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本記事は、医療用医薬品利益供与・贈収賄規制ハンドブック「第二章 医療関係者等への利益供与・贈収賄規制の具体的内容」のうち、1️⃣会合開催に関する規制の内容をまとめたものです。

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(1)自社医薬品の講演会等

1)基本的な考え方

① 自社医薬品の講演会等の内容
 公正競争規約第5条に定める「自社医薬品の講演会等」とは,「説明会,研究会等の名称のいかんを問わず,複数の医療機関等を対象として,自社医薬品に関する説明を行うことを目的とする会合をいう」とされている(公正競争規約施行規則第4条第1号)。

「自社医薬品に関する説明を行うことを目的とする会合」とは,次の会合をいう(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」)。

❶ 自社医薬品の有効性,安全性及び品質に関するもののほか,当該製品の薬物療法に関するもの及び自社医薬品の適正使用に必要と考えられる疾病の診断,治療,予防等に関する事項をテーマとして行う会合。なお,自社医薬品には,製品化を計画中のもの(製造販売承認申請又は治験届出をしたもの)も含まれるが,薬機法*1第68条(承認前の医薬品等の広告の禁止)に注意を要する。
❷ 自社医薬品に関連する事項についての説明と自社医薬品に関連しないテーマを併せて行う会合。なお,以下の要件を満たす必要がある。
 ・自社医薬品関連テーマが会合の主要テーマの一つであること。
 ・非関連テーマも製薬企業としてふさわしいものであること。
 ・関連テーマ及び非関連テーマの聴講者は同一であること。

*1 医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律

 なお,自社医薬品関連テーマが「主要テーマの一つ」に当たるかは,時間の長短だけでなく,その主要テーマのみの会合であっても,多数の医療従事者等に出席してもらえるかどうかが判断のポイントになる。また,自社医薬品関連のビデオのみを映写するのみでは「主要なテーマの一つ」とはいえず,口頭による説明が不可欠である(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

② 自社医薬品の講演会等の形式
 次の事項については,「複数の医療機関等を対象として,自社医薬品に関する説明を行うことを目的とする会合」に当たらず,「自社医薬品の講演会等」に該当しない(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」)。

❶ MR等が通常の医薬情報提供活動として個別の医療機関等の医療関係者等を対象に行う製品説明会。
❷ 製薬企業が製品開発等に関する研究のために行う会合や,市販後医療用医薬品に関する研究委託の実施に伴って行われる会合。
❸ 自社医薬品に関連しない医学・薬学的な研究会・講演会や医療経営等をテーマとする会合。

「自社医薬品に関する説明を行うことを目的とする会合」とは,講師,演者などの役割を担う者に加え,聴講者として,複数の医療機関等に所属する医療関係者等が相当数参加する会合のことをいう。また,会合の際の説明方法としては,すべての参加者が集まる会場において,講師や演者が口頭で行うことが基本となり,聴講者がいない会合や,演者と聴講者の区別ができないディスカッション形式の会合は「自社医薬品の講演会等」には該当しない(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

 また,インターネットのウェブサイトを通じた「web講演会」であっても,演者が口頭で説明し,ライブ形式ですべての参加者と双方向でのやり取りができ,受信する側に複数の医療機関に属する相当数の医療関係者等が参加しているのであれば,「自社医薬品の講演会等」に該当する。一方,受信する側の参加者が単一の医療機関(同一の医療法人などに属する場合や,医薬品の購入において共同管理されている場合を含む)に所属する場合は,参加者が相当数であっても,「複数の医療機関」の要件を満たさず,「自社医薬品の講演会等」には該当しない。なお,いずれの場合も製品説明会に準じて聴講者に茶菓や弁当などを提供することは可能である(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

2)自社医薬品の講演会等の主催と共催

① 主催の要件
 製薬企業が主催する会合とは,製薬企業が会合を自ら企画,実施し,案内状及びプログラム等には主催者として企業名を記載して行う場合をいう。したがって,医療関係者等または団体が主催する会合は含まない(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。 

