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2021年の読んだ本のこと

2020年に読んだ本で圧倒的に面白かったのが、ベン・マッキンタイアー『KGBの男』だった。(ちなみに2020年愛すべき本は内澤旬子『着せる女』)
2021年は82冊読んだが、昨年ほど強い思い入れはないので、図書館で借りた本を含む13冊をざっと紹介する。本の内容はリンク先の出版社サイトを参照ください。

呉 明益/小栗山 智 訳『複眼人』

2015年6月に『歩道橋の魔術師』刊行イベントの際に、著者がパワポで『複眼人』の紹介をした。その中に海に渦巻くゴミの画像があったのだけは覚えている。
原始の民を登場させたことで、台湾にいる先住民族の神聖が自然に受け入れられ、海や山をていねいに描いたことで、幻想性が増し、環境問題の厳しい現実を浮き彫りにされたように思えた。 ノスタルジーあふれる『歩道橋…』とはまた別のテイストで、スケールが大きく、あまり似たタイプがない小説だった。閻連科とあわせてノーベル文学賞をとってほしい作家です。

アフマド・サアダーウィー/柳谷 あゆみ訳
『バグダードのフランケンシュタイン』

毎日のように自爆テロが起きているバグダード。政府も警察も信用できない状況であるにも関わらず、リーダビリティが高いエンタメ本になっていた。最初は名前を覚えるのに苦労したけれど、キャラが立っているので覚えやすい。すごい本。

コストラーニ・デジェー/岡本真理 訳
『ヴォブルン風オムレツ コストラーニ・デジェー短篇集』

他人にとってはささいなことではあるけれど、当事者にとって分岐点になるような心にささる事象を描くのがうまい。貧乏しかり、いじめしかり、家父長制しかり。忘れていた記憶を呼び起こすようないい短編集でありました。  ヴォブルン風オムレツがどんな料理だったかわからなかったけれども、エシュティ・コルネールシリーズ読みたいです。

カルミネ・アバーテ/栗原俊秀 訳
『偉大なる時のモザイク』

ラテン系のようにもはや笑うしかないような規模の悲劇や、クストリッツァのようなエキセントリックさはなく、淡々と惨劇や望郷を物語る。90年代になにもないバーリの街を歩いたことを思い出すのであった。第2回須賀敦子翻訳賞受賞。

ジョゼ・サラマーゴ/木下眞穂 訳
『象の旅』

改行も『』もない、みっしりと文字が詰まった文体は、ひさしぶりにサラマーゴを読んだ感があってうれしい。愛らしい一冊。検索すると本書がとても愛されているのがわかる。サラマーゴを読む入口になってほしい。

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宮内悠介『偶然の聖地』

アトロクで岸本佐知子さんの熱のある紹介のおかげで読んだ。ダグラス・アダムスの『これで見納め』、『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』と石川宗生の『四分の一世界旅行記』を読んだようなたのしさでした。こういう本をずっと読んでいたいよ。
このあと同著者の『スペース金融道』もたいへんにたのしかった。

石川宗生『四分の一世界旅行記』

Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作家のセミ・フィクション旅行記。
いまは贅沢な大人のひとり旅をしているが、その昔バックパッカーだった頃もあったことを思い出した。 ああああ、こういう感じだった。
>わたしには日本人の言語学者の知り合いがいてね。彼はこの地域の言語研究のために何度もわたしの家に遊びにきたんだよ。
もしかして、こちらの方だろうか。 それにしてもセルビア行きたい。

山口晃『親鸞 全挿画集』

>「思う存分やって下さい」と仰ったものの…。 「ものには限度がある」「言葉を全て真に受けてはいけない」其う云う当たり前な事に気付される三十九歳の秋でした。
とあるように、主要人物の顔も後ろ姿も描いてはいけないとされ、いろいろ苦悩のあとが残るコメントを書きながらも、それでも果敢に攻める著者が好きです。 ため息ちゃんグッズがほしい。しかし、みるたびになんて絵がうまいのでしょうと思うのでした。

成冨 ミヲリ『絵はすぐに上手くならない』

ほんと、うまくならない。だが本書は、自分にあった方向を指南し、どこを上達させればいいのか教えてくれる。この本をデザイン専門学校時代に読んでいたら、どれだけ救われたことか。ため息しか出てこない。

ゴブholmes


獣医にゃんとす
『獣医にゃんとすの猫をもっと幸せにする「げぼく」の教科書』

本書で自動給餌器を紹介してくれたことにより、睡眠不足が解消されたので感謝をこめて。トイレを大きくして、猫のイライラを解消できたのもありがたかった。とはいえ、猫に関する悩みはまだまだあるので、この本を読んでいくつか解消できるかもしれないと思うのでありました。グレインフードはもう買わないよ!

奥山真司監修
『サクッとわかる ビジネス教養  地政学』

なぜ沖縄に米軍基地をおくのか、ロシアが北方領土を手放さないのはなぜかとか。断片的にしかわからなかったニュースがざっくりと理解することができた。とはいえ、新冷戦に入ったこの世界で、小国日本の行方やら世界平和などはなんともはやな事態である。そしてなにより、平和の概念は、国それぞれであることは自覚しなければなりません。

芦辺 拓『名探偵・森江春策』

2021年は宮内悠介と著者を好きになったことが収穫でした。最後の章の謎解きで大笑いしました。こういう展開大好き。

宮田珠己『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』

奇譚旅行記のたのしさ満載。さらに網代幸介のすばらしい絵巻と、大島依提亜の素敵な装丁とあいまって、まことに幸せな読書でありました。 読んでいると絵本の方の『エリック・ザ・バイキング』や映画『バンデッドQ』『バロン』のたのしさも含まれています。なので、故テリー・ジョーンズや初期のテリー・ギリアムの監督で映画化してほしいなどと無理なことを思ったり。 今年は『偶然の聖地』、『四分の一世界旅行記』と奇譚旅行記好きとしては大豊作。お手紙セットとA3のペーパーも買いました。原画展も見たい。

そのほかベスト本リンク

カルロス・フエンテス『フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇』 
エンリーケ・ビラ=マタス『永遠の家』
武田百合子全作品(6) 『遊覧日記』
マイクル・ビショップ『時の他に敵なし』
中島智明『世界一の豪華建築バロック』
ウー・ウェン『東京の台所・北京の台所』
東海林さだお『マスクは踊る』

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#読書感想文 #読書 #2021年の本ベスト約10冊






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