食材・料理における「価格」というバイアス

読者の皆様は
食材を購入する際、あるいは外食でメニューを選ぶ際に
「価格」をどれくらい気にしていらっしゃるでしょうか?

とにかく「安い」ものが欲しい
ちょっと値段は高くても「良い」ものが欲しい
安すぎず高すぎずの間くらいが良い
様々かと思います。

ではもう一つ質問です。
ご自身の「適正な価格」の見極めにどのくらい自信がありますか?

この質問に自信があるとハッキリ言える方ほど
この記事は役に立つでしょう。
もちろん、自信がない方も買い物をする際に頭の片隅においておくと
損はありません。

実はガストロフィジクス研究では
(悲しいことに)
同じ商品でも表示価格が上がるだけでその商品に対する評価が上がる
(満足度が高くなる)
ことがわかっています。


研究例を一つご紹介します(カリフォルニア大)。
(参考:GASTROPHYSICS, Charles Spence

同じ5ドルのワインに
5ドル(実際と同じ値段)の値札をつけて試飲してもらった場合と、
45ドル(実際より高い値段)の値札をつけて試飲してもらった場合を
比較すると、
同じワインでも高い値段を表示した場合に有意に好ましい評価がつけられる(満足度が高い)ことが明らかになりました。
さらに、衝撃的なのは、
この現象が「脳の活動レベル(=無意識レベル)」でも確認されたことです。(高い値段をつけた場合に、内側眼窩前頭皮質(mOFC:脳内の報償中枢の領域)の血流が上昇した。)

この研究が示しているのは
商品の価格には無意識レベルでのバイアス(評価の偏り)をもたらす効果があるという点です。
ちなみにこの効果がもっとも高いのは中間の価格帯のものを使用した場合です。(つまり、あまりにも粗悪なものや明らかにグレードが高いものを使用した場合にはあまり効果がない)
注意すべき点はあくまで「満足度」が変化しただけで、「味覚自体」に変化があった訳ではないということです。


この研究に限らず、価格によって人間の行動や評価が変化することを示す研究例はたくさんあります。(興味のある方は、ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」、あるいはロバート・B・チャルディーニの「影響力の武器」 を読んでいただくと良いでしょう。)

シンプルな例でいえば、
コース料理で3000円、4000円、6000円の三つのコースがあった場合、
ほとんどが4000円のコース(中間帯の価格)を選択する傾向があることが知られています。(=ゴルディロックス効果)

つまり、価格が人間に与える影響というのはそれだけ大きいということです。
今まであまり意識してこなかった方は少し意識してみると無駄遣いを減らしたり、より良い選択ができるかもしれません。


まとめると、以下のようになります。

⑴ 人間の味に対する「満足度」は価格に引っ張られる時がある
 (無意識レベルで)
⑵ 人間の満足度における価格の影響は中間帯の商品でもっとも効果が高い
⑶ 「価格」が人間の行動・知覚に与える影響は大きい

ちょっと心理学寄りの話になりましたね。(笑)

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