   また,製薬企業が会合を企画し,それにふさわしい世話人を選定し,その会合の運営について製薬企業と世話人双方が相談のうえ決定するような場合でも,製薬企業の主催に当たる。この場合,その案内状及びプログラム等には主催者としての企業名を記載する必要がある。なお,「世話人○○○」,「後援○○医師会」等,世話人名,協力団体名も併せて記載することは差し支えない(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

② 共催の要件
 自社医薬品の講演会等は,本来は自社単独で開催するものであるが,自社医薬品に関しての学術的な説明を行うという目的が効果的に達成できるのであれば,より広く多くの医療関係者等の参加が得られるよう,医療機関等と共催の形で会合を開催することは差し支えない。ただし,医療機関等が独自に計画し,製薬企業は費用の全部や一部を負担しただけという会合の場合は,共催会合とはいえない。また,医療機関等との共催に名を借りた費用の肩代わり的な会合について,製薬企業が開催費用の名目で金銭を負担することは,公正競争規約違反となる(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

 自社医薬品の講演会等の共催にあたっては,次の要件を満たす必要がある(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」)。

❶ 共催相手が医療関係者等個人及び団体性が認められない研究会組織等でないこと。
❷ 会合の企画は,製薬企業と共催相手が事前に協議し,共同で立案されていること。
❸ 共催者間であらかじめ会合におけるテーマ,役割,費用等について分担の取決めが明確にされていること。
❹ 案内状,プログラム等に会合の趣旨,テーマが記載され,共同の開催者名が連名で記されていること。
❺ 製薬企業は,会合の企画書を作成し,会合終了後には参加者名簿も保管されるようになっていること。

   自社医薬品に関連する共催会合として,ランチョンセミナー等の学会等開催時に募集される共催セミナー等(学会等共催セミナー)の開催も可能であるが,学会等が開催する学術集会等は,その会員等が自らの研究の成果や最新の知見等の情報を共有することを目的として本来自主単独で開催するものである。したがって,学会等開催費用の総額の大部分が,このような学会等共催セミナーに支払われる費用で賄われている場合や,学会等共催セミナーが学会等のほとんどのセクションを占める場合,学会等共催セミナーへの応募はふさわしくない(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

3)自社医薬品の講演会等の開催地及び開催会場

 自社医薬品の講演会等においては,開催地,会場その他開催方法について,招待旅行またはきょう応と誤解されないよう留意しなければならない(公正競争規約施行規則第4条第2号)。 

 「開催地,会場その他開催方法」は,会合の目的に照らして適切な場所及び開催方法でなければならない。特に,会合場所が観光地,観光施設等であったり,会合のスケジュールが観光主体となるなど,自社医薬品に関する説明を意図した講演会等の会合の目的を逸脱してはならない(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」)。

 また,開催地は参加者の出席しやすい交通の便の良いところがふさわしい。参加者の大半が国内の医療関係者等という場合,海外で開催することは妥当とはいえない。

 会場は,一般的に会議場として認められる場所で行うべきであり,観光施設,観光船,テーマパーク,割烹などで開催すると,きょう応を目的とした会合とみなされるおそれがある(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

4)自社医薬品の講演会等における会合費用の負担

① 会場使用料等
 共催の自社医薬品の講演会等において,製薬企業が会合の共同開催者として共催者間であらかじめ取決めた範囲内で,開催費用として,会場の借用料や会合の資料代,文房具等の費用を負担することは不当な利益供与には当たらない(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

 また,共催会合において,自社医薬品関連テーマと非関連テーマを併せて行う場合でも,この共催会合の開催費用である限り,非関連テーマに関わる開催費用を負担することもできる(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

② 交通費・宿泊費
 自社医薬品の講演会等において,医療機関等の出席者に対してこの会合への出席のために必要な費用(交通費・宿泊費)を提供することは差し支えない(公正競争規約施行規則第4条第3号)。ただし,共催会合の旅費については,共催の相手方がこれを負担しない場合に限って提供が認められている(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

