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2023年読書評24 つづき 日下圭介

「ポケミス全解説」
都筑道夫

これは小説ではなく、本の解説を集めたものです。
主に1950年代の作品を当時書いたものです。

ミステリに興味のない人にとっては意味がないかもしれませんが、ミステリが好きな人にとっては興味深いと思います。

アガサクリスティやアイリッシュなどが現役の頃で、レイモンドチャンドラーの訃報が載っていたりします。今ではとっくに伝説になっている人たちが現役の頃、あるいはデビューした当時のことを書いているのです。

007のイアンフレミングなどもまだ日本に紹介されていなかった頃のことです。
都筑先生は、戦後、10代の頃から雑誌に短編小説を書き、「魔界風雲録」という時代冒険ものでデビュー。その後、翻訳を始め、~といっても英語を読めもしないので辞書を引き引き翻訳し、やがてミステリマガジンの編集をし、その中で自ら評論もし、その後、また作家専属という形に戻り、紆余曲折し、ミステリ作家になった人なのです。
編集者だった頃は英語の本を出勤時電車の中でも、どこでも常に本を四六時中読んでいたといいます。

雑誌の「ぺえぱあないふ」というコーナーでは名を隠して評論していたのですが、それに対し翻訳家の矢野徹が反撃したりしています。都筑先生が書いていたと知らなかったのだろうと思っていたら、解説で、これは両者で仕組んだことだと知ってあきれ、驚きました。

また、英語のフレーズに「帽子屋のように狂ってる」というのがあるそうなのですが、てっきり「不思議の国のアリス」から来たものと思っていると、アリスの方が後で、そのフレーズがあるから「気ちがい帽子屋」というキャラが生まれたとのことです。
なぜ帽子屋が狂っているのかの意味はわからないとのこと。

ところでここに書かれている読書評は1950年代の作者のものですが、現代までに残っている人は非常に少ないということです。
特に日本では翻訳ミステリを読まなくなっていますが、一時期売れても後代までに残る作者は少ないということのようです。

日本の作家も、どれくらいが後世に残るか。
私見ですが、現代に残っているアガサクリスティなどは私はそれほど面白いとは思いません。そして日本の村上春樹などがもてはやされているけれど、果たして、本当に良い作家が淘汰されて残るのかにも私は疑問です。

ただコマーシャリズムに乗った作家が残っているという感も否めません。
今残っている明治の文豪などもそう。
佐々木三津蔵の右門などは面白いけれどほとんど忘れられている。そんな感じだと思います。世界というのは。
・・・碌でもない人間が政治家に選ばれているし、・・・民主主義だから民意だとみなさんは言うのでしょうが、党に所属する政治家の親がいると苦労せずに宣伝費を得、容易に政治家になれるというのも事実。
民意ではないような気がするのです。

歴史に残る芸術も似たようなものかも知れないと思うわけです。



「黄金機関車を狙え」
日下圭介

何か読みたいものはないかと日下圭介の未読を読むことにしました。
私は歴史ものは苦手で、彼の後期の作品にはこのようなものが多いので敬遠していたのですが、重い腰を持ち上げ手に取ってみました。
すると最初の1章は読みにくい、途中放棄しようと思ったのですが、2章を読むとようやく主人公らしき人が出て来たので読み進めることに。

そもそもこの本、あらすじらしいあらすじが書いてないし、主軸がない。
私は本に「主軸」=「主人公」を求めます。そうでないと非常に読みにくいからです。しかしこの作家はしばしば誰が主人公か分からない本を書くのです。
物語は一人の視点がないと読みにくいものです。あるいは章ごとに一人ずつ、二人の目線の場合もありますが、読者が気を載せられるものは必要ということです。
そしてこの作者、誰が善で誰が悪という考え方が嫌いらしく、~確かにその通りだと思うのですが、それが小説を曖昧にしているような気もするのです。

さて物語ですが
昭和初期、数トンの金貨を運ぶ機関車を強奪する計画をする一味と、鉄道会社の面々。
というものです。
しかし盗む方が悪役かというとそうでもなく、彼らにも貧しさゆえの様々な同情すべき理由がある。
鉄道会社の人にも娘を誘拐されて脅迫されているから意地がある。
読者はどちらの視点からも見られるし、金貨を強奪できるかにも興味がある。

私としては、やはり歴史を背景にしている古臭さが性に合わない感じでした。
小説としてもあまり優れてはいないかと。

私はしばしば言うのですが、
やはり作者というもの、時期があり、多くは年を取ると力量が衰える。
宮部みゆきがそんな感じです。ビリージョエルは作品の質が落ちるからと自ら新曲を出さなくなりました、。贔屓の都筑道夫も後期はふるわない。
初期よりもよくなっている作家もいます。
日下圭介の場合も、後期の方はあまりよくないようです。


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