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2022 TJAR Day7 南アルプス台風襲来

百間洞テント場・起床

起きるとテントが暴風雨により大暴れ!!
右から風がきたかと思うと左から風が来て、台風の訪れを感じました。ここでも進む以外の選択肢はないため、スープを飲み、防寒を完璧(防寒具+レイン)にし、出発しました。物凄い風でしたが、進むことは十分可能と判断。ここでは厳冬期の経験が活きました。雪山の寒さから比べると全く問題ない。低体温の心配もない。
あとは、昨晩痛み出した左もも内側の痛み。
祈りも空しく、すぐに左足は痛くなり、更には、右足も同様の症状が発症しました。。
「なんで、右足まで…」
硬直して動かない。ただ、これも受け入れるしかない。

登りと平地は歩けるので、この先、聖岳と茶臼岳が下れれば、勝算はまだあると自分を鼓舞しました。絶望的な状況でしたが、不思議と完走はできると思っていました。何か自分のなかで、スイッチというか、覚悟が生まれた瞬間。登り始めると、ヘッドライトが何個か見える。きっと、関選手・横井選手・中島選手だ。みんな頑張ってる。自分も行く。
兎岳からみる嵐をまとう聖岳の迫力は凄かった。暴風雨のなか、一歩ずつ登り、聖岳登頂。最後の砦。ただ、下りが不安だったので喜びはありませんでした。
登りの途中で、太ももを圧迫すると少し楽になることに気付き、風の弱いところで、両足太ももをテーピングできつく固めました。

この絶望的な状況よりも、レースが中止にならないか心配でした。
絶対にゴールしたい。

雷鳴のなか、聖岳から聖平へ

聖岳の下りは予想通り、厳しいものになりました。暴風雨と雷のなか、両足の負傷により下れないため、後ろ向きを使いながら、なんとか下りました。大粒の雨と風が打ち付ける。そんななか、時々登ってくる登山者がいて驚きました。登山者は強い。道を譲ってくれますが、下れないため、先に登ってもらいました。心配してくれる方もいました。同じ山に人がいることは安心します。
聖平に近づくと登山道は川のようになり、直上では雷。音と光が同時に。木からの距離を考え、安全地帯を意識。なんとか聖平付近まで降りると、スタッフが心配してくれていました。
「中止の宣告がされなくてよかった…」
早く標