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02 死ぬこと以外かすり傷

右大腿骨内顆骨挫傷
右脛骨近位骨挫傷
右膝内側側副靱帯損傷

チームドクターの寛田先生から伝えられた症状は、大学の解剖学の授業で聞き覚えのある単語が並んでいたのですが、理解するのには少し時間がかかりました。

ただ「断裂」という単語が含まれていなかったことだけは、せめてもの救いでした。

3月3日の千葉ジェッツ戦で人生で初めて大きな怪我を経験しました。

今回の怪我の瞬間について色んな憶測もあるかと思いますが、私はゴールに向かって最短距離を狙って行ったのに対し、相手選手はそれを防ぐためにゴールまでの最短距離を防ぎにきた。ただそれだけでありそれ以上でもそれ以下でもありません。

プロの世界で大きなものを背負って戦っている両者には引けない部分だってありますし、いつまでもあの瞬間の原因究明をすることは不毛な行為であると考えています。

選手は一つ一つのプレーに怪我のリスクを負ってプレーしていて、
あの瞬間も怪我をする可能性がある中で私はあの選択をしました。

あの時の接触によって相手選手が大きな怪我を負っていた可能性だってあったわけです。
なので、怪我をしたのは自業自得であるのと同時に、自身の状況判断である以上は後悔もなければ、何かを恨む気持ちも一切ありません。


チームやファンには大きな心配と迷惑をかけてしまいましたが、
まだシーズンは終わってないですし最後までやれることはあるのでやり続けようと思います。そしてさらにパワーアップして戻ってくることを約束します。

「死ぬこと以外かすり傷」



怪我をした後に一番重要になってくるのは物事の捉え方です。
過去に戻ってやり直すことができるわけでもなければ、落ち込むことで誰かに同情されても経過が早まるわけでもない。

いつだって起きてしまった事実よりも、今何ができるのかを考え続けることが最も重要だと考えます。

また、プロスポーツ選手は怪我してもプロスポーツ選手であり続けないといけないと思っています。

小さいころに夢見たプロスポーツ選手の姿はスーパーヒーローのようなもので、敵にやられてもすぐに立ち向かう姿であり、落ち込んでいる姿ではありませんでした。プロスポーツ選手の役割と魅力はコートの中だけで発揮されるものではなくて、コートの外でもできることはあると思います。

同じように怪我で悩まされている人たちにとって、怪我をしたプロスポーツ選手の再び立ち上がる姿は、その人たちのこれからを照らし、寄り添うことができるはずです。

「今はゆっくり休んでください」
という優しいお言葉をかけてくれる人もいますが、これからの自身の姿が誰かを照らすことができるかもしれないので、止まらずに前に進み続けようと思います。


怪我をした後、多くの人に心配していただく中でインスタグラムのストーリー機能で皆さんに一番に伝えた言葉は「死ぬこと以外かすり傷」という言葉でした。

この言葉は僕にとっては魔法の言葉であり、おまじないみたいな言葉でもあります。

長いキャリアを振り返ったときに、この怪我でこれからのプレーや人生が良くない方向へ転んでしまうのであればそれは大怪我になってしまいますが、いつの日かこの怪我のおかげでさらに成長できて、いい方向に向かえたのであればそれはかすり傷みたいなものだと言えるのではないでしょうか。

怪我の大小に関しては、今は大怪我かもしれませんが、これからかすり傷にできるかどうかはこれからの行動次第なので下を向いている暇などはありません。

強がりに聞こえるかもしれませんが、そんな想いを込めて自分に言い聞かせるようにあの言葉を選んだのでした。

この怪我の大きさは数ヶ月後、数年後と、あとになってからわかるでしょう。

「おい!見とけよかすり傷!!」


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