 「出席のために必要な費用(交通費,宿泊費)」とは,製薬企業が参加を依頼した医療関係者等の旅費の実費相当分をいい,次の範囲内において提供することができる(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」)。

❶ 国内で開催する場合
  製薬企業が,国内で開催する講演会等へ参加を依頼した医療関係者等には,旅費の実費相当分を支払うことができる。
❷ 海外で開催する場合
  海外で開催する場合は,座長,研究発表・講演のほか,参加者(聴講者)全員に説明や情報提供を行う医療関係者等に限って旅費を支払うことができる。

   製薬企業が開催する講演会等の会合であっても,サテライトシンポジウム(学会の期間中またはその前後に,学会会場またはその周辺において,学会の出席者を対象として開催する講演会,研究会等)においては,前項(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」の2.の(3))の規定に関わらず,その参加者に対する旅費の支払いは次の基準による(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」)。

❶ 座長,研究発表・講演のほか,参加者(聴講者)全員に説明や情報提供を行う医療関係者等に対しては,サテライトシンポジウムに関わる旅費(交通費,宿泊費)を支払うことができる。
❷ サテライトシンポジウムに参加を依頼した医療関係者等であって,❶以外の者に対しては,サテライトシンポジウム出席のための必要最小限の,会場間の交通費及び学会期間中を除く宿泊費のみを支払うことができる。
❸ 当該サテライトシンポジウムが海外で開催される場合は,旅費の支払いについては,開催国のルールにも従うものとする。

③ 講師費用
 自社医薬品の講演会等における講演等を依頼した講師等に対して報酬・費用を支払うことは,差し支えない(公正競争規約施行規則第4条第3号)。ただし,次の要件を満たす必要がある(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

❶ 講演の依頼が名目的でないこと。
❷ プログラム等に役割担当者名が記載されていること。
❸ 依頼したことが取引誘引になっていないこと。
❹ 講演料の額が社会通念上妥当であること。
❺ 委受託契約書又は依頼書,応諾書を交わすこと(書面で依頼すること)。
❻ 所属医療機関等における出張に関する所要の手続きを確実に行ってもらうこと。

 「講演等を依頼した講師等」とは,座長,研究発表・講演のほか,参加者(聴講者)全員に説明や情報提供を行う者をいう。ただ単に出席して質問をした,あるいは共同研究者として出席しただけでは一般参加者とみなされ,役割を担う者には当たらないので報酬を支払うことはできない(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」)。

 また,運用基準でいう講演会等の会合の目的は,参加者に対して自社医薬品に関する説明をすることにあるので,全ての参加者の集まる会場において,講師,演者等が口頭で説明することが基本となる。なお,ポスターセッションの説明者が「研究発表・講演のほか,参加者(聴講者)全員に説明や情報提供を行う者」に該当するか否かは,次の要件を全て満たしているかで判断する(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」)。

❶ ポスターセッションによる説明を企画する場合は,その企画を行う合理的な理由があること。
❷ ポスターセッションが講演会等全体の中の企画であり,講演会等全体のプログラムに,ポスターセッション発表者名が記載されていること。
❸ 事前に発表内容がアブストラクト(要旨)として作成されていること。
❹ 講演会等の参加者全員がポスターセッションに参加できるよう時間的配慮がされていること。また,単にポスターを掲示するだけでなく,ポスターセッション会場で発表者と参加者が十分な質疑応答が行われるための時間が設定されていること。
❺ 海外で開催する講演会等において,ポスターセッションを行う場合は,その発表者は参加国の中から応分に選任されていること。
❻ 役割を依頼する医療関係者等に対して,役割の内容を文書で依頼するとともに応諾書を受領すること。また,医療関係者が勤務する医療機関等の了承も得ること。

   なお,製薬企業が共催相手の所属員に講師等の役割を依頼した場合の報酬の支払いについては,相手方が医療機関等である場合は,報酬を支払うことはできないが,相手方が団体である場合は,報酬を支払うことができる(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」)。 

