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「ゲーム作りは青春だ!」第二話

第二話

【主要登場人物】
・月森 颯太:主人公。中学2年生。器用貧乏だが飛び抜けた特技はない。
・鷹野つむぎ:ライバル。中学2年生。子どもの頃からプログラミング教室に通っている。
・若狭 瑛士:颯太の幼馴染。ゲーム好きでPCにも強い。
・流星ラパン 中高生に人気のVTuber。便利なAppやIT技術を紹介している。

【1】ファーストフード店 放課後

二話のラストの翌日の放課後。
颯太と瑛士がいつも寄っているファーストフード店、ベイカーキングの店内。二人は瑛士のスマートフォンで流星ラパンの配信を見ている。

流星ラパン「今日はみんなが作ったステージを遊んでみるよー!」
流星のマークをあしらったパブロ・ザ・ウォンバットのステージを遊んでいるラパン。

瑛士「颯太くんの作ったステージがめちゃめちゃ面白かったので、サーバにアップロードしたんですよ」
動画を見ながら話す瑛士。
瑛士「で、ここで……」

流星ラパン「次のおすすめはっと……AC Spetial……かな? ACって何の略だろ?」

瑛士「アップロード直後からいいねどがどんどん着いたから注目のステージに上がったんだと思います」

落下してリフトに救われたり、敵に当たって吹っ飛ぶ途中で無敵アイテムを取ったりとなんだかんだでどんどんステージを進んでいくラパンのパブロ。

流星ラパン「あー! 死ぬ! いや死なない! あ、生き残ってる! あー! 私これ天才かもー!?」

ステージをクリアして一息つくラパン。
流星ラパン「ぷはーっ! 楽しかったー! 次々敵が出てくるし罠だらけだし、ぜんぜん油断できないんだけど、なかなか死なないんだよねー!」
流星ラパン「落ちちゃったー! と思うと下にステージが続いていて復帰できたり、罠に引っかかってピンチと思ったらいい感じに無敵アイテムがあって爽快に敵を倒せたり、適当にジャンプしただけなのにすごい数の敵を避けられたり……」
流星ラパン「作った人がわたしを楽しませようとしてくれてるのがすごく伝わってくるね!」

瑛士「さすがラパン! ポイント抑えてますねー! 僕も同意見です!」
だが、黙ってる颯太。
瑛士「颯太くん?」

そこで一気に話し出す颯太。
颯太「一昨日、超難易度ステージやった時に瑛士が横で俺のプレイ見て盛り上がってくれただろ?」
瑛士「そうですねー、チャレンジしてる様子を見るのって楽しいですからね」
颯太「その時さ、死ぬか死なないかって時に瑛士がいちばん叫ぶんだよ」
瑛士「あ、叫んでました? スミマセン」
颯太「いやぜんぜんよくて、そこが盛り上がってるのかなって」
うなずく瑛士。

颯太「だけど死んじゃったら一回そこで途切れちゃう」
颯太「だから死ぬか死なないかっていうところをずっとキープすればいいんじゃないかと思って」
颯太「一回死にステージを作ってから、死なないようにサポートする仕掛けをたくさん入れたんだよな」
瑛士「なるほど……説明されると簡単ですけど、よく1日で作り込みましたね」
颯太「夜中までかかったけどな……でもやって良かった!」
上気して語る颯太。

瑛士「ですよね! だってラパンですよラパン! 雲の上の存在に取り上げてもらえるなんて!」
颯太「いや、そうじゃない。まず瑛士がめちゃめちゃ面白いって言ってくれたからな!」
颯太「そのために作ったんだから。ずっと遠くにいる流星ラパンにまで届いたのは結果だ」
颯太「俺が楽しいって思ったことを、いろんな人に楽しいと言ってもらえる。これっていいよな!」

颯太「ところで瑛士、一回やって見せてくれよ」
瑛士「いいですよ! 作者解説つきでぜひ!」
プレイを始める瑛士。

【2】学校 昼休み

何人かと弁当を食べている颯太。瑛士と颯太は学校ではグループが別でそれぞれ友達がいる。
颯太の友達A「月森、ラパンの配信に出てきたおもしろステージってお前が作ったんだって?」
颯太「え、なんでそれを?」
颯太の友達B「若狭が言ってたぞ! 俺はハナレイ派だからラパン見てないけどな」
*ハナレイは別なVTuber
颯太「瑛士のやつ……まあ隠すことでもないけど」
友達A「お前有名人じゃん!」
からかわれてばつの悪い颯太。

そこに通りかかって入ってくる鷹野つむぎ。
つむぎ「いまの話って本当?」
友達B「俺がハナレイ派って話?」
友達A「バカ! 月森のことだろ」
颯太「本当……だけど?」
つむぎ「そ、そうなんだ? いや、なんていうか意外だなと思って」
颯太「そ、そうかな。いや、でも鷹野こそ意外。VTuberとかゲームとか興味あるんだ?」
つむぎ「あ、いや弟がいるから。一緒に見たりするんだよね」
ちょっと慌てるつむぎ。

