予想外の爽快なおもしろさ!映画『変な家』
ライター・雨穴(うけつ)原作、ウェブメディア「オモコロ」記事をもとにした書籍・漫画がいよいよ映画化。いちオモカスとして映画『変な家』を鑑賞してきた。
なかなかよかったですよ!以下、ネタバレを交えるので観に行く方は注意。(本noteの画像引用はすべて公式サイトまたは予告編から拝借しています。)
総評:予想外に面白かった
ふだんは誰もいない公開終了間近のレイトショーが好きな私だが、久しぶりに休日午前の回をチョイス。シアターに入ると若いグループの観客が多くほぼ満席で、皆ポップコーン片手にワイワイと明るい雰囲気だった。
冒頭からジャンプスケア満載できちんと「ホラー」を仕掛けてくる本作。至る所から「キャ!」「うわっ!」と若い叫びが聞こえてきた。ひとり静かに観るのとは違い、観客が一体となって盛り上がる楽しい映画体験だった。
映画好きとしては細かいツッコミどころや煮え切らなさがなかったわけではないものの(それらの点についても余計な試みがら後ほど記述する)現代の和製ホラーとしては充分「アリ」な出来だったように思う。
2時間かけてしっかりと怖いシーンを散りばめながら脚本の破綻もなく観客の興味を惹き続けたというだけでかなり成功した部類に入るはずだ(と言ってしまえるほどに近年のJホラーに対してはハードルが下がっている証拠でもあるのが悲しいが)。
ミステリー作品だった原作をあからさまなホラーにされてしまったという点で戸惑う声もあったようだが、これ単品の映画作品として観るならば全く問題なし。むしろ原作をそのままやってもネタがわかっているぶん魅力は半減していただろう。
ティーン向けのエンタメ作品として楽しむならば大満足の合格点だった。
動画の内容はほんの序章
実は私、原作の本は読んだことがない。この動画の内容をどうやって2時間にするのだろうと思っていたら「家」を調べるのはほんの導入部分でその背後に隠れた巨大な闇に立ち向かっていくパートがメインとなる。
なんやかんやあって手がかりをもとにたどり着いたのは、山奥の小さな村。遠からず血縁関係にあるという怪しげな住民たちがコミュニティを形成しており、それを締めるのがヒロイン・柚希のおじいちゃん一家「片淵家」だ。どうやらここでは奇妙な儀式が行われており、失踪事件の噂も跡が絶えないとか……。
って"村系"じゃないですか!やったーーー!
伊藤潤二の漫画『サイレンの村』や『呪詛』『ミッドサマー』『ヴィレッジ(日本のやつ)』といった小規模村落×凄惨な事件系の作品が大好物の私にとって、今回の『変な家』も即座にお気に入り認定。得体の知れない儀式とか土着の宗教に縛られ続ける一族とか、ゾクゾクしてくるな(変な人)。
そこからは絵に描いたように謎の祭壇、グロい儀式、血みどろの結末が待っている。いやーいい。小道具もセットもしっかりしていたし、世の中の業と闇を煮詰めたような"黒い"宗教が持つ独特の気持ち悪さをきちんと描けていた。
そう考えると、本作の予告編は近年の見せすぎなものに比べてしっかりと抑制が効いていたように思う。もちろん前半「変な家」パートだけで訴求力のある内容だから、という理由もあるが、製作側としても気合を入れていたであろう「変な村」パートを全く予告に組み込まず観客に挑んだ広報担当の方には拍手を送りたい。おかげさまで楽しさが倍増した。
柚希さんがかわいい
主人公・雨宮が変な家についてYouTubeで配信をしていたところ一通のメッセージが。この家について心当たりがあるという。さっそく会ってみると現れたのは陰気でどこか不安げな女性・柚希だった。果たして敵か味方か、謎めいた彼女と行動を共にしながら雨宮はどんどんと闇の奥へと突き進んでいく。
好き!!!柚希さん!!!うわあああーーっ!!!
