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【童話 #33】小人さんのお引越し

※小学校低・中学年向けのお話です
(お子さんにとって難しい漢字や読みは一緒に考えてみてください)

たっくんの家からひっこしすることを決めた小人さんは、家を出たあとに、どこに住もうかとかんがえながら、のんびりと旅(たび)をしていました。

背中(せなか)にある大きなバッグを肩(かた)からおろすと、段差(だんさ)になった石ころの上に腰(こし)をおろしました。
「どっこいしょ」

小人さんはまだまだ若いのにつかれたような声をだしました。
どうやらバッグがとても重かったのでしょう。

バッグにはきがえのシャツ、パンツ、タオル、らくがき帳(ちょう)、そしてえんぴつなどが入っていました。

そうそう、もう一つありました。それはとおくをみわたすことができる双眼鏡(そうがんきょう)です。
小人さんはたっくんの家のかべの中から、この双眼鏡を使い、たっくんの様子をのぞいていたのです。けれど、この双眼鏡はもういらなくなりました。

小人さんは、とちゅうにあるごみ捨てばにすてることにしました。

ひっこしさきを決めずにたっくんの家を出た小人さんは、つぎはどこに住もうか考えながら、てくてくと歩きました。

どれくらい歩いたでしょうか。日もくれはじめ、辺りは暗くなってきました。
街からもはずれ、どうやら森へ足をふみいれてしまったようです。

やさしくふく風で木々がときよりざわざわとゆれる音がします。
今までも壁の中に住んでいた小人さんは、暗いところは平気です。はなうたを口ずさみながら進んでいきます。

暗い中に明るく光るものが小さく見えます。小人さんはひとまずその光に向かって進むことにしました。
近づくにつれて、その光は木の上の高いところにあることがわかりました。
小人さんにとって木の幹(みき)ははしごの段差(だんさ)みたいなもの。
みがるにすいすいとのぼっていきます。

光がだんだん大きく見えるところまで来ました。
「ドン」
小人さんは大きな何かとぶつかりました。
やわらかく、ふっくらしています。

小人さんが上を見上げると小人さんよりも大きなふくろうがそこにいました。
片目(かため)をつぶって、小人さんの方を見ています。

「ふくろうさん、ぶつかってごめんなさい。」
小人さんは気まずそうに話しかけました。

ふくろうは小人さんの顔まで近づきながら言いました。
「小人さん、こんな夜中(よなか)にどうしたんだい?」

小人さんはふくろうにたっくんの家からひっこしさきをさがして、森へ足をふみいれたことを話しました。

ふくろうは夜までひっこしさきが決まらない小人さんを気のどくに思いました。
そして、「小人さん、良かったらこの木に小さな家を作ってそこに住んだらどうだい?」とふくろうは言いました。

小人さんは答えます。
「森の中で自然(しぜん)とふれながらくらすのも悪くないね。だけど、家を作るためには小さな木がたくさんいるけどなあ。」

今度(こんど)はふくろうが答えます。
「小さな木なら、たくさん持っているよ。だから、それを小人さんが使うといい。」

小人さんはふくろうが用意(ようい)してくれた木を使って、木の上に小さなお家づくりを始めました。
暗い森の中を2つの光が照らします。
ふくろうが両目(りょうめ)をあけて、その様子をじっと見ているのです。

ぶじにひっこしさきが決まった小人さんは安心(あんしん)したのか、お家ができあがると、すぐにねむりについてしまいました。
ときより、むにゃむにゃとねごとを言っています。

ふくろうも両目をとじて、しずかな森はまっくらとなりました。

ずいぶんと長い間、旅をしていた小人さんですが、ようやくひっこしさきが決まりました。

たっくんの家とはちがって、この森で小人さんにはどんなことが待っているのでしょう。

そして、優しくほほえんだ顔で寝ている小人さんは、どんな夢(ゆめ)を見ているのでしょう。これからのお話が楽しみですね。

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東田純平
ありがとうございます。気持ちだけを頂いておきます。