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言葉の伝播を飛躍的に高めたテクノロジー5選

 社会人になって30年ほど経ちますが、その間、生産性の向上は常に課題として脳裏を離れることはありません。そして、生産性向上のための重要なポイントはコミュニケーション改善であるという私の仮説も確信に近くなってきました。
 適切な言葉のやり取りというものについて思考を巡らすというのは私の隠れた取り組みテーマですが、言葉を効率的・効果的にやり取りできるようにしてきた革新的テクノロジーの登場についても注目しています。今日はその中の5つを挙げてみたいと思います。

革新1.活版印刷の登場

 言葉の拡散という意味ではこれを外すわけにはいきません。
 15世紀半ばに神聖ローマ帝国(現ドイツ)のグーテンベルクが確立したとされる活版印刷。この技術の登場によってニュースや本の流通速度が飛躍的に高まりました。
 それ以前は、口頭伝承されるか、あるいは書写によって伝承されるかしかない世界で、つまり書写する人の数が複写の限界でした。
 活版印刷はその限界をはるかに上回って大量に文書を再生産することを可能にし、これによって、一部の人しか得ることができなかった情報や知識がより多くの人々に広まることになる契機を作ったという意味で革新的だったと考えられます。
 人々が知識を得るようになった結果、後々、宗教改革や産業革命に繋がっていったという世の中に与えた影響の大きさも見逃せません。

革新2.ゼログラフィの登場

 1960年にゼロックス社から自動複写機が発売されました。その誕生は、活版印刷にはじまる印刷技術の誕生から500年後のことになります。
 活版印刷は同じ文書を大量に生産できる点で画期的でしたが、①違う文書を印刷するためには版を組み替えなければいけない、②印刷のための大きな設備が必要、という弱点がありました。一方で、オフィスで日常的に発生するのは、多様な形式で一つ一つが違う文書であり、活版印刷でこれを再生産するのには不向きでした。
 オフィス向けにはいわゆる青焼きという複写技術が1920年代に生まれましたが、特別な感光紙を使う必要があり、また経年劣化が大きいという問題がありました(平成生まれの方は知らないかもしれませんね)。
 自動複写機の登場は、特別な紙を選ぶことなく、多様な文書をボタン一つで好きな数量だけ再生産できるもので、今では当たり前のように使っていますが、登場した時代にはオフィスの生産性を一気に向上させる革新的なものでした。

革新3.インターネット(そして検索エンジン)の登場

 1969年、米国の国防総省が資金提供したARPAnetが米国内の4つの大学で運用開始されました。資金元を見ても分かるとおり、元々は核攻撃などを受けても全体が停止することのないような分散型ネットワークを作るという軍事的な意味合いが強かったようです。最初は研究機関での運用が中心でしたが、時を経て一般にも開放されて今に至っています。
 当たり前ですが、私が高校生時代(1980年代)はこんな便利なものは存在しなかったので、何か宿題のレポートを書くときに、資料や情報を集める手段は、図書館に行くか、本屋に行くか、電話するか、人に直接聞くか、くらいしかありませんでした。当然手間と時間がかかるので情報入手コストはとても高かった。インターネットによって情報入手コストは極限まで小さくなりました。
 もし自分が若いころにこんなものがあったらだいぶ人生変わっていただろうなと思います。そのくらいインターネット(そして検索エンジン)の登場は社会的インパクトが大きかったと思います。

革新4.SNSの登場

 21世紀の初頭、私たちの生活を一変させる革新的なテクノロジーが次々と登場します。
2004年、Facebookマーク・ザッカーバーグ他
2005年、YouTube スティーブ・チェン他
2006年、Twitter ジャック・ドーシー他
 いずれも個人が情報を発信して他の個人と直接つながることを簡単に実現できるテクノロジーを提供したという意味で革新的でした。当然ながら言葉の伝播速度は速くなり、情報量も増えました。それ以前にもホームページやブログで個人が情報発信して他の個人とつながることは可能でしたが、それなりのスキルが必要だったという障壁を取り去った点で画期的だったと思います。
 すっかりお馴染みのSNSですが、その登場のほんの数年前2001年はITバブル崩壊と言われ経済環境はひどい状況でした。にもかかわらずこのタイミングで雨後の筍のように一斉に花開いたことにも時代の流れを感じます。

革新5.iPhone(スマートフォン)の登場

 SNSが登場した当初、人間とテクノロジーをつなぐ端末はPCを中心としたものでした。ご存知のようにPCは物理的にそれなりの大きさ・重さがあるのと、使うためのスキルを前提とするため、苦手意識を持つ人々が一定数います。ここに端末としての限界がありましたが、その限界を超えたのがiPhoneです。
 登場は2007年とSNS勢の勃興のすぐ後。片手に収まるサイズと軽さ、アプリによって様々な機能の追加が可能、UXを最適化して使い勝手の良さを実現、と肌身離さず持ち歩ける多機能端末となりました。
 これにより言葉の伝播速度はほぼリアルタイムになり、通信インフラの進化もあって情報量が飛躍的に増大。国内では2010年を境にしてPCよりもモバイル端末経由でのインターネット利用率が上回り、デジタル端末の主役となりました。

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図:インターネット利用時の端末の利用率(出所:総務省通信利用動向調査)

まとめ

 きっと私たち人間は、本能的に他人に何かを伝えたいという欲求があるのでしょう。そして、それを後押しするようなテクノロジーがこの数世紀の間に次々と生まれてきました。きっとこれからも更に革新的なテクノロジーが生まれてくるのだろうと思います。それが世の中をどのように変えていくのか興味が尽きません。

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