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映画 HELLO WORLDは思った以上にサイバーなSFだった

見た

映画の「HELLO WORLD」をみた。

脚本は小説家の野﨑まど。アニメでは「正解するカド」の脚本で物議をかもした……らしいが、カドを見ていないのでわからない。10月からは著書「バビロン」シリーズがアニメ化される。

私はまだ原作第1巻である「バビロンⅠ 女」を読み終わりそうなところである。

なんだかんだで脚本の野﨑まどの著作をいくつか楽しく読んでいるため、このHELLO WORLDも見ようと思って見てきた。ちなみに土曜の日中、劇場はお世辞にも満員御礼とは言い難い埋まり具合だった。見た感想としては、(特に序盤が)見ていて痒くなるような青春ラブコメだったが、内容はかなりしっかりとしたSFだった。

あらすじ

京都に暮らす内気な男子高校生・直実(北村匠海)の前に、10年後の未来から来た自分を名乗る青年・ナオミ(松坂桃李)が突然現れる。
ナオミによれば、同級生の瑠璃(浜辺美波)は直実と結ばれるが、その後事故によって命を落としてしまうと言う。
「頼む、力を貸してくれ。」彼女を救う為、大人になった自分自身を「先生」と呼ぶ、奇妙なバディが誕生する。
しかしその中で直実は、瑠璃に迫る運命、ナオミの真の目的、そしてこの現実世界に隠された大いなる秘密を知ることになる。
(公式サイトより)

この「現実世界に隠された大いなる秘密」、なんか宣伝記事でもバラしてるし実際に物語のわりと冒頭10分くらいで言っちゃってるのでネタバレ度が低いとして言うと、「主人公の暮らす世界は過去のデータを蓄積しているデータベース内の記録世界で、直美も瑠璃も過去のデータで再現された存在」というもの。ナオミは未来からタイムマシンで来たわけではなく、システムにハッキングして侵入した状態だと。そんな世界で瑠璃を救っても現実の瑠璃は生き返らないが、データを改竄することによりシステム内で『あったはずの未来』が紡がれるので、それを観測することで死んだ彼女のいろんな顔を見るのがナオミの目的。ナオミは直美に瑠璃とお近づきになるためのアドバイスを行いつつ、彼女を守らせるためシステムに作用して諸々作り変えるスーパー軍手を与える。

なお、キョート三本足のカラスに導かれてトリイ・ゲートをくぐるとコトダマ空間にアクセスして物語が始まるので、この映画は実際ニンジャスレイヤー2部である(ぐるぐる目)。

感想

少年少女の青春きらきら学校イベントパート、少しずつ本当に惹かれていくふたり。瑠璃の好感度が上がるたびに増えるナオミの謎ゲージ。警備員のような姿をした世界側の改竄修正システム。そしてたった一人の女の子を守るため、光るスーパー手袋のパワーでセカイの理を捻じ曲げて戦う少年。まさにボーイ・ミーツ・ガール青春セカイ系作品だ。主人公、自分の世界の真実を伝えられても「イーガンっぽい」の一言で受け入れるSFオタクですごく良かった。

演出面ではとにかくスピード感があった。上記の部分は第一部といった感じで、その後、ナオミの真の目的とかナオミ側の世界の話とかそういった展開にシフトするが、こう複数の短編をつないで長編にしたような、そんな感じだ。演出では「君の名は」を意識したところがあったように思える。3DCGはシーンによっては今一歩違和感があるところがあったかな。

あと、スタッフロールの参考文献?がめっちゃくちゃ多くて字が小さくてぜんぜんわからなかったけど、SFがあったのはわかった。

ちなみに聞いたところによると、原案時点ではもっとゴリゴリのSFだったが、「君の名は」ヒットの流れの影響で「エンタメに振ろう」いうことになってだいぶ脚本を書き直したらしい。なるほどたしかに、めっちゃくちゃエンタメだった。もともとのゴリゴリSFも見てみたかった気がするが、これはこれで。


それから

パワー手袋で瑠璃を守るまではぶっちゃけ「ウワーッはずかしい!青春!アイテムのサポートありとはいえ大立ち回りできる少年!かゆい!」と思って見ていたけれど、そこから先が「ウワーッそういうこと!なるほど!急にSF濃度上げてきやがったな!」となってひじょうにたのしかった。

その部分をネタバレしながら感想を書こうと思ったけど、どうしても中途半端なアレになりそうだからいいや。やめました。



野﨑まど作品によくメインキャラで出てくる「周囲を振り回す浮世離れしたストロングガール」が出てこなかった。ストロングなガールは出てた。

野﨑まど作品だいたいが「起・承・転・結・ネタバラシ」なので、「まだなんかあるだろ!」って思ってしまった。あった。

ついでに

ついでに、氏のデビュー作「[映]アムリタ」と2作目の「舞面真面とお面の女」が新装版で出たそう。

あっこの表紙の女が最原最早……!いや旧表紙にも同じ子がいましたね。うん。この「[映]アムリタ」から続く同世界の5作品についてもそのうちなんか書きたいね……。

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