ホラーによく似合う色白で幸薄な雰囲気、重めの黒髪、笑顔を忘れてしまった無表情さ、中学生の頃から変わらないんだろうなという服装の地味さ、厚手デニールのタイツが似合う感じ、すべてが好きです。
演じるのは川栄李奈。映画『亜人』のときに初めてじっくり見て実写映えするひとだなと思っていたが、今回もかなりいい役で鮮烈な印象を残してくれた。もっと見たいです。
続編をやる前にスピンオフで柚希さんの日常を描いていただきたい。ふだんどんな家に住んでるのかな、とかどんな朝ごはん食べてるのかな、とか暇なとき何してるのかな、とか知りたい。2時間半のフルIMAXでお願いします。池袋にレーザーGT観に行きます。
今回の映画、全体的にキャストが豪華でそれぞれいい味を出している。川栄李奈につづいて印象的だったのはやはり栗原さん役の佐藤二朗。妄想癖でいつもの挙動不審な感じがありつつ、我が道を行きながらも不思議と頼りがいのある「中学生男子が憧れるちょっと変なバディ」を見事に体現していた。
柚希の母役、斉藤由貴も記憶に残る。ドラマ等でも毎度いい演技をしているが今回も怪演で、すべての不幸を背負った母親を見事に演じ切っていた。
金田一……。この事件も鮮やかに解決してくれ……。脳内で勝手に犬神家の一族・愛のバラードが流れる中、無口で気味の悪い当主を石坂浩二が演じていた。あまりセリフもなく見せ場といえばナタで左手チョンパのラストくらいだったので、もう少し演技の余地をあげても良かったように思う。しかしなんにせよ座っているだけで貫禄があったのは間違いない。
POVってやっぱり怖い
本作では暗ーい室内を探索するシーンが何度も登場するが、どれも主人公・雨宮が手に持つカメラの主観映像を効果的に挟みながら進行していく。いわゆるPOVの手法で、これがやっぱりどうしても怖い。画角が狭まり明かりは不十分になるため、焦らしも効いている。もっとよく写して!いややっぱり写さないで!観客を登場人物と同じ密室に閉じ込める効果が存分に発揮されていて、非常に緊張感のあるカットが多かった。
それにしても雨宮の手持ち映像、カメラのフィルター機能でもオンにしているのか、撮って出しにしてはものすごくおどろおどろしくてコントラストが高い。撮る段階で自ら怖くしにいくなんて演出家だな〜と思いつつ、柚希さんが映り込む時はもっと可愛く映る柔らかいフィルターにしてあげてよ、とも思う。顔が怖すぎる。
本作では「音」も効果的に使われていたように思う。爪で引っ掻く音、栗原さんがパフェをぐちゃぐちゃにする音、左手供養の音。うわ〜という気持ちをひき立てるいい役目を担っていた。
本家に突撃した際に会ったおばあちゃんの急な「ヒッ!」という笑い声は不意打ちだったな。劇場でも「わっ!」と女性が大きな声を上げていた。
ホラー描写はきっちりとぬかりなく仕上げられていて、お出かけやデートで暇だし怖い映画が見たい、くらいの需要は軽々と満たしてくれる内容になっていたと感じる。
気になった点
ここからは、大変余計ながら観ていて気になった点もいくつか挙げていく(そもそもが映画初心者でも観られるつくりを目指しているので細かいツッコミは野暮というものだが)。
雨宮、防犯意識が低いな
明らかに裏社会と繋がっていそうな変な間取りの家についてYouTubeで大っぴらに取り上げ、再生数を稼ごうとする雨宮。関係者を名乗る柚希が現れたため、話を聞こうと呼んだ先はなんと雨宮自身の部屋だった。いや、本当に善意の協力者かどうかわからない人を家に上げちゃ危ないよ!
