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「ゲーム作りは青春だ!」 第三話

【主要登場人物】
・月森 颯太:主人公。中学2年生。器用貧乏だが飛び抜けた特技はない。
・鷹野つむぎ:ライバル。中学2年生。子どもの頃からプログラミング教室に通っている。
・若狭 瑛士:颯太の幼馴染。ゲーム好きでPCにも強い。
・流星ラパン 中高生に人気のVTuber。便利なAppやIT技術を紹介している。

【導入】颯太の部屋

自分の部屋で流星ラパンの配信を見る颯太。
ラパンはゲーム作りについての解説をしている。
ラパン「ゲームの技術を身につけると未来が広がるね!」
その言葉に惹かれる颯太。
颯太「未来……!」

【1】颯太の家 リビング 夜

ナレーション「数日後」
夕食後、食器を洗って片付ける颯太。
いつものように2Fに上がるが、タブレットを持って降りてくる。
颯太母「あら?」
颯太父「どうした?」

颯太は意を決して言う。
颯太「父さん、母さん、俺……」
颯太「ゲームを作ってみたい!」
颯太「今まで貯めた小遣いを使って高性能パソコンを買いたいです!」

そしてタブレットに表示されている資料を見せようとする。
颯太「ゲームなんて遊びって思うかも知れないけど、実はゲームの技術って……」
颯太母「いいじゃない、やりなよ!」
颯太父「応援するぞ! 父さんは何を手伝えばいい? サウンド?」
颯太「えっ?」
颯太母「じゃあ私はロゴとかデザインしてあげる」
颯太「えっ?」

驚く颯太。
颯太「あ、いやそういうのはいいので、許可をもらおうと思って……」
颯太母「颯太が颯太のお金で颯太の好きなことをするんだからいいじゃない」
颯太父「勉強もちゃんとするんだろ?」
颯太、立ち尽くしている。
颯太母「どうしたの?」
颯太「いやー、なんか反対とかされると思っていろいろ準備してたのに」
笑う三人。

【2】颯太の部屋

少し時間が戻って冒頭の流星ラパンの配信。

ラパン「アンケートによると流星ラパンの視聴者は小学生から高校生が多数です!」
アンケートのグラフを出すラパン。
ラパン「小学生でも中学生でもゲーム開発はできます!」
ラパン「でも必要なものもありまーす!」

ラパン「一つは機材! これがないと始まらないね! ゲーミングPCとか持ってる人はそれで大丈夫!」
ラパン「CPUは早いほど、メモリはたくさん載ってるほど開発しやすいです。あとグラフィックボードが載ってる方がいいかな!」

ラパン「あ、でもね! みんながインターネットしたり勉強したりするようなマシンでも開発はできるよ。ただ、みんなが開発したいゲームが動くよりもちょっと上のスペックがあるといいね!」
コメント欄では必要スペックに関するトークが始まっている。
「RAM64gbくらい?」「32で十分じゃない?」「高いグラフィックボードは高いから」「そりゃ高いものは高いだろ」

聞きながらスマホでパソコンの値段を調べている颯太。

ラパン「そしてもう一つ大事なもの!」
スマホから顔を上げて画面を見る颯太。
ラパン「親に邪魔されない環境でーす!」
コメント欄に同意の声「ですよねー!」「未だにゲームが悪とかいう親いる!」
ラパン「これはラパンはそんなに助けになれないからみんなそれぞれがんばってもらうしかないんだけど」
ラパン「コンピューターやってる部活に入るとかプログラミング教室に行かせてもらうとかやり方はいろいろあるからね!」
コメント欄に様々な意見。「パソコン部とかある学校いいよなー」「うちはっリモート授業だからみんなけっこういいPC持ってる」

ラパン「でも親御さんがみんなの将来を心配してゲームなんて……と言うならちょっとだけ手助けができます!」
ラパン「さっきもちょっと言ったけど、アニメーションや3Dの技術はゲーム以外の分野でも当たり前に使われているし、ゲームの仕組みを学習や社会お仕組みに応用するゲーミフィケーションなんていうものもあるんだよ!」
ラパン「ゲーム技術の社会活用という資料がここにまとまってるからこれを見せてゲーム作って身につくことがたくさんあるって教えてあげよう!」

画面にURLが出る。それをスマートフォンで読んで見てみる颯太。

ラパン「だいたいゲーム作るなら数学とか英語とか物理とかいっぱい勉強しないとダメだしね!」

【3】学校の校庭 放課後

颯太「と、いうわけで」
笑顔で瑛士と話す颯太
颯太「パソコン選びたいから手伝ってくれない?」

瑛士「いいですけど、時間かかるから土曜日ですかね?」
颯太「土曜日、いいのか?」
瑛士「塾行くの夕方からなんで、その前なら」

瑛士「お金とかどうするんですか? けっこうするし現金じゃ辛いですよね?」
颯太「あ、買うのは通販。父さんが注文してくれるけど実物見て決めたくて」
瑛士「なるほど」

