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本記事は、医療用医薬品利益供与・贈収賄規制ハンドブック「第二章 医療関係者等への利益供与・贈収賄規制の具体的内容」のうち、2️⃣飲食の提供に関する規制の内容をまとめたものです。

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(1)提供が認められる飲食

   公正競争規約において,製薬企業がその業務の一環として医療関係者等への提供を認められている飲食は,大きく分けて次の4つに分類される。

❶ 医薬情報活動に伴う飲食の提供(5千円以内)
❷ 製品説明会その他の会合に伴う茶菓・弁当の提供(3千円以内)
❸ 自社医薬品の講演会等に伴う懇親行事における飲食の提供(2万円以内)
❹ 会合開催の慰労等における飲食の提供(2万円以内)

   このように,それぞれのケースにおいて一人当たりの設定金額が決められており,設定金額を超えない限りは原則として公正競争規約に違反しない。ただし,一人当たりの設定金額を下回る場合であっても,飲食物や娯楽等の提供それ自体を目的としている場合には,「きょう応」に該当し,公正競争規約に違反する。

 また,関連法規や医療機関等の院内規定などで,この種の飲食の提供が制限されていないかどうかについても留意が必要である。

1)医薬情報活動に伴う飲食の提供

   MRによる医療関係者等への医薬品に関する情報提供(医薬情報活動)に伴う飲食物の提供であり,当該業務を行う場所や時間を,医療機関内において確保できない場合に限り実施できる。相手方の人数も3人程度で,一人当たりの金額は5千円(消費税を除く)を超えない範囲とする(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」)。また,酒や娯楽を主体とする店での飲食物の提供は認められない(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」解説)。

 なお,医療関係者等の学会等または自社医薬品の講演会等の出席の機会を利用した飲食の提供(医療関係者等に飲食を提供することを目的に,学会等の開催地に出向いて行くことや,医療関係者等と示し合わせて行くこと)は,5千円以内であっても認められない(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」解説)。

2)製品説明会その他の会合に伴う茶菓・弁当の提供

   MRが医療関係者等を相手に製品説明会を開く場合は,開催時間が食事時間帯であれば医療関係者等一人当たり3千円(消費税を除く)を超えない範囲で茶菓・弁当を提供することが認められている(運用基準「Ⅲ-2 医学・薬学的情報に関する基準」)。

 また,その他の会合においても,開催時間が食事時間帯にかかる場合など,合理的な理由があれば懇親行事とは別に医療関係者等一人当たり3千円(消費税を除く)を超えない範囲で茶菓・弁当を提供することは認められる(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」)。

 ただし,いずれにおいても,茶菓・弁当の提供自体が目的であると認められる場合は「きょう応」に該当し,公正競争規約違反となる(運用基準「Ⅲ-2 医学・薬学的情報に関する基準」解説)。

3)自社医薬品の講演会等に伴う懇親行事における飲食の提供

 自社医薬品に関する講演会などの会合の終了後に,参加者の懇親のために「ささやかな懇親行事」を行い,飲食を提供することは認められている。

 「ささやかな懇親行事」とは,講演会などの終了後に引き続いて,当該会合と同じ会場で行われる立食パーティーのことであり,会合場所とは別の飲食店に参加者を招き,飲食を提供することは認められていない。懇親行事において提供する飲食は,一人当たり2万円(消費税を除く)を超えてはならない。なお,立食形式で行えない場合は,半額の1万円程度が妥当とされている(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

4)会合開催の慰労等における飲食の提供

   調査・研究に係る会合や講演会等の世話人会,アドバイザリー会議,座談会の会合等への参加を依頼した医療関係者等に対して,慰労を目的として食事を提供することは,公正競争規約において認められている(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」)。

 ただし,慰労を目的とした食事であっても,一人当たり2万円(消費税を除く)を超える場合は「きょう応」に該当し,公正競争規約違反となる。また,2万円を下回る場合でも,医療機関等の院内規程により,この種の飲食の提供が制限されているか否かについて留意が必要である。 このような慰労を目的とした食事の提供は,いずれも講演会などの会合を開催した「当日に限る」ものである。また,いずれの飲食の提供行為においても,酒や娯楽の提供が主体の店で行われる場合は,飲食物や娯楽の提供それ自体が主目的となるため「きょう応」に該当し,公正競争規約違反となる(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」解説)。

(2)提供が認められない飲食

   従来,社会的儀礼を名目として広範に行われていたいわゆる「二次会」や「娯楽」の提供は,その必然性や合理性に乏しく,むしろ医薬品の適正使用を妨げかねないため「きょう応」に該当し,公正競争規約違反となる(運用基準「Ⅰ-1 景品類提供の原則に関する基準」解説)。「二次会」とは,飲食の提供後,改めて場所や提供内容を変えて飲食を提供することであり(提供する飲食の内容,金額の多寡,提供場所が同一ホテルの中にあるか否かを問わない),「娯楽」とは,カラオケ,ゴルフ,釣り,映画,観劇,スポーツ,旅行その他の催し物への招待や優待のことである(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」解説)。

 なお,医療関係者等と会食し,その費用を「割り勘」で支払う場合は公正競争規約違反とはならないが,外部から誤解を受けないためにも,割り勘であったことを証明できるレシートなどの証憑書類を入手しておく必要がある。また,公正競争規約に則った飲食を提供した後に「二次会」が行われ,公正競争規約で定める飲食の価格の上限を超える部分について「割り勘」で支払った場合,製薬企業としては新たな費用負担はないものの,当該「二次会」は公正競争規約に則った飲食の提供と一連の行為とみなされるため,たとえ「割り勘」であっても公正競争規約違反となるおそれがある(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」解説)。

(3)国家公務員の場合の特則

   国家公務員は,次の場合を除き,原則として利害関係者の負担で飲食をすることはできない(国家公務員倫理規程第3条第2項及び第4条)。

❶ 職務として出席した会議その他の会合において,利害関係者から茶菓の提供を受ける場合。
❷ 多数の者が出席する立食パーティーにおいて,利害関係者から飲食物の提供を受ける場合。
❸ 職務として出席した会議において,利害関係者から簡素な飲食物の提供を受ける場合。
❹ 私的な関係がある利害関係者との飲食(なお,利害関係の状況,私的な関係の経緯,行為の態様等により問題がない場合に限る)。

e-GOV法令検索 国家公務員倫理規定
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412CO0000000101

   このように,国家公務員は自分で費用を負担するか,または利害関係者以外の第三者が費用を負担するのであれば,利害関係者と共に飲食をすることができる。ただし,自分の飲食に要する費用が1万円を超える場合は,事前に倫理監督官への届出が必要とされている(やむを得ない事情により,事前に届出ができなかった場合は,事後速やかに届出を行う)。

 なお,多数の者が出席する立食パーティーにおいて利害関係者と共に飲食をする場合,または私的な関係がある利害関係者と共に飲食をする場合で,自分または私的な関係のある第三者が費用を負担する場合には,原則として届出は必要ない(国家公務員倫理規程第8条)。


■(参考資料)公取協TOP 医薬品業等告示および公正競争規約、同施行規則、同運用基準
http://www.iyakuhin-koutorikyo.org/index.php?action_download=true&kiji_type=1&file_type=2&file_id=2355

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