自分の動画に出演させるためスタジオに呼んだ、という意図はわかるのだが、それにしてもまずは喫茶店でお話を……とかなりそうなもんである。動画としてリアルなドキュメンタリー感を出すという意味でも、そこでインタビューを撮影または録音してしまえば良かったではないか。
またこの状況では、柚希の防犯意識も気になる。姉の行方を知りたい一心で藁をも掴む思いなのはわかるが、"雨男"が片淵・殺し屋一家側ではない保証はどこにもない。それを抜きにしても、インターネットの配信業をしている独身男性のアパートに単身乗り込むというのはあまり褒められたものではないような気がする。雨男の仮面の下がまともな人でよかった。
まぁ、皆しっかり防犯に努めていてはホラーが始まらないか。
斉藤由貴、ほんとに襲ったんだ
言わんこっちゃない、雨宮の住所は片淵側にバレてしまい、斉藤由貴が仮面をつけて襲ってくる羽目になる。この映画をいい感じに曖昧にしている魔法のアイテム「幻覚剤」をどうやってひとり暮らし男性に投与したのかは謎だが、とにかく雨宮は仮面の女に「関わるな!」と忠告を与えられ、首に傷を負わされることとなる。
このシーン、あまりにも現実離れしていたので「あ、夢だな」と思ったがその後目覚めた雨宮が本当に首を怪我していて「え!?」となった。あとあと幻覚の混じった恐怖演出付きの雨宮視点映像だったことはわかるものの、どうしてもホラーシーンを入れておきたい制作側の意図が透けて見える。
DJ松永は「マジもんじゃねえか!」のとき目が変になってたけど、『リング』みたいにお化けを見たわけじゃなくて幻覚剤の影響ってことなんだろうな。
片淵家、けっこう優しいな
片淵本家(現在は住宅というより生贄を招いてもてなし殺すための屋敷、という雰囲気か)にずかずかと上がり込んだ雨宮たち。当主たちに見つかって怒られるかと思いきや「ゆっくりしていきなさい」とまさかの寛容なおもてなしを受けた。
自分たちだけになったのを確認し、様子がおかしかった片淵姉に話を聞きにいくことにした一行。栗原の推理をもとに家を探ると壁の中に裏ルートを発見!洞窟の奥に祭壇を見つける。しかし戻ってきた片淵家に運悪く見つかり、頭を殴られ気を失ってしまう。目を覚ますと姉夫婦と一緒に独房っぽいところに監禁されていたのだった。
いやいや、片淵家の皆さん、家の秘密を外に漏らす気満々の怪しい素人YouTuberが突撃してきたんだから、もうちょっとちゃんと縛るか隔離するか殺しておきなさい!(「部外者は殺しておきなさい」新書のタイトルみたいだな。)なぜ仲間たちや、洗脳が解けた姉夫婦といっしょにしておくのか。みんな健康そうだし協力して脱出してしまうではないか。
漫画『マイホームヒーロー』しかり映画『ミッドサマー』しかり、あるいは現実のカルト宗教系の事件を見てもそうだが、外に出せない秘密を抱えた組織・集団の排他性は凄まじい。というより、そこまで徹底していないと現代社会においてコミュニティを存続させることは不可能に近い。入ってきた外部の人間を絶対に外に出してはいけないどころか、少しの情報すらも漏らしてはいけないのだ。
もし雨宮のカメラがインターネットにつながっていてお宅訪問の様子がYouTubeライブ配信されていたらどうしていたのだろうか。洞窟内は電波が来ないから生配信の心配はないだろうが、それにしても映像を撮られているし、カメラを取り上げるだけでは不安が残る(Wi-Fiデータ転送が可能なSDカードもあるし)。スマートフォンを没収されるとか、この村は圏外だ、というような描写が少しでもあればよかったが、特にその点で困っている様子はなかった。
まぁ、真面目に考えると映画のテンポ感や尺を考えれば洞窟内の監禁→儀式→脱出の流れに行くまでに夫婦の秘密告白は手早く済ませておきたいのだろう。皆をガッチガチに縛りつけてしまっては、理想の展開に戻るまで脱出劇のアイデアと時間を要する。それならば5人をまとめて着のみ着のまま放っておいた方がいい。片淵家の手ぬるさも、ホラー映画をテンポよく進めるための優しさだ。
