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家庭菜園、園芸

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リン酸多すぎ問題(肥料について)2

前回の続きで、なぜ植物の体を構成する肥料分の比率はN:P2O5:K2Oで大体3:1:2なのに、多くの市販の肥料にはリン酸が過剰に配合されていて、そのことに意味はあるのか、という問題に関する考察です。 住友化学園芸のサイトのガーデニングQ&A>肥料に関するQ&Aでは と、あります。リン酸多すぎ問題の理由の一つは赤玉土や黒土がリン酸を吸着するという性質にあるようです。 リン酸吸収係数 赤玉土は鉢植えの培養土の材料として定番中の定番ですが、よく研究されているのは黒土(黒ボク

リン酸多すぎ問題(肥料について)

有機物マルチ型の不耕起栽培で家庭菜園をやっていると、肥料についてはあまり考えることがありません。最初の一、二年こそあらかじめ漉き込んだ有機物が分解するまでの繋ぎで化成肥料をやったりもしますが、それを過ぎれば草や収穫残渣やらのマルチが分解して肥料になるだろう位の認識で、野菜は大体育っています。本当は定期的に土壌診断を受けるべきであるとは知っていますが、猫の額ほどの家庭菜園に土壌診断はあまりに高価なので、問題が出るまではこのまま放置です。 ところが、コンテナでバラやクレマチスを

鉢上げは段階的に?

仕事の関係で新しく部屋を借りたのですが、そこのベランダがちょうど南向きで植物を育てるのに向いていることに気付きました。早速バラやクレマチスの苗を買って、ネットで育て方を検索します。いつまでも買ってきた小さいポットのままで置いておくわけにもいかないだろうし、まずは植え替えですね。 ざっと検索した結果によると植え替えの時には、徐々に鉢を大きくしていくものらしいです。植木鉢やプランターなどは大抵、何号とか大きさで番号が振ってあります(号数が大きい方が容量も大きい)。簡単なルールと

生ごみと発芽テスト

有機物マルチを使用する不耕起栽培では作物の残渣も畑に残します。トマトやゴーヤ、ブロッコリーを片付ける時の枝葉は勿論、大根葉の食べられないところも畑に撒き散らかしたままです。一時的に畑はかなりみっともなくなります。そして私は散乱した枝葉を見て思うわけです。 これって生ごみとどこが違うの? 世間的には生ごみは堆肥にして畑にまくのがよろしいとされています。理由は何でしょうね。よく判りません。結構熱心に探してみたのですがどの情報サイトもいきなり生ごみを堆肥にする方法から入っていて

輪作なんてしたくない(連作障害について)

私が家庭菜園を始めて以来、折に触れて悩まされてきた言葉が連作障害です(次点がフカフカの土)。 畑の同じ場所に同じ種類の野菜を続けて植えると生育が悪くなるとされており、これを連作障害と呼びます。 その理由として挙げられているのが以下の3つです。 土壌中の成分(肥料)バランスが崩れること 植物に特定的な病害虫が蓄積、集中すること 植物自身が分泌する物質による自家中毒 この連作障害を予防するための対策として以下の3つが挙げられています。 同じ科の作物を続けて植えるのを

失敗しない不耕起栽培の始め方

(表題は「失敗しない」とありますが、家庭菜園ではどんなにうまくいかなくても「失敗」ではないですね。上手に出来ても出来なくても作物を育てることは楽しいです。しかし、noteでは表題をキャッチーにしないとなかなか読んでもらえないのであえて「失敗しない」という言葉を付けてみました。) 土壌生態学的観点による不耕起栽培の実践編です (メリットやデメリットについては別稿)。 用意するもの スコップ 堆肥、腐葉土、枯れ草、落ち葉その他大量の植物性有機物 有機質肥料、化学肥料(8

種、育苗、植物育成ライト

二月に入り、春夏野菜の育苗シーズンの到来です。 四月になればホームセンターの園芸コーナーには大量の苗が並び、あれも良い、これも素敵と欲望を掻き立ててくれます。お値段もリーズナブルで申し分ないのですが、新しい品種や外国の野菜などを育ててみたい時は種でないと入手できないとか、特にトマトは収穫時期を長く取りたいため出来るだけ大苗を育てたいなどの理由で毎年育苗することになります。 今年のトマトは定番のフルティカと、初の海外通販で取り寄せたブランデーマスターという品種でいきます。エ

土作り=土壊し?

野菜を育てるにはまず土作りが重要とはよく言われることです。ウェブの情報に限らず園芸のムック本も一冊丸ごと土作りを扱った本が大量に出版されており、微生物が住みやすいふかふかの土が最適なので、そのためには堆肥や石灰を始めとする様々な資材を土に漉き込みましょうなどと書いてあります。 ですが、この微生物の豊富なふかふかの土という表現には矛盾があります。微生物が豊富だと土はふかふかにならないからです。 土に住むバクテリアは分泌物を出して泥や砂のごく小さな粒を固めていきます。実際、土

土壌生態学的観点による不耕起栽培

土壌中の生物相が豊かであると植物の生育に様々な利点があります(後述します)。土壌中の生物相を豊かにするためには、土壌に有機物を供給することと土壌に余計な擾乱を与えないことの2点が必要です。端的に言えば、餌を与え、住処を守ることで繁栄を促します。 方法論はすでに確立されていると言ってもよく 土の表面を作物残渣や刈草、稲わらなど有機物で覆う(有機物マルチ)か、植物が常に繁茂する状態にしておく なるべく踏まない、掘らない、耕さない の2点だけです。 (1の有機物マルチと植

化学肥料は土壌微生物を殺さない

洋の東西を問わずよく目にする園芸情報の一つに化学肥料は土の中の微生物を殺しちゃうので出来るだけ使わないようにしましょうというのがあります。理由は、長期に渡って化学肥料を使用すると土が酸性化し、さらには土壌中の有機物も減るので微生物の数や多様性が失われるから」ということです。 理由に関しては至極ごもっともです。化学肥料中の窒素成分は微生物の働きによって硝酸塩に変わります。それが蓄積されていけばいずれ土は酸性化するでしょう(現実的には石灰でも撒けば解決する問題ですが)。有機物を

不耕起栽培の三類型

さあ、家庭菜園でも始めるか、となって畑を作るときに最初にイメージする作業は土を耕すということではないでしょうか。農業を扱った漫画などではクワをもって土を耕すという描写がほぼ確実に出てきます。リアルな描写では主人公が農作業の苦難を象徴すべく一人で畑を黙々と耕していますし、ファンタジー世界では主人公の魔法の能力によりちょっと耕すだけで立派な畑がたちまち出来上がります。 歴史的にも人類は営々と土を耕し続けてきました。道具も最初は木の棒を使っていたのが、石を使ったクワを使い出し、鉄