人生の恩人、LAで出会ったゴスペル・ミュージシャン達
誰にでも自分の人生に大きな影響を与えた恩人というものがいると思います。僕にも真っ先に思いつく人がひとりいます。
僕は2009年にバークリー音楽大学のあったボストンからロサンゼルスに引っ越して来ました。
音楽のキャリアがこの先どうなるかは分からないけれど、ロサンゼルスでギタリストとしてどれだけやっていけるのか、自分自身に挑戦してみたいと思い、ギターとアンプと身ひとつで移って来ました。
ロサンゼルスはかつてLAMA(Los Angeles Music Academy) という音楽学校に通うため一年間だけ住んでいた事がありました。1998年の事です。
約10年ぶりに戻ってきたロサンゼルスにいた知り合いはほんの2〜3人だけ。ギタリストのキャリアとしては本当にゼロからのスタートでした。
あちこちのジャムセッションに手当たり次第行っては演奏する事で少しずつ知り合いが増え、徐々に仕事に繋がるようになっていきました。
そんな中2010年のある日訪れたのが、ベーシストのアンドリュー・グーシェ(Andrew Gouche)が主催するジャムセッションでした。
日本の雑誌などでゴーチェとかゴウチェとか書かれているのを見た事がありますが、正しい発音はグーシェです。
以前の投稿でも書きましたが、アンドリューは当時チャカ・カーンのミュージック・ディレクターをしていました。日本ではバンマスと呼ばれている要するにバンドのリーダー的ポジションです。
アンドリューは長いキャリアを通じ多くのミュージシャンに多大な影響を与えてきた、ゴスペルの世界では非常に名の知れたベーシストです。
ジャムセッションで演奏した僕をアンドリューはすぐに気に入ってくれて、それからも何回か彼のジャムセッションに足を運んだ後、ホストバンドのメンバーとして弾かないか、と誘われました。
最初の1時間くらいはホストバンドが演奏して、その後参加したいミュージシャンがいたら交代してジャムセッションをするというのが主な流れです。
毎週行われる凄腕ミュージシャン達との共演は非常に刺激的でした。
アンドリュー以外のホストバンドのメンバーもそれぞれがスティービー・ワンダー、ビヨンセ、アース・ウィンド&ファイアなどのアーティストと仕事をしてきた一流ミュージシャン達です。そして全員が日曜日は教会で演奏するゴスペルミュージシャンです。
リハも何の打ち合わせも無く、その場でどんどん進んで行くジャムセッション。時には僕の知らない曲が始まり、その場で耳で覚えるという事もありました。
しかも彼らは原曲には無いコード進行を加えたり即興でどんどんアレンジを変えたりしていくので、常に何が起きるかわからないワクワクする様な演奏が繰り広げられます。
そんなジャムセッションを毎週日曜日の夜にやる事が何年か続きました。それはもう鍛えられました。
アンドリューのジャムセッションは当時ロサンゼルスではかなり知られていて、たくさんのミュージシャンやシンガーが訪れました。そのホストバンドのギタリストとして多くの人に認識してもらえた事もその後色々な仕事に繋がったという意味ですごくプラスになりました。
アンドリューはそのジャムセッションだけでなく、チャカ・カーンのツアーやそれ以外のライブやレコーディングでも何度も僕を起用してくれました。
人種も年齢も関係なく今までどれだけのキャリアを積んできたかも関係ない、ただ僕がその場で出す音だけを信頼してたくさんのチャンスを与えてくれたアンドリュー。感謝と尊敬の念しかありません。
人としてもミュージシャンとしても非常に成長させてもらいました。
彼との出会いなしに今の僕は間違いなく居なかったと言えます。アンドリューは僕の人生の恩人です。
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