子供が登場、こら安心だね
終盤で子供を暗闇に閉じ込めたまま育てて儀式に使う「左手供養」の全貌が明らかになる。呪いを回避するための一族の奮闘が「左手のない遺体」を伴う一連の事件につながっていた。
雨宮は儀式用に育てられた子供・トウヤくんに手を落とされそうになる。「やれー!」と片淵おじいちゃんの発破もかかるが、もうこの時点で「あぁ、雨宮助かってよかったね」となる。ティーン向け映画で子供が直接手を汚す描写などあるわけがないからである。
これは構造上の問題なのだが、映画(特に子供も観るレーティングGの作品)で子供が死んだり人を殺したりすることはまずない。個人的には子供もひとりの人間で物語上必要なら作品の犠牲にして構わないと思っているのだが、多くの人の目に触れさせる以上そうもいかないらしい。
映画『CUBE 一度入ったら、最後』では子供がCUBE内にいる時点で「あぁこいつが最後に助かるんだな」と思うし、映画『来る』では「なんだかんだこの子供が最後は助けられて終わるんだろうな」と思ってしまう。
ホラー映画に子供を登場させるなら、緊張感の緩和につながる使い方ではもったいない。そうではなくて、たとえば『リング』『仄暗い水の底から』『呪詛』のように「この子供を守るためには覚悟を決めて地獄に飛び込み死線を越えなければならない」という視点だけに観客もフォーカスさせた方が効果的だと感じる。
もちろん本作も(そして映画『来る』も)子供を守りたいという親の願いが行動原理となって物語を展開させていく部分はあるのだが、それ以上に「儀式」が最後まで見たすぎて「えー子供がいるせいで中途半端に終わったじゃん」という感想を持たざるを得ない。かっこいい儀式を出すならちゃんと完遂させるか、暴走した登場人物が狂って全員を殺して欲しい。
今回も、トウヤくんが「俺の人生を踏み躙ったな!」と憤って片淵家をナタで惨殺していく血みどろ展開が見たかったのだが、結局そうはならなかった。よかったのかなんなのか。
栗原無双、面白いんじゃない?
▲映画『CUBE2』のようなラスト、どうでしょう
てんやわんやの大騒ぎに乗じて洞窟から這い出てきた一同だったが、外には仮面をつけた村民が!家の外にも出るに出られずの状況で、一方の洞窟からは片淵家の追手が来ている!そうだ、一旦裏ルートに身を潜めよう!ということで隠れていたが結局Here's Johnny!ばりの壁破壊で清次さんに見つかってしまい、絶体絶命のピンチに。
ここの「変な間取りにちょっと救われる」シーン、より面白くなりそうな予感もプンプンした。
鍵は栗原さんだ。せっかく映画の至る所で天才型の敏腕設計士っぽさを発揮していたので、いっそ片淵本家をもっと忍者屋敷のように現実離れしたぐっちゃぐちゃの間取りにし、ハイドアンドシークな見せ場を作ってみたらきっと楽しいはずだ。
というような。建造物の構造で追手を巻く、という映画『CUBE2』ラストさながらの胸熱展開があったら面白そうなんだけどなあ。まぁ、ホラーじゃなくなっちゃうよな、これだと。
栗原さん、危ないです!
猟銃を構えた清次さんに押し倒されてしまい雨宮は絶体絶命。銃口を眼前につきつけて「俺は金さえ手に入れられればいいんだ!」と言い放ち自分の欲望をペラペラと喋り始める様は「あ、こいつ死ぬな」感満載だったのだが、そんな中でも果敢に発砲を阻止しようと栗原さんが決死の飛びかかり!危ない!!!トリガーに指を入れていたら腕を押された反動で引き金が引かれてジエンドだ!!
あわや栗原さんのせいで雨宮の頭部がぐちゃぐちゃになるところだったが発砲はされず、栗原さんは逆に反撃を喰らって倒れ込んだ。ふーあぶない。
と思ったら背後からゾンビの如く蘇った片淵おじいちゃん!ナタをふりかざして清次さんの頭部にぐさり!!これまた危ない!!前のシーンでトリガーに指が確実に入ってたので衝撃で絶対引き金引いちゃいますって!!!おじいちゃん!!!