   会合が共催で,講師が共催相手の医療機関に所属する医療関係者等の場合は,その講師役も主催者の一人であるため報酬の支払いはできない。一方,共催相手が団体の場合,講師がその団体の所属員であっても,団体との雇用関係がなければ報酬の支払いはできる(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

5)自社医薬品の講演会等における飲食の提供

① 基本的な考え方
 「会合に付随する華美,過大にわたらない接待は,差し支えない」とされている(公正競争規約施行規則第4条第4号)。「会合に付随する華美,過大にわたらない接待」とは,講演会などの会合で提供される「茶菓・弁当その他これに類する飲食物提供」や会合に付随する「ささやかな懇親行事」のことである。ただし,その「接待の内容や程度が過大である場合」や「会合を円滑に実施するという目的を逸脱し,接待が会合の主目的とみなされるような場合」は,「華美,過大な接待」となるので提供できない(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」)。

② 茶菓・弁当の提供
 自社医薬品の講演会等において食事を提供する場合は,一人当たり3千円を超えない茶菓・弁当にする(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

③ 懇親行事
 「ささやかな懇親行事」とは,講演会などの終了後に引き続いて,その会合と同じ会場で行われる立食パーティーのことを指し,会合の参加者を別の飲食店に招き,飲食を提供することは含まれていない。また,参加者が少ないことなどの理由で立食形式ではなく,着席した形で行う場合は,講演会を名目にした「きょう応」との誤解を避けるために,一人当たりの飲食費は通常の立食パーティーの半額程度が妥当とされている(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

 懇親行事において提供する飲食は,一人当たり2万円(消費税を除く)を超えてはならない。この際の一人当たりの飲食代は「飲食費÷参加者数」の計算式から導き出されるが,この計算式の「飲食費」のうちには,懇親行事の会場費,料理・飲料代,垂れ幕代,花代,サービス料などが含まれ,「出席者数」には医療関係者と製薬企業側の関係者がすべて含まれる(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

④ 慰労会
 講演会や研修会の講師などの「役割者」に対して,慰労などを目的に飲食を提供することは,取引を不当に誘引する行為に該当せず,公正競争規約に違反しない。
 ここでいう「役割者」とは,講演会などの会合において,座長や講師などの役割を依頼され,自社医薬品などの会合テーマに関する説明や,それに関連する情報を,参加者(聴講者)全員に提供する者(講演会などのプログラムに「役割者」としての記載がある者)のことである。会合に出席して質問をしただけの人や,共同研究者として出席しただけの人は一般の参加者と同じであり,「役割者」には当たらない(運用基準「Ⅲ-5 自社医薬品の講演会等に関する基準」解説)。

(2)自社医薬品に関連しない講演会等

   製薬企業が「自社医薬品」に関連しない講演会等の会合を開く場合は,会合費用以外の支出はできない。会合費用とは「会場借用料」,「講師などに対する報酬と旅費」,「資料代」,「会合に必要な文房具に対する費用」のことであり,「一般参加者の旅費」,「贈呈品」,「懇親行事のための費用」は提供できない(運用基準「Ⅰ-1 景品類提供の原則に関する基準」及び同解説)。

 製薬企業が自社医薬品に関連しない講演会等を開催するのは,医学や薬学,医療に関連する情報を医療関係者等に提供することが目的であり,その情報自体の提供が医療関係者等への利益提供となる。そのため,この会合に付随して,製薬企業が茶菓や弁当などの飲食物やささやかな懇親行事などの会合費用以外の利益供与を行うと,公正競争規約に違反するおそれがある。

 また,医療機関等が自ら企画し,開催する研修会や研究会などの開催費用について,製薬企業が名目的に主催者や共催者となり負担することは,医療機関等に対する費用の肩代わりとなり,公正競争規約に違反するおそれがある(運用基準「Ⅰ-1 景品類提供の原則に関する基準」解説)。 

