見出し画像

スマホ依存を脱却するため「まぬけ携帯=ダムフォン」を探してみる

(サムネイル:Light Phone Ⅲ 公式サイト

みなさんはダムフォンをご存知だろうか。

インフルエンサーやZ世代の若者たちは、スマートフォンではなく、通話とメールしかできない「ダムフォン(dumb phone)」を持つようになっているとCNBCは報じている。

https://www.businessinsider.jp/post-267724

物心ついた頃から身の回りにはネットワークが溢れ、中高生の頃にはスマートフォンに浸れるようになった私たちの世代(90年代〜00年代生まれ)。最近はSNSや動画共有サイトが無数に氾濫し、日々の可処分時間は手元の小さなスクリーンに吸われ続けている。

そんな状況の中で、欧米の若者世代を中心にデジタルデトックスを奨励する価値観が盛り上がりつつあるようだ。周囲の生活に目を向け、数多のインフルエンシングな扇動や煩雑な広告に左右されない自分なりの価値観を持って生きることで幸福度を上げようという思考は私も大いに賛成できる。

ということで注目されているのがひと昔前のガラケーや、極端に機能を制限したスマホ「ダムフォン」たち。間抜けな携帯電話、という愛称でくくられているそれらをあえて使う試みがとても面白い。


古いiPhoneを使う喜びとその限界

かく言う私も立派に「ダムフォン」といえる2015年発売のiPhone 6sをメイン機として使っている。最低限の純正アプリは動くものの動画共有アプリやゲームなどもってのほか(すぐアツアツに発熱して充電残量が激減する)。しかも通信回線はpovo 2.0の非課金状態。Wi-Fiのない外でもいわゆる低速制限がかかった状態の128kbpsで貧乏くさく生活している。

現状はこれで十分に満足しているしオールドな筐体も手に馴染んで好きなのだがいずれは限界が来る。具体的にはiPhone 6sが動かせる最も新しいiOS 15で必須サードパーティ製アプリが動作対応しなくなったときがそのタイミングだろう。

  • 仕事の連絡に使うTeams、Outlookなど

  • LINE

  • povo2.0アプリ

  • ブラウザ用広告ブロックアプリ(280blocker)

これらがサポートを終了したら私は他の新しい端末への乗り換えを余儀なくされる。

そして新しい端末を探すにあたり、いいなと思う条件は下記のとおり。

  • 筐体サイズ小さめ

  • 5〜6万円程度

  • イヤホンジャック搭載(最新スマホではほぼ絶滅危惧種だが…)

  • なんか持っていて面白い

これらをなるべく満たす範囲で次の乗り換え先を探しているが、なかなかドンピシャなものはない。イヤホンジャックがなくてよいのであればiPhone 12 miniもよい(中古価格で4万円台も出てきている)が、あまり面白みはない。

理想を言えばもっとも好きなデザインのiPhone 5s / SE 筐体で新しいOSが動けば最高なのだが…。あるいは私が推しているNothing Phoneにminiシリーズが出れば即買い。ただ現在の世界的なスマホ市場において小さい画面サイズの商品は全く売れず、一部のオタク向け需要しかない。私自身はQWERTY配列のキーボード入力でiPhone SE初代を使い倒していたので小さくても全く違和感がないのだが、欧米ではそうではないのだろう。


ミニマルなスマホの買い替え候補

主にアメリカで販売されている件の「ダムフォン」も含めいくつか買い替え候補を絞ってみたので、私と同じように「なるべく安く小さい機種が欲しい」方は参考にしていただきたい。

①Pixel 4a

https://kakaku.com/keitai/smartphone/model/M0000000801/

Google謹製のブランドとして2020年夏に発売されたPixelシリーズの廉価版。iOSと違いAndroid OSのサポートは引き際が早いので2023年末のアップデートを最後にサポート対象外となった。中古で¥15,000くらい。

それでもまだ多少はどのアプリも動き続けるだろう。魅力はiPhone 8シリーズに近い小さめのサイズで日本人の手にはぴったりのホールド感。イヤホンジャック搭載なのもナイスだ(イヤホン端子さえあればいいなら次作の5a (5G)でもいいが、多少大きくなる)。

実はこの4a、2021年頃に中古で購入して一度使ったことがある。その時は根っからのApple信者でOSのUIや見栄えの悪さに慣れずすぐに手放してしまったが、Androidも許せる今の私であれば問題ないはず。

きちんと作られたスマホで面白みのある選択ではないが、キャリアや製造メーカーに依存しないピュアなAndroidを使えるのはミニマルな観点においてもメリットだと感じる。

②Unihertz Jelly Star

https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hothot/1505324.html

画面は脅威の3インチ。クレジットカードサイズの超コンパクトAndroidスマホだ。2023年発売で現在は新品でも¥33,000ほど。前作Jelly 2と違い日本版は発売されておらず、FeliCa非搭載なのが好みを選びそうではある(私はここ数年FeliCaを使わない生活をしているのであまり気にしないが)。

この小ささできちんとイヤホンジャック搭載なのがありがたい。そして背面の白いLED部分はNothing Phoneよろしくピカピカと光る模様。かつてのゲームボーイなんかを思わせるスケルトン仕様だったり、どことなくy2kっぽいトレンドを取り入れているのが面白い。

理屈はいいからとにかく小さいスマホが欲しいという方にはぴったりの選択肢ではないだろうか。

③Mode1 RETRO II

https://kakaku.com/keitai/smartphone/model/M0000001037/

2023年発売のガラケー型Android搭載スマートフォン。現代でこれを持っていればポケットから出すたびにひとウケすること間違いなし。価格も2.5万円前後と非常にお手頃なのもよい。