こっちもなんとか無事。供養に運ばれていく清次さんの左手を見届けながら雨宮たちはなんとか脱出した。いやー危険すぎた。やっぱり、核抑止の話じゃないけど銃口を向けられている時点で主導権は相手にあるんだよな。相当に訓練されてれば銃身を即座に掴んでそらし一発撃たせるというムーブもできるとは思うが、ジョン・ウィックじゃないので無理だろう。みんなも、銃を向けられたら落ち着いて相手を説得しよう。
片淵親子、そっち側!?
全ての戦いが終わり一同は無事帰還。トウヤくんも夫婦の育て方が良かったのか意外とまともそうで、生まれてから部屋に監禁されつづけるという虐待を受けてきたにしては普通の男児に育っているようだった(見た目も健康そのもの)。
そして衝撃のラストシーン。片淵家の幻覚剤・洗脳から溶けた姉と、決死の思いで娘を救った母が並んで話している。微笑ましい会話かと思いきや……
えーーーー!この親子、そっち側だったんかい!!!!
ちょっとセリフ自体はうろ覚えなので申し訳ないのだが、とにかく「洗脳から解けて一族のしがらみから解放された姉」「片淵一族からなんとか家族を守りたい母」という構図が180度ひっくり返ってしまうどんでん返しが披露された。
えーとつまりなんだ、姉はまだ洗脳(とも呪いと呼ばれてもいるが、あくまで薬等も使った科学的に説明がつく範囲の心理的依存だろう)が解けていないということか。柚希に「タスケテ……。」と言って手掛かりとなる住所を渡したあのときや、洞窟内で息子への愛を語っていたあのときは洗脳が薄れかかっていたということだろうか。
母の方は明らかにもとから「片淵側」である。なぜなら彼女のボランティア先がホームレスへの炊き出し団体だったから。殺しても足のつきにくい、家なき老人たちと接する機会を積極的に持とうとしているということは、それが洗脳の影響であれ素面であれ、この映画全体を通して片淵家に加担していたのだとわかる。うーむややこしい。
まぁそうすれば、物語前半で雨宮を仮面で襲った理由は純粋に「家の謎に近寄ってほしくないから」であり、そのあと栗原に問い詰められた際の「本当は守りたかった」というのは口からのでまかせということになる。演技派だなぁ。
まとめ
いろいろとリアリティや脚本の辻褄の部分で気になる点はあった。しかしそれらもこのひと言で全て解決してしまう。「だってホラーだもん」。
ホラー映画というのは、怖ければそれでOKだ。練り上げられた脚本や、怒涛の伏線回収はいらない。演出や演技の全ては観客を「怖がらせる」ためにあり、多少の飛躍や脚色も許される。そうして出来上がった2時間弱の映像がカップルのありふれた思い出になればそれでいいのだし、実際に『変な家』はそれを達成できていたと思う。
なんなら、その辺にある「びっくりさせるだけ」のホラーよりよっぽどマシだ。きちんといいキャラを配置し、キャッチーな映像で興味を惹き、普遍的な家族愛を描きつつ、驚きの展開も用意してみせる。十分だ。そんな中で昨今人気の出ないホラーというジャンル、ティーンも観られる全年齢の内容、予算多めで失敗不可、これらの最大公約数をとった結果が本作品であって、それ以上を望むのは映画オタクの余計なお世話なのだろう。
心の底からプロの大人が全身全霊で魂を注いだ『呪詛』みたいなえげつないホラー映画を日本からも輩出してほしいなと思う気持ちもある。だが映画がビジネスである以上、まだまだその道のりは遠いのかもしれない。
一方で、目を背けたくなるほどに悪趣味なホラー描写への力の入れ具合というのは、日本では今の時代むしろ、より個人的な体験として提供されるゲーム作品の方がよく観られるものではないだろうか。そこに近い位置にある「YouTube動画」も同じようにポテンシャルを秘めている気がするのだが、ネット初の本作品がその潮流に一石を投じるきっかけになれば幸いである。
長々と書いたが、2024年の春を彩る爽快なポップコーン・ホラーとしてお気に入り映画のひとつに加えたい。
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