見出し画像

自己負担額、急増

2023年8月9日。
これはドイツの話。

数週間前の話だが、介護保険に関するニュースを読んで驚いた。3度の食事など被介護者が必要とするサービスをすべて提供する完全入所介護施設の自己負担額が7月時点で月2,548ユーロ(全国平均)に達したというのだ。円に換算すると約40万円である。このほか要介護度に応じて介護保険が最大2,005ユーロ(31万円)支給され、施設に払い込まれる。

自己負担額は急上昇しており、昨年7月時点では2,200ユーロだった。1年で16%も上がっている。19年7月(1,795ユーロ)からの上げ幅は42%である。

3つの要因が自己負担を大幅に押し上げている。1つはエネルギーその他のコストの上昇、つまりはインフレである。

2つ目は人件費の上昇だ。介護は仕事がきつく責任が重いにもかかわらず、給与水準は低い。高齢化が今後、一段と進展し要介護者が増えていけば、人材不足に拍車がかかるは確実である。人材不足を緩和・解消していくためには給与を大幅に引き上げる必要があり、人件費の上昇は公正・妥当と言える。

適正な介護の質を確保できるよう施設に実質的な人員増強を義務付ける法律が施行されたことも入居者負担の増額につながった。

これまでは年金と老後の蓄えを使うことで自己負担額を自らねん出できる人が比較的多かった。だが、急速な負担増を受けて費用を捻出できなくなることへの不安が入居者の間に広がっているという。

自弁できない入居者が施設を追い出されることはない。資産がほとんど底をついた場合は、生活保護を申請すれば不足分が賄われるためである(配偶者に資産があったり自らの子供が高額所得者である場合は不可)。ただ、生活保護を申請することに対しては強い抵抗感を持つ人が多いのも事実である(低所得の高齢者のなかには恥ずかしいがゆえに生活保護を申請しない人が少なくない)。そうした事情を踏まえた制度改革が必要だろうが、妙案はないというのが現状だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?