右されやすく予定していた外作業は雨になるとできなくなり、日程変更や他の作業への切り替えを余儀なくされました。修学旅行の受入などについては雨の日のための別のプログラムを考えておくことも重要なお仕事でした。また、来訪する人数変更があるとベットメーキングや宿泊するお部屋の変更に伴う準備内容の変化にも柔軟な対応が求められました。受入プログラムに関しても来てくれる方々の様子に合わせて少し内容を変更したりと、きっちりする部分と柔軟に構える部分と両方を持ち合わせる必要がありました。

2023年11月11日雪が積もりました。

渦中の中にいると、目の前のことを1つ1つ確実に対応していたので俯瞰して物事を考えられなかったですが、今振り返ると溢れかえったり変わったりする情報や人の出入りがある中で、事故や怪我もなく過ごせたことに胸を張って自慢をしようと思います。私の周りにいたスタッフやボランティアの皆さんもわからないという不安やストレスを抱えながらも、よいよい方向を目指して進んでいたからこその成果だと思います。感謝です。

このような決められたことを着々とという言葉は全く似合わず、天候やその場の雰囲気、関わる人等々の不確定要素が多い中でお仕事と日々の暮らしを進めていました。このような環境にVUCAという言葉がぴったり当てはまると今は思うのです。

エコビレッジで何をしていたのか?

ワークショップ等の企画・運営の実績に加えて、イギリスのシューマッハカレッジへの留学をとおして英語という新しい武器を手に入れたことで、純科さんからお声がけいただき、主に下記のことを担当しました。

  • ワークキャンプ参加ボランティアのコーディネート

  • 英語漬け体験の新規企画・運営

  • 修学旅行などの体験事業のリーダー及び運営補佐

  • エコビレッジで行われる各種イベントの運営補佐

  • その他、エコビレッジの暮らしに必要なこと(掃除、料理などなど)

電気を使わないワインづくり

ここでは1番大きな役割であったワークキャンプ(受入先や受入先の地域のために活動をする合宿型のボランティア)のコーディネートについて紹介したいと思います。
ワークキャンプの実施にあたっては、NGO NICE(日本国際ワークキャンプセンター)さんとの共催事業で、エコビレッジでは毎年夏の時期にイギリスのカーディフ大学の学生を1か月程度受入を行っています。もうかれこれ10年以上になるのだとか。2023年はカーディフ大学の学生3名が1か月の滞在を2回、計6名が2か月エコビレッジに滞在しながらエコビレッジや地域に必要なことを一生懸命行ってくれました。

私の役割は、ボランティアの皆さんのお仕事や料理担当、お休みを他のスタッフと調整し、ボランティアの皆さんにお伝えしたり、問題があればお話しあったりすることでした。文字で書くとあっさりしてしまいますが、小さなことから大きなことまで多彩なことを把握しながら進めていく必要があり、初めての長期滞在であった私からすると、まず何が必要とされているのか、優先度はどうなっているのか、それにどのくらいの時間がかかりそうなのか、道具はどこにどのくらいあるのか、雨が降ったときはどうするのか等の基本的な情報を把握するのに苦戦をしました。
が、純科さんをはじめ周りのスタッフに助けられながら、そしてボランティアの皆さんのポジティブな雰囲気に助けられながら、毎日のお仕事を進めることができました。

打ち合わせ中

ワークキャンプの主なお仕事は、薪割り、草刈り、ワインブドウに有機堆肥蒔き、下水溝の掃除、宿泊客のためのお部屋の準備、納屋や食品庫の整理整頓、地元の農家さんのお手伝い、体験プログラムの準備や運営、トマトやさくらんぼなどの収穫、加工食品づくり、料理、塗装等々、上げたらきりがないぐらい多岐に渡りました。2023年は猛暑でしたので、連日30度を超える中でお仕事に励んでくれたことに頭が下がります。私も可能な限り一緒に取り組みましたが、どれも初めてで、、、効率よくなんてできないですが、「できたね!」という成果が見えたときは嬉しかったし、仲間意識も高まりました。

