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特別条項(36協定)の適用回数を抑制する手段について

ご承知のとおり36協定を締結した場合の残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とされ、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。

そして、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、次の基準を超えることはできず、この臨時的な特別の事情による取り決めを「特別条項」と呼びます。

①    年720時間以内(法定休日労働を含まない)
②    複数月平均80時間以内(法定休日労働を含む)
※「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」
③    月100時間未満(法定休日労働を含む)
④    月45時間(法定休日労働を含まない)を超えることが出来る回数は年間6回(6箇月)迄

このうち労働時間が慢性的に長くなっている会社の多くが悩まれるのが➃の特別条項の適用回数制限です。

「臨時的な特別の事情」が年の半分ほど存在する時点で「臨時的な特別の事情」ではないのではないかという話にはなってしまうのですが、どうしてもこれを超えてしまうリスクが高い会社が合法的にそのリスクを軽減できる手段がありますのでご説明させて頂きます。

例えば、1日8時間、週5日勤務の週休2日制の会社で次のような勤務実態があるとします。

日:公休
月:11時間(3時間残業)
火:11時間(3時間残業)
水:11時間(3時間残業)
木:11時間(3時間残業)
金:11時間(3時間残業)
土:公休

【合計】55時間労働/週

※特別な定めがなければ週の起算は日曜日です

この週の残業時間は「3時間×5日=15時間」なので、この勤務実績が毎週繰り返されると月の残業時間は45時間を大きく超え特別条項の適用対象月となります。 次に・・・。

日:公休 ※法定休日
月:10時間(2時間残業)
火:10時間(2時間残業)
水:10時間(2時間残業)
木:10時間(2時間残業)
金:10時間(2時間残業)
土:法定外休日出勤:5時間 (週40時間を超える労働時間であるため5時間全てが残業)

【合計】55時間労働/週

所定労働日の残業時間を減らして、法定外休日に減らした時間分の出勤を求めたとしてもこの週の残業時間は「2時間×5日+5時間=15時間」となり全く同じです。

一方、上記のケースで就業規則により「法定休日は土曜日とする」と特定した場合の残業時間数等は次のように変わります。

☑ 時間外労働:2時間×5日 = 10時間
☑ 法定休日労働:5時間
☑ 日曜日は法定外休日となる

特別条項➃の適用ルールは「法定休日労働」を含みませんので週10時間の残業であれば月の残業時間数はおそらく45時間に収まることになります。

但し、以下には注意が必要です。

・特別条項②、③の時間規制には法定休日労働時間を含めて管理する必要がある
・法定休日出勤の回数は36協定で定めた回数に限られる
・法定休日出勤日の労働時間は法定休日割増〔3割5分増〕で賃金を支払わなければならない
・労働者は使用者による休日出勤の指示には基本的には従わなければならないが、正当な理由がある場合にはこれを拒否できることもある。

ここで「週に1日の休日(日曜日)が確保できているにも関わらず会社が就業規則で独自に特定した法定休日を36協定における労働時間規制の法定休日として取り扱うことに問題ないのか?」という指摘を受けることがありますが、これは次の根拠により問題ありません。

労働基準法第35条  
第1項 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

労働基準法第36条
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

昭和23.5.5 基発682、昭63.3.14 基発150
法第35条は必ずしも休日を特定すべきことを要求していないが、特定することがまた法の趣旨に沿うものであるから、就業規則の中で単に1週間につき一日といっただけでなく具体的に一定の日を休日と定める方法を規定するよう指導されたい。

まず、労基法第35条の休日の特定は上記の行政通達で明示的に推奨されており、特定された休日は「労基法第35条第1項の休日」となります。

そして36協定にかかる労基法第36条の法定休日とは労基法第35条の休日のことをいいます。

従って、就業規則で独自に特定した法定休日は36協定における法定休日とされることになります。

労働時間規制にかかる法律の趣旨を鑑みれば積極的にご推奨したい手段ではないものの、これを否定できる法律根拠も現状確認できないので、例え賃金を多く支払ったとしても仕事の都合上、特別条項の適用回数をどうしても抑制されたい会社にとっては効果的な手段にはなるかと思います。

ご参考ください。

〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


<社会保険労務士法人 淀川労務協会>

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