中身は完全にAndroidで、タッチ操作可能なのはリスクヘッジとして助かる。しかしそうなるともはや外部キーボードが備え付けられたスマホであり「ミニマル」ではない。イヤホンジャックがないのも私にとっては微妙な点だ(といってもガラケーはそもそもイヤホンジャックがついていないものが多かったが)。

高齢者向けにしては中身がスマホすぎるし、スマホ世代ならわざわざこの外観である必要がない。レトロ趣味として持つ場合は別としてどのような層がこれを欲しがるのか疑問だが、面白い機種であることは間違いない。

④Light Phone Ⅲ

https://www.thelightphone.com/shop/products/light-phone-iii

ここからが正真正銘の「ダムフォン」。こちらは2025年の出荷を予定している究極のミニマルスマホシリーズLight Phoneの三世代目、Light Phone Ⅲだ。

まずコンセプトからして最高。独自のLight OSはスマートフォンに奪われている時間を極限まで最小化することを目的に作られており、

  1. 連絡手段は通話とSMSのみ

  2. アプリの追加は不可

という強気の設計が男心をくすぐる。それでいて地図、アラーム、カレンダー、音楽再生など本当に必要な機能はしっかり搭載してくるバランス感覚が秀逸だ。デザインも強烈にカッコよく、プロダクト感のあるネジ止めとシンプルな背面が素敵。

https://www.thelightphone.com/shop/products/light-phone-iii

一応公式サイトでは日本の大手キャリアSIMのサポートを謳ってはいるが実際のところは試してみなければわからない。また技適の有無が不明(おそらくわざわざ取得しなそう?)なのも懸念点だ。さらに現時点ではOSレベルで英語入力しかサポートしていないとこのこと。つまりメッセージやメモはローマ字でしか打てない。うーむ……。またイヤホンジャックがないので結局USB-Cとイヤホンの変換コネクターを持ち運ぶことになり(Bluetoothも使える模様)荷物が増える。

値段も期間限定のプレオーダーで$399(6.5万円ほど)、正式な値段は$799(13万円ほど)と安いとは言えない。極小のニーズに向けたオンリーワンの存在感を放つロマン端末なのでこれは致し方ないだろう。

日本ではLINEなど外部メッセンジャーアプリが必需品であり(電話回線の使用やSMSは通信料がかかり自分と相手双方に負担が大きい)、現実的にこれ一本で運用するのは4Gガラケー以上に修羅の道となるだろう。せめてEメールだけでも送れれば話は違ってくるのだが……。あるいはこれにテザリング機能を持たせて、通話とSMSができるポケットWi-Fiとし、普段はそれ単体で生活して必要なときのみPCと併用で持ち運ぶ形にすればかなり現実的な運用ができたはずだ。見た目がカッコいいだけに相当惜しい商品である。

いやしかしそもそも「外で緊急以外の連絡なんかすんな」という製品なのだからそれが正しいのか。PCが家にあればスマホアプリの併用が必須のLINEは使えないとしてもそれ以外で連絡が取れるのだし。うーん、ガジェットとしての説得力は大いにあるぞ。

⑤Bigme Hibreak

https://store.bigme.vip/products/bigme-hibreak-smartphone?variant=43652835180723

見た目は普通のスマホだがE-ink(電子ペーパー)ディズプレイを搭載しているのがBigme Hibreak。カラー版とモノクロ版があるが、ミニマリストならやはりモノクロ版一択だろう。一応日本語対応とソフトバンク回線への対応もしているらしく、並行輸入品はモノクロ版で¥35,000〜¥45,000ほど。2024年発売。

これのよい点は、中身がAndroidだということ。その気になれば普通のスマホと同じような使い方ができつつ、ディスプレイがめちゃ遅で目に優しい電子ペーパーなので強制的にスマホ離れができる魅力がある。本も読みやすいし。

似たような商品でBOOX Palmaという電子ペーパー端末もあるが、これはあくまでタブレットであり、SIMカード不可。音声通話とSMSが使えないということで、メイン機としては使えない弱点があった。

Bigmeはすでにいくつか電子ペーパー製品をドロップしている信頼感あるブランドだが、Hibreakについては発売前ということもあり情報があまりにも少ない。イヤホンジャックも非搭載で、手頃な値段ではあるがいまいち購入に踏み切れないのがネックだ。

番外編:The Minimal Phone

https://www.indiegogo.com/projects/the-minimal-phone-first-e-ink-qwerty-phone#/

2024年夏にリリース予定となっている電子ペーパースマホ。その名もズバリThe Minimal Phone。調べてみるとこういう類のローテク系スマホはまだまだ存在するらしいが、そのほとんどがクラウドファンディングのプロジェクトだったりする。中でもこの機種はBlackberryのような物理キーボードが逆に新鮮で非常に興味をそそられたが、プロジェクトの実態はどうやら信頼性に欠けるものだったようだ。

▲こちらの記事が詳しい。


小型スマホ難民です

今は一旦iPhone 6sで満足しているのでしばらくはこのまま使い続けようと思う。がしかしそのうちこの土地にも終わりが訪れる…難民です。

いくつか挙げた候補の中でもUnihertz Jelly Starはなかなか現実的なラインを攻めた選択肢だと思う。本当に今のスマホが使い物にならなくなったらこちらに乗り換えてみてもいいかもしれない。

いや、よく考えたらこうやってスマホのことについて考え続けているのも「スマホ依存の脱却」からは遠ざかっている気がしてきたな…。素直にみなと同じiPhoneを買ってガジェットオタク的なことは考えず生活するのがいちばん健全で脳のリソースを食わないような気もする。

ミニマリズムの道は答えがなく、果てしなく険しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?