そんな二人を鷹野つむぎが追い越していく。
楽しそうな二人の様子に軽く笑顔になるがすぐに打ち消して追い抜く。
つむぎ「お先に失礼」
瑛士「あ、鷹野さん。また明日」
颯太「おお、またな」

【4】つむぎの帰路

つむぎ「颯太くん、楽しそうだったな」
先程の颯太を回想するつむぎ。

ナレーション「鷹野つむぎにとって」
ナレーション「月森颯太はヒーローだった」

保育園の運動会で1位を取る颯太。
それを親の影から見ているつむぎ。
小学校、市の大会で表彰台の3位に立つ颯太。
遠くから眺めるつむぎ。

颯太「ちくしょー! 勝てなかった!」
颯太の友達「3位だってすごいじゃん!」
颯太「じゃあ水泳では1位になってやる!」
その様子をうらやましそうに眺めるつむぎ。

水泳大会で表彰台の2位に立つ颯太。
悔しがっている。
観客席から見ているつむぎ。

小学校4年。
朝礼で作文コンクールの入賞を校長に褒められる颯太。
列の中にいるつむぎ。

ナレーション「何にでもポジティブに挑戦する颯太は」
ナレーション「内気だったつむぎが変わるきっかけになった」

【5】つむぎの過去

小学校4年生のつむぎと両親の会話。自宅のリビング。
*つむぎの自宅は3LDKのマンションでやや広め。
つむぎ「わたし、プログラミング教室行ってみたい!」
つむぎの父「知らない人いっぱいいるけど大丈夫かい?」
つむぎ「お母さんみたいなエンジニアになりたいもん!」
つむぎの母「うれしい! じゃあ週末、見学行ってみようか」
つむぎの父「お母さんみたいなエンジニアもう一人いたら我が家は最強だな!」

大学生くらいのメンターに教えてもらっているつむぎ。
パソコンの前に頭をひねっているつむぎ。

算数の勉強に打ち込むつむぎ。
わからない問題を母に教えてもらうつむぎ。

ノートPCで作ったものを両親に見せるつむぎ。
拍手する両親。

壇上で作ったプログラムの発表をしているつむぎ。
教室で表彰されているつむぎ。

中学生になり制服を着ているつむぎ。
中間試験の成績1位に「鷹野つむぎ」と書いてある。

夜中の1時。プログラミングをしているつむぎ。周囲には様々な本が積まれている。PCにはWebカメラなどの機材も積まれている。

U-18 プログラミングコンテストの表彰式でグランプリを取るつむぎ。
客席で拍手している両親。公の大きな大会でスーツ姿の男女が多い。

【6】つむぎの帰宅

大きめのマンションに入り、エレベーターに乗っていちばん上の階で降りるつむぎ。電子ロックのキーを開け、自宅に入る。
場面転換して部屋着で勉強しているつむぎ。
カレンダーにはテストの日程やコンテストの締切、プログラミング教室の日程などが書かれている。

夕食の支度をするつむぎ。
外からつむぎの母が帰って来る。
つむぎの母「ただいま。会議多くて疲れたー!」
つむぎ「おつかれさま! 今日の夜、イワシの梅煮でいいんだっけ?」
つむぎの母「助かるー。それでオッケー!」

つむぎの母とつむぎ、二人の夕食。
つむぎ「お父さんいつ帰るんだっけ?」
つむぎの母はスマホを見て答える。
つむぎの母「明後日かな」
つむぎ「じゃあ明日も二人分ね」
つむぎの母「いつもありがとう!」

【6】つむぎの部屋

勉強しているつむぎ。息を吐きだして勉強を終える。
時間は9時半。勉強道具を一通り片付けてPCの電源を入れる。
PCの周囲にカメラを2つセットし、自分はマスク型のデバイスを口につける。
※周囲に声をもらさずに通話をするためのデバイスです
さらにヘッドホンをつけるつむぎ。
つむぎ「あー、あー、テストテスト」
変換された声「あー、あー、テストテスト」
ヘッドホンに変換されたつむぎの声が帰って来る。ややデジタルな高い声。

PCで様々なファイルを開いていくつむぎ。
ソフトウェアも複数立ち上げていく。
時間は22時少し前。

口元はマスクで見えないが真剣な顔になるつむぎ。
22時ちょうど、つむぎはしゃべり始める。
つむぎ「やっほー! 流星ラパンのおしゃべりの時間がやってまいりましたー! みんな元気〜?」
変換されたラパンの声「やっほー! 流星ラパンのおしゃべりの時間がやってまいりましたー! みんな元気〜?」

壁にはつむぎがもらった賞状が飾られている。
「U-18プログラミングコンテスト グランプリ 誰でも簡単に使えるデジタルアバター」

第三話 完


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