   自社医薬品に関連しない講演会等において,製薬企業が共催相手の医療機関等に所属する医療関係者に講師等の役割を依頼する場合,当該医療関係者も主催者の一員であり,医療機関等の職務の一環として参加し役割を果たすことになるため,報酬を支払うことはできない。一方,共催相手が団体であって,当該団体に所属する医療関係者に講師等の役割を依頼する場合,当該医療関係者は当該団体の構成員であっても当該団体との雇用関係にないため,報酬を支払うことができる。

 自社医薬品に関連しない講演会等の実施に際して,講師等に対し,相応の報酬・実費弁償としての旅費等を支払う場合には,次の点に留意する。なお,ただ単に出席して質問をしただけでは,講師等の役割を担う者には当たらない(運用基準「Ⅰ-1 景品類提供の原則に関する基準」解説)。

❶ 講演の依頼が名目的でないこと。
❷ 案内状又はプログラム等に役割担当者名が記載されていること。
❸ 依頼したことが取引誘引になっていないこと。
❹ 講演料の額が社会通念上妥当であること。
❺ 委受託契約書又は依頼書,応諾書を交わすこと(書面で依頼すること)。

(3)製品説明会

1)基本的な考え方

   製品説明会とは,MRが昼休みやカンファレンスなど,複数の医療関係者等が一堂に会する時間帯を使って,自社医薬品に関する説明を口頭で行うものである(運用基準「Ⅲ-2 医学・薬学的情報に関する基準」解説)。製品説明会は,主目的である製品説明の趣旨が損なわれないような場所で開催する必要があり,通常は院内会合室,医局等で行う。例外的に院外で行う場合は,公共の会合室やホテルの会合室等,一般的に会議場と認められる会場で開催する。料亭,割烹等はふさわしくない(運用基準「Ⅲ-2 医学・薬学的情報に関する基準」解説)。

2)製品説明会における茶菓・弁当の提供

   製品説明会の際に合理的な理由がある場合は,参加者一人当たり3千円(消費税を除く)を超えない範囲で茶菓や弁当などを提供することができる(運用基準「Ⅲ-2 医学・薬学的情報に関する基準」)。また,娯楽,きょう応と誤解されないため,食事時間帯以外での開催においては,茶菓程度の提供にとどめる(運用基準「Ⅲ-2 医学・薬学的情報に関する基準」解説)。

(4)アドバイザリー会議

1)基本的な考え方

   アドバイザリー会議とは,製薬企業が医療関係者等に参加を求め,自社医薬品等に関する意見を交換したり,情報や助言を集めたりするための会合である(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」)。

 アドバイザリー会議の参加者に対して,相応の報酬や交通費などの費用を支払うことは公正競争規約に違反しないが,会合開催に当たっては,それらの支出が不当な利益供与にならないよう,次の事項に留意する必要がある(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」解説)。

❶ 適切な場所及び会合の目的に照らして適切な開催方法であること。
❷ 会合の成果物,会合企画書,業務の委受託契約書,招聘状,議事録,報酬の領収書等の証憑が保管されていること。
❸ 会合企画書に,会合の目的,正当な必要性,目的に合致した参加者の選定基準,参加者選定の要件を充たす責任者,目的を達成するために妥当と判断される参加者の必要数等が記載されていること。
❹ 各参加者との業務委託契約書に,業務の目的,内容,報酬等が記載されていること。
❺ 議事録に,会合の参加者ごとの発言要旨が記載されていること。

2)アドバイザリー会議における飲食の提供

   アドバイザリー会議に出席した医療関係者等に慰労の意味で食事を提供することは,一般にも行われているものであることから提供が可能である。しかし,その費用が一人当たり2万円(消費税を除く)を超える金額となる場合は「きょう応」に該当し,公正競争規約に違反する(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」解説)。また,2万円を下回る場合であっても,医療機関等の院内規程で飲食の提供が制限されていないか,留意が必要である。

