『さよなら、意識高い系(仮)』 第2話「文潮砲炸裂 起業家、毎朝新聞記者と不倫」

「個人情報漏洩のハタライジング カリスマ金髪社長しげるんの正体 就活を食い物にした出会い系ビジネスでボロ儲け 名ばかりイクメンは記者とゲス不倫三昧」

 「文潮砲」が炸裂した。「週刊文潮」にHRテック企業、株式会社ハタライジングの代表取締役社長、しげるんこと前原茂の不倫報道が掲載された。

 前原が不倫相手の記者とホテルやマンションから出てくる瞬間を捉えた写真が掲載された。その写真以上に記述は赤裸々だった。

 一部を抜粋する。

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 渋谷の国道246号線沿いにそびえ立つ高級ホテル。ある日の夕方、チェックインをすませ入っていった男性。トレードマークの白に近いほどの金髪をニット帽で隠し、メガネとマスクで変装した彼は、いま、飛ぶ鳥を落とす勢いのベンチャー企業、株式会社ハタライジングの代表取締役社長、前原茂だった。HRテックと呼ばれる人事関連のITサービスで急成長し、新興市場への上場も果たした。

 彼がチェックインした30分後、部屋に入っていく女性がいた。彼女は、毎朝新聞の経済部記者。起業家に全国紙記者という多忙な二人がホテルを出たのは翌日の朝だった・・・。

 この日だけではない。前原が女性記者の住む中央区勝どきのマンションに入っていく様子を我々は目撃した。やはり、前原が出てきたのは早朝だった。愛車のVOLVO XC90に乗り込む前原を見送る女性記者の姿を私達はとらえた。

 前原は妻子ある身である。2人の子供に恵まれ、「イクメン」として知られていた。同社も働き方改革企業、子育てパパ・ママ応援企業として知られている。しかし、彼は禁断の愛に走った・・・。

 我々は前原の会社の元社員にインタビューした。名前、現在の勤務先を絶対に明かさないという条件で、彼は取材に応じてくれた。

 「前原さんが、イクメンだなんて、とんでもない。彼はメディアの取材がくるときだけいい顔するんですよ。でも、子供は正直です。ある日、イクメンぶりを取材する際に、“子育てしている俺”ポーズで写真を撮ろうとしたら、子供が嫌がったんです。まあ、子供は恥ずかしがるものですけど、でも、あれは普段からなついていない証拠ですね。ハタライジングが働き方改革企業だなんて嘘ですよ。社員はみんな、疲弊しています。メディアの方も、いつも広報から深夜にメールが返ってくることを不思議に思っていました。バレていますよね、きっと」

 「実際の彼は、イクメンならぬ、ホテルに行くメンですよ。ホテルの名前は伏せますけど、いつも管理部門には246沿いにある高層ホテルの特別フロアの領収書が彼から届くのです。社内では、あのホテルのことをスピアルームと呼ばれていました。え、どういう意味かって?槍と部屋ですよ。これ以上言わせないでくださいよ。奥さんの代わりの人と行くからという意味もあります。もう、彼がイクメンであることを一緒になって嘘をつくのがつらくて、僕は会社をやめました。イクメンどころか、生き埋めにしてやりたいくらいですよ」

 さらに、起業家事情に詳しい人物はこう語る。

 「彼、奥さんと結婚する前は、芸能人とつきあっていたこともあるんです。前も文潮さんじゃないけど、写真週刊誌にとりあげられましたよね?グラドルとの秘密のデート。でも、あのとき、わざわざ記者にグラドルと宮古島に行くことをリークしていたらしいんですよ。ただ、さすがに前原ごときに宮古島まで密着取材するのはあれなので、羽田で写真をおさえたのですけどね。目立ちたがりの彼らしいですね。でも、そのあと、破局して、学生時代からの知り合いの女性と結婚したんです」
 
 事情通の彼はこう続ける。

 「新興市場に上場する少し前から、毎朝新聞の経済部記者Tさんに知り合ったんですよ。彼女はテック系ベンチャー企業の取材に力を入れていて、その関係ですね。上場するのではと噂されていた頃から、かなりハタライジングを追っていましたからね。ただ、ミイラ取りがミイラになるじゃないですけど、いつの間にか、交際にまで発展していました。Tさんは社内恋愛していた、社会部のエース記者Oさんと別れて前原に走ったらしいですよ。大恋愛ですね」

 そのハタライジングだが、先日報じられた個人情報漏洩事件や、クライアント企業への不適切なデータ提供問題などが明るみに出ており、窮地に立たされている。さらに、本誌では就活のOB・OG訪問アプリ「シャカイジンドア」による、会社員が学生に不適切な関係を迫る事案が多発しているとの情報をキャッチした。

 絶体絶命のはずなのに、社長本人はゲス不倫。ハタライジング社、毎朝新聞に問い合わせたところ、両社とも期日までに回答がなかった。本誌ではこの気鋭の起業家、イクメンの虚像を今後も徹底追及する。さて、禁断の愛の行方はいかに・・・。

 文潮砲が炸裂したあと、SNSはこの件で大炎上した。
 「しげるん(前原茂)、社長を辞任しろ」

 「何がイクメンだよ!」

 「しげるんを持ち上げていたフェミども、出てこい!」

 「毎朝はいつも権力を叩いているのにダブスタwww」

 「毎朝は業績悪くて社長交代なのに、記者は勝どきのタワマンかよ!」

 「スピアルームwwwww草生えた」

 「ちゃんと記者会見しろ」

 しげるん信者と、アンチ、さらには外野がネット上で荒れに荒れた。

 そのときである。

 毎朝新聞のT記者こと、経済部武内恵子記者がTwitterの認証済アカウントを更新した。

 「毎朝新聞経済部の武内恵子と申します。週刊文潮の記事に関してご説明いたします。私に関する記述は、概ね事実でございます。お騒がせしてすみません。ただ記者としてその関係をもとに取材したり、論を曲げたことはありません。記者が不倫するよりも、不倫で報道を曲げる方がまずいです」

 ネットはより、ざわつきはじめた。

つづく

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

なお、この物語は正式タイトルを構想中です。皆さんからのご意見をお待ちしております。

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