つむぎ「あとラパンはアプリとかガジェット、テクノロジーやプログラミングの話とか幅広いから勉強になるよね?」
友達B「へー、詳しいな。俺も見てみようかな」
友達A「あ、そうか。鷹野はずっとプログラミングスクールとか通ってるもから」
つむぎ「そうそう。スクールの子とかみんな見てるよ!」

つむぎは颯太に聞く。
つむぎ「月森くんは何を目指してるの?」
颯太「何をって?」
つむぎ「例えばパブロのクリエーションチャンピオンシップに応募するとか」

颯太「えー、ぜんぜん考えてないな。あれだって初めて作ったのがたまたま取り上げられただけだし」
つむぎ「初めて!?」
颯太「そうそう。瑛士がやってた超難易度ステージをディスったらじゃあお前が作ってみろって言われて、徹夜しちゃってさ」
驚くつむぎ、友達A、B。

友達A「え、まじか! 才能あるんじゃね?」
友達B「応募してみろよ!」
颯太「いやー、でもさ。先がないだろ?」
友達B「先って?」
颯太「世界中にプレイヤーがいるんだったら俺くらいのものが作れる奴はたくさんいるし、パブロのステージ作れたからって大学行けたり就職できたりするわけじゃない」
それを聞いてテンションが下がるつむぎ。

つむぎ「月森くんって」
様子が変わったつむぎを思わず見る颯太。
つむぎ「リアリストなんだね」
つむぎ「トークの邪魔してごめんね」
若干イラッとする颯太。
颯太「ああ」

【3】ファーストフード店 放課後

颯太「月森くんってリアリストなんだね……だってさ!」
瑛士、モノマネを見て笑う。
瑛士「いやーだってそのとおりじゃないですか」

颯太「まあ、そうかもしれないけど。突然そんな言い方することないだろ?」
瑛士はゲームをやりながら聞く。
瑛士「鷹野さんは小学校の時同じクラスなんでしたっけ?」

颯太「1、2年のクラスな。でもなんかあんな感じじゃなかった」
颯太「真面目だけどまったく目立たないタイプっていうか」
瑛士「なるほど、それが今じゃクラス委員で学年トップの秀才」
瑛士「そして中学生にしてU-18プログラミングコンテストの優勝者、というわけですね」
そこで引っ掛かる颯太。

颯太「え、なにそれ初めて知った!」
瑛士「学校では言ってないみたいですけど」
ゲームを中断してスマホの画面を見せる颯太。
画面には受賞の様子が映っている。
颯太「瑛士はなんで知ってるんだ?」
またゲームを始める瑛士。
瑛士「うちの親が……」
瑛士「教育関係ですから……」
颯太「ああ……」
瑛士があまり親を良く思っていないのを知っているので颯太もそれ以上は聞かない。
颯太「先があるやつはいいなー!」

【4】颯太の部屋 夜

颯太「宿題終わった!」
机の上を片付け、ベッドに寝転がる颯太。22時少し前くらい。

颯太「ステージ作るのは楽しかったけど」
颯太「何時間もかけて作っても遊ぶのは数分なんだよな」
颯太「注目されてもほんの一瞬だし」

部屋に飾ってあるトロフィーを見る颯太。
絵画コンクール、読書感想文など。
颯太「せいぜい市で2番とか3番なんだよな」
颯太「もっとすごいやつがいっぱいいる……」
颯太はここでつむぎのことを思い出す。
颯太「コンテストで優勝ってどんだけ才能あって努力すればできるんだろ?」

そんなことをぼやいていると颯太のスマートフォンに通知が来る。
颯太「流星ラパン配信開始か」
颯太「あんまりリアタイしたことないな」

タブレットを出してラパンのチャンネルを開く颯太。
ラパン「やっほー! 流星ラパンのおしゃべりの時間がやってまいりましたー! みんな元気〜?」
ラパン「ラパンのためにパブロのステージたくさん教えてくれてありがとー! 私も作ってみたくなっちゃった!」
コメントに「ラパンのステージ遊びたい!」「流星たくさん降ってきそう」など並ぶ。
ラパン「でもね、私はステージだけじゃなくてゲームそのものを作ってみたいな! みんなはゲームがどうやって作られてるか知ってる?」

颯太「プログラムとかCGとかで?」

ラパン「ゲームはコンピューターグラフィックやサウンド、アニメーションなどのデジタルデータとそれを動かすプログラムでできてまーす!」
ラパン「ラパンと同じ! 私はコンピューターの中で生まれたAIだからね」

颯太「そんな設定だっけ……」

ラパン「ゼロから全部作るのはたいへんだけど、世の中にはなんとゲームエンジンという便利なものがあるのです!」
ラパン「ラパンもゲームエンジンを使って作られてまーす!」
コメントに並ぶ「えー、びっくり!」「ほんと?」「え、作られてるの?」「生まれたって言ってたじゃんww」などの文字。

ラパン「しかもそれだけじゃないよ! ゲームエンジンはゲーム以外のアプリ、例えば学習教材とかデジタルサイネージとか自動車のインタフェースとか建築のシミュレーションとか世の中のいろんな場所で使われているのです!」
ラパン「ゲームの技術を身につけると未来が広がるね!」

颯太「未来……!」

熱っぽいラパンに戸惑う颯太。だが確実に画面に釘付けになっている。

第二話 完


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