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【国際競争力#6】清華大学の経済管理学院 顧問委員会

前回前々回の記事では中国が製造業強国になるまでの軌跡を書きました。2010年以降は廉価な労働力に依存した製造業から高付加価値の製造業に転換する大方針が実施されました。この中でも高度な技術・ノウハウを取得した人材の獲得が重要で、千人計画・万人計画などの人材招聘プログラムが実施されました。今回の記事では追加資料として清華大学の経済管理学院・顧問委員会を紹介します。この内容を見れば、いかに中国が徹底して海外からのノウハウを習得し、国際競争力を上げてきたかのヒントになると考えます。

精華大学経済管理学院・顧問委員会

精華大学と言えば中国のトップクラスの大学で、現在の最高指導者である習近平氏の出身大学でもあります。同大学の高い評価は中国国内からだけではなく、大学の世界ランキングでも毎年上位にランクされています。代表的な世界大学ランキングでの最新の順位は、Times High Education World University Rankings 2023で16位、QS World University Rankings 2023で14位となっています。ちなみに、日本の大学の最高位はいずれのランキングでも東京大学で、Timesでは39位、QSでは23位となっています。

精華大学経済管理学院・顧問委員会とは、もともとは1990年代後半に朱鎔基首相が強力に推進していたWTO加盟のための経済貿易研究を目的として2000年に設立されました。現在は、委員たちに人材養成の協力や米中の経済貿易や金融関係などに関してWin-Winの関係を保てるように働きかけ、グローバル(特に米国)における政界・財界の有力者が多数委員となっています。

同委員会のホームページから入手できる委員のリストを基に、2023年6月時点で最新の(2022年12月)委員の一覧を以下に紹介します。委員会メンバーの多くが中国外のメンバーであり、リスト中、オレンジ色で示しました(香港は中国の一部扱いで白色としました)。また、日本でよく知られている組織名はカタカナで表記しました。

精華大学経営管理学院顧問委員会
出典:https://www.sem.tsinghua.edu.cn/wj/2022---.pdf

言うまでもなく、本リストには世界超一流の企業経営者やビジネススクールの学長の名前を見ることができます。

さらに、赤字で記したブラックストーンCEOのStephen A. Schwarzman氏は清華大学内に「シュワルツマン書院(蘇世民書院)」という各界のトップリーダーを目指すグローバル人材養成機関を設立しました。シュワルツマン書院には、ハーバード・MIT・スタンフォードなど世界トップの教授陣を招聘し、卒業生を顧問委員会メンバーが経営する企業で実習させるというエリート養成学校であります。

中国はもともと「キャッチアップ型」で国際競争力を強化していきましたが、西側からのノウハウ取得をここまで徹底して行っているのです。また、軍事や外交では米中貿易摩擦など対立も見られますが、経済分野で米国・ドイツなど西側諸国と中国は非常に密接に協力していることがわかります。また中国は台湾とも対立しているはずですが、フォックスコン代表のテリー・ゴウ氏の名前も確認することができます。

政治・外交・軍事上での対立が必ずしも経済活動に反映されるわけではなく、政治的対立があるときも裏では経済的連携が進んでいることが示唆されます。

ちなみに上記リストに入っている日本人はソフトバンクの孫正義氏一人です。過去には元ソニー会長兼CEOの井出伸之氏も入っていましたが、同氏は2022年に死去したため外れたと推測します。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考資料

遠藤誉(2018)「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか、PHP研究所
※オンラインで公開されている参考文献は本文中にリンクを埋め込みました



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