下水溝掃除

エコビレッジ滞在をとおして得た気づき

私がいた期間でも700人ぐらいの方がエコビレッジを訪問したり、ボランティアにきてくれたり、外作業を一緒にしてくれたり、エコビレッジの会員さんと畑やワイン作業などなどを楽しみました。一期一会の出会いやここで起こっている事をただ受け止めたり、参加することをとおして、私の中で多くの気づきや学びがありました。ぱっと思いつくだけでも下記にリスト化してみます。

  1. 0から生み出すすごさ

  2. 手作業VS機械

  3. 人々の成長

  4. エネルギーを作り出す難しさ

  5. 積み重ねと衰退

  6. お金のない物々交換への感謝

エコビレッジには「ないなら作ればいいんだよね?」な意識を持っている人たちが集まっちゃうようです。種から作物を育てていることに加えて、梅シロップ、梅酒、ニワトリ用の給水機、コンポスト置き場、サクランボジャム、トマトソース、パン、ピザの生地、小鳥の小屋、太陽光パネルの設置台、サンドバックもどき、焚き付け、薪、タイニーハウスに空いた穴の修繕、タイニーハウスの電力消費を抑えるためのスイッチ、ニワトリが自由に動けるスペース、外にできたシャワーブース、漬物などなど。

さくらんぼコンポート

都会にいたらお金を払って購入するようなものたちが、ここに集う英知によってつくられていく過程を目の当たりにし、私はただただ感服していました。あーすごい。可能な限りその場にあるものを使っていくことにも創造力の高さが垣間見れました。料理もその場にあるものでどう工夫して美味しくするのか、パズルのように難しいけど完成した時の満足度はとても高いです。

一方で、手作業ではなく機械を導入してはどうかという意見も聞かれました。ワインブドウ畑の株周りの草刈りを続けていたところ、猛暑の中であり腰を屈める単調な作業であることから、身体への負担もあるとのことでした。いうこともわかります。仮払機を使わない理由は、安全性の確保(斜面に株が植わっているので使い慣れていないと地面にある小石等が飛び怪我をする恐れ)、ガソリンの燃焼によるCO2排出抑制、株の伐採防止です。では、充電式の仮払機を導入してはどうかという意見もありましたが、初期費用やどのくらいの時間稼働が可能なのか等の課題もあり、すぐに購入にはいたりませんでした。インドの環境活動家ヴァンダナ・シバのように手で作業することで動作1つ1つに愛情がこもっていると説得力を持って伝えられるように、または手作業でも楽しいことを一緒に考えられるようになりたいと強く感じました。皆さんはどう考えますか?

ひとつひとつ着実に

いろいろなことが起こるエコビレッジですので、この場での暮らしをとおして私も含めてスタッフやボランティアの皆さんが成長したこと、それを実感していることにも感動しました。日本人のボランティアさんは、英語が話せなかったのですが、英語話者の方と暮らすうちに3か月後には文章を作れるようになっていました。海外からのボランティアの皆さんもそれぞれ、今までやったことがなかった料理や外作業にも慣れたこと、テレビがない生活でも大丈夫、エコの実践など自分の「できる」を広げることができたとお話してくれました。少しでも自身のいいね、をみつけられた場に居合わせることができた私は幸せ者だなぁと思います。

