特別条項(36協定)の適用回数を抑制する手段について
ご承知のとおり36協定を締結した場合の残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とされ、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。
そして、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、次の基準を超えることはできず、この臨時的な特別の事情による取り決めを「特別条項」と呼びます。
このうち労働時間が慢性的に長くなっている会社の多くが悩まれるのが➃の特別条項の適用回数制限です。
「臨時的な特別の事情」が年の半分ほど存在する時点で「臨時的な特別の事情」ではないのではないかという話にはなってしまうのですが、どうしてもこれを超えてしまうリスクが高い会社が合法的にそのリスクを軽減できる手段がありますのでご説明させて頂きます。
例えば、1日8時間、週5日勤務の週休2日制の会社で次のような勤務実態があるとします。
この週の残業時間は「3時間×5日=15時間」なので、この勤務実績が毎週繰り返されると月の残業時間は45時間を大きく超え特別条項の適用対象月となります。 次に・・・。
所定労働日の残業時間を減らして、法定外休日に減らした時間分の出勤を求めたとしてもこの週の残業時間は「2時間×5日+5時間=15時間」となり全く同じです。
一方、上記のケースで就業規則により「法定休日は土曜日とする」と特定した場合の残業時間数等は次のように変わります。
特別条項➃の適用ルールは「法定休日労働」を含みませんので週10時間の残業であれば月の残業時間数はおそらく45時間に収まることになります。
但し、以下には注意が必要です。
ここで「週に1日の休日(日曜日)が確保できているにも関わらず会社が就業規則で独自に特定した法定休日を36協定における労働時間規制の法定休日として取り扱うことに問題ないのか?」という指摘を受けることがありますが、これは次の根拠により問題ありません。
まず、労基法第35条の休日の特定は上記の行政通達で明示的に推奨されており、特定された休日は「労基法第35条第1項の休日」となります。
そして36協定にかかる労基法第36条の法定休日とは労基法第35条の休日のことをいいます。
従って、就業規則で独自に特定した法定休日は36協定における法定休日とされることになります。
労働時間規制にかかる法律の趣旨を鑑みれば積極的にご推奨したい手段ではないものの、これを否定できる法律根拠も現状確認できないので、例え賃金を多く支払ったとしても仕事の都合上、特別条項の適用回数をどうしても抑制されたい会社にとっては効果的な手段にはなるかと思います。
ご参考ください。
Ⓒ Yodogawa Labor Management Society