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なぜ原宿にホテルがないのか

都内で旅館業や住宅宿泊事業をしているYOHEIです。今日は「なぜ原宿にホテルがないのか」という表題の疑問に答えます。厳密には「なぜホテルがないのか、なぜ民泊が少ないのか」にそれぞれ答える記事になります。

最初に書いておきたいのですが、結論は身も蓋もない法律的な話で、深いマーケットの考察を通して奥深い洞察を記述するようなものではありません!

原宿は、若者文化やファッションのトレンド発信の地として知られており、明治神宮や代々木公園への最寄り駅であることからも多くのインバウンド旅行客が訪れる観光スポットの一つです。一方で、原宿には意外なことにホテルが存在しないという事実があります。渋谷と新宿の中間に位置し、そのアクセサビリティから宿泊需要があってよいはずのこのロケーションに、なぜ宿泊施設が立地しないのか、これは単なる偶然なのでしょうか、それとも何か特別な理由があるのでしょうか?
実際にgoogle mapで検索して他の地域と比較してみましょう。

Google mapで検索してみる


渋谷駅周辺(ホテル)

新宿駅周辺(ホテル)

ホテルは一目瞭然ですね。

渋谷駅周辺(民泊)

新宿駅周辺(民泊)

民泊のgoogle map検索はまだAirBNBやbooking.comに掲載されているものが検索結果に抽出されてこない関係で一目ではわかりませんが、map上の赤い点も民泊施設のため、ある程度数があることはわかっていただけるかとおもます。

さてそれでは原宿を見てみましょう。

原宿周辺(ホテル)

原宿周辺(民泊)

一目でわかったかと思いますが、原宿駅周辺にはホテルも民泊施設もほとんどありません。なぜでしょうか。

なぜホテルがないのか

原宿駅周辺にホテルが存在しない背景には、その地域の特性である「文教地区」ゆえにホテル=旅館業の営業許可を取ることができないからです。文教地区とは、教育や文化の発展を重視した土地利用政策が取られている地域のことを指します。

文教地区は東京都文教地区建築条例の2条でホテルの建築・ホテルへの用と変更が規制されています。

(第一種文教地区内の建築制限)
第三条 第一種文教地区内においては、法第四十八条の制限によるほか、別表一に掲げる用途に供するために建築物を建築し、又は用途を変更してはならない。ただし、知事が文教上必要と認め又は文教上の目的を害するおそれがないと認めて許可した場合は、この限りでない。
(昭四六条例一七・一部改正)
(第二種文教地区内の建築制限)
第四条 第二種文教地区内においては、法第四十八条の制限によるほか、別表二に掲げる用途に供するために建築物を建築し、又は用途を変更してはならない。ただし、知事が文教上必要と認め又は文教上の目的を害するおそれがないと認めて許可した場合は、この限りでない。

東京都文教地区建築条例

別表一(第三条関係)
(昭四四条例一三四・昭六〇条例一七・平八条例三九・平一一条例四二・平二七条例一一九・平二八条例三五・一部改正)
一 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第一項第一号から第三号まで及び同条第六項各号のいずれかに該当する営業に係るもの
二 ホテル又は旅館(前号に該当するものを除く。)
三 劇場、映画館、演芸場、観覧場又はナイトクラブその他客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業を営む施設(第一号に該当するものを除く。)
四 マーケット(市場を除く。)
五 遊技場又は遊戯場(学校附属のものを除く。)
六 旧工場公害防止条例(昭和二十四年東京都条例第七十二号)別表に掲げられていた作業を常時行う工場
七 勝馬投票券発売所、場外車券売場及び勝舟投票券発売所
八 前各号の建築物に類するもので、環境を害し、又は風俗を乱すおそれがあると認めて知事が指定するもの

東京都文教地区建築条例

実際に、原宿駅周辺の都市計画図で確認してみましょう。

青の斜線が引かれている範囲が文教地区になります。この地域では、条例上、ホテルの営業ができないのです。

なぜ民泊がないのか

思った方もいるかもしれませんが、東京都文教地区建築条例では、ホテル・旅館が制限されているだけで、そこに民泊や住宅宿泊事業(法律上では民泊を住宅宿泊事業として記述している)という文言はありません。つまり、東京都文教地区建築条例上は特に民泊営業は文教地区だからといって制限されていません。

しかし、それにしても少ない….
なぜでしょうか。

それは、また上記の法令とは別に「渋谷区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例」で文教地区内での民泊が制限されていることによります。

渋谷区では、住居専用地域や文教地区で民泊をするときは、以下の定められた日程は営業できません。

(1)4月5日から7月20日まで
(2)8月29日から10月の第2月曜日の前の週の水曜日まで
(3)10月の第2月曜日の前の週の土曜日から12月25日まで
(4)1月7日から3月25日まで

渋谷区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例

見てわかるように、結局1年間のうちほとんどが営業不可になっています。これでは民泊を開業してもなかなか経済合理性が伴わないのでビジネスとして開業する人はほとんどいないでしょう。
これらの地域でも、一定の手続きを済ませ、体制を整えれば上記の規制は取り払われ年間で他地域と同様に180日の営業が可能になりますが、通常と比べて行政手続きや体制の整備への負担度合いが高く、参入する敷居となっています。そのため、なかなか民泊も数が少ない現状となっているわけです。

一方で、手続きや体制整備の負担が大きいとそれが参入障壁となり、供給も絞られるので一度クリアできると長期間相応の利益もついてくるという見方もできます。

私の方でも、今後の民泊物件の開拓エリアの一つとして積極的に動いていきたいと思っています。

次の記事で、用途地域によって営業制限されている渋谷区の上乗せ条例と、その制限を取っ払って制限なく180日営業するための条例や規則を確認してみたいと思います。



一軒家ホテル合同会社では、民泊・旅館業の開業支援・自主運営・運営代行事業をしています。所有不動産を宿泊用途許可で貸し出すことや運用代行の依頼をご検討されている方は、お気軽にお声掛けください!

mail: y.nakajima@ikkenyahotel.com
TEL : 09069336319

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