いただいたアンコウのFish and Chipsは格別

エコビレッジという名前からして普段からエネルギーの使用は可能な限り削減をするように試みています。2023年は会員さんが中古の太陽光温水パネルを手に入れてきてくれて、それでシャワーを浴びれるように外にシャワーブースを設置してくれました。灯油やガスを使わないで温かいお湯を使えることに太陽とその機械、設置してくれた会員さんに感謝でした。
ですが、エネルギーを作り出すのはやはり難しい。私は、母屋から離れたハウルの動かない城(タイニーハウス2)で寝泊まりさせてもらっていました。ここは完全オフグリッドのため電気は太陽光パネルで発電。曇りが続くと発電量が足りなく5分ぐらいで照明が切れてしまい、懐中電灯生活がしばらくつづきました。懐中電灯の電灯にカメムシが集まってきて、明かりが少し弱まってしまうこともしばしば。太陽光パネルにつなぐバッテリーを交換したり、余っていた太陽光パネルを使って増設したり、照明の電球をLEDに変えたことで、その後は全く問題なく照明や充電を使うことができました!会員さん、ありがとう!
もう1つ、薪ストーブです。誰もが憧れる薪で暖を取ること。現実は違いました。上手く火がつけられないと部屋の中は煙が充満し、快適ではありません。薪を運ぶ手間や薪ストーブを点ける時間の確保や時々確認しないと火が消えちゃったりと、私の思い通りには全くいきませんでした。そもそも薪を作るのは手間もかかるし乾かすのに時間もかかります。でも、薪を燃やすのはカーボンニュートラルなので、地球全体のことを考えるとガスや灯油よりよいんですよね。と頭ではわかりつつ簡単ではありません。

煉瓦で蓄熱

様々な人が関わるからこその良い面ともったいない面も目撃しました。サワードウを使ったパン作りが得意なボランティアさんがいて、気が付いたら美味しそうなパンが食卓に並んでいるという夢のような時間を過ごしていました。その人が去ってしまったら、それが無くなってしまい、、、保存されていたサワードウも駄目になってしまいました。。。コンポスト入れも作ってもらいましたが、やはりその人がいなくなったら、触る機会も減ってしまいまいました。でも、コンポストはできあがっていそうで来春には活躍しそうです。きっと必要な時にそれが得意とか挑戦したいという人が来るんだろうな。そのような場所だとも思うのです。

もはや芸術の域

お金を使わないやりとりにもたくさん出会いました。アンコウや鮭をいただいたり、サクランボやプルーンを持ってていいぞと連絡をいただいたり、漬物や大根をたくさんいただいたり。すべて美味しく料理したり、保存食にしたりしていただきました。エコビレッジからもお菓子や畑のお手伝いにいかせてもらったりとお互いの得意分野で支え合うコミュニティの一員になれたことにとても嬉しく思いました。

いざ出陣!

みんな、何をしているんだろう。

私が滞在していた半年間で濃淡はありますが多くの方に出会い、その人がいる国や地域について気にするようになりました。逆にカーディフ大学の学生から能登半島地震の発生時に「大丈夫?」と連絡をくれたりと。全世界の人口からしたらわずかな人数ですが、このような人と人のつながりが国や文化のつながりを超えた相互理解、そして平和な世界につながっていくのかなと思っています。

カーディフ大学からのボランティア 旅立ちの日

良い文章とは、誰も思わなかったことを書くことではない。
誰もが思いながらも、言葉に出来なかったことを書くことである。
                             橘川 幸男

冒頭にかかげたこの言葉の通り、私の中で言語化したいことを書いてみました。この最後の文章を書く段階になっても、エコビレッジでの暮らしはいい意味でカオスだったなぁと。進む方向性は決まっているけど、どうやって草刈りをして、でも小石や切り株があって思うように進むなかったり、レールを引いて、でもレールの材料がなかったり、どのような電車をつくって、どのような内装や外装にして、どのようなスピードで進むのかということをエコビレッジのスタッフやボランティアの皆さんと考えながら、大変だけど少しずつベターな方法を取って前に進むことができたのだなと改めて思います。

私自身もこのような環境に身を置くことができたので自分のできる範囲の拡大、どのようなことが起こっても大丈夫という謎の自信ができました。関わってくださったすべての皆さんに心から感謝を申し上げるとともに、これからもエコビレッジで出会う方にお目にかかれることを楽しみにしています。


NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト
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We are SLAY queens:)