(5)社内研修会

1)基本的な考え方

    社内研修会とは,製薬企業がMRなどの社員の知識や技能の向上を目的として開催する社内の研修会である(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」)。

 社内研修会の目的が,医療関係者等に対する金銭や飲食の提供であるとの誤解を受けないよう,社内研修会は製薬企業による組織的な企画であり,その実質を備えていることが必要である。通常は製薬企業の事業所,講師等である医療関係者等の所属する医療機関等,それ以外の場合は,公共の会議室やホテルの会議室等,一般的に会議場と認められる会場で開催する(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」解説)。

 合理的な理由があれば,複数の医療関係者等に講師を依頼することも可能だが,研修目的のために必要な最小限の人数や頻度にとどめるのが原則である(運用基準「Ⅱ規約第4条の運用基準」解説)。なお,社内研修会に講師役などを依頼した医療関係者等に対して,相応の報酬や交通費などの費用を支払うことは公正競争規約に違反しない(公正競争規約施行規則第4条第3項)。

2)社内研修会における飲食の提供

   社内研修会への出席を依頼した医療関係者等に,慰労の意味で食事を提供することは,講演会やアドバイザリー会議と同様に可能である。しかし,その費用が一人当たり2万円(消費税を除く)を超える金額となる場合は「きょう応」に該当し,公正競争規約違反となる(運用基準「Ⅰ-1 景品類提供の原則に関する基準」解説)。また,2万円を下回る場合であっても,医療機関等の院内規程で飲食の提供が制限されていないか,留意が必要である。

(6)調査・研究に関する会合

1)基本的な考え方

 調査・研究に関する会合とは,製薬企業が,調査・研究の計画及び進捗確認等,実施に関わる検討を行うために開催する会合である(運用基準「Ⅲ-4 調査・研究委託に関する基準」)。 会合が次の条件を満たしている限りにおいて,その開催費用,茶菓や弁当などの提供,会合に付随する懇親会のための費用の負担は,不当な利益供与には該当しない(運用基準「Ⅲ-4 調査・研究委託に関する基準」)。

❶ 企画書を作成し,参加者名簿を保管すること。
❷ 研究会等会合は,それにふさわしい場所で行うこと。
❸ 会合に付随する懇親会等は,会合の目的に照らして常識的な範囲に止めること。
❹ 調査・研究に伴う会合が予定されている場合には,契約締結の際,契約の対象とする業務の範囲(例えば,会合開催も含めて契約したか)を明確にしておくこと。
❺ 会合が,他の目的に流用されないこと。
❻ 学会の開催時を利用して学会会場の近辺で会合を開催する場合は,学会参加者の費用の肩代わりになるような名目的な会合でないこと。

2)調査・研究に関する会合における飲食の提供

   会合が食事の時間にかかる場合,効率的に会合を進めるため,会合で食事を提供したり,会合後に食事を提供したりすることは不当な利益供与には当たらない。ただし,提供した飲食が一人当たり2万円(消費税を除く)を超える金額となる場合は「きょう応」に該当し,公正競争規約に違反することになる(運用基準「Ⅰ-1 景品類提供の原則に関する基準」)。また,2万円を下回る場合であっても,医療機関等の院内規程などで当該飲食の提供が制限されているか否かについて,留意が必要である。

(7)その他の会合

   その他の会合として,①講演会等の世話人会(製薬企業が開催する講演会などの企画や運営のために,医療関係者等から提案や助言を求めるための会合),②座談会(製薬企業が自社医薬品に関する説明用の資料などを作成するために,医療関係者等に参加を求めて開催する会合)などがある(運用基準「Ⅱ 規約第4条の運用基準」)。

 これらの会合開催に関する費用負担及び飲食の提供が医療関係者等への不当な利益供与に当たらないための留意事項は,先述したアドバイザリー会議と同様である。


■(参考資料)公取協TOP 医薬品業等告示および公正競争規約、同施行規則、同運用基準
http://www.iyakuhin-koutorikyo.org/index.php?action_download=true&kiji_type=1&file_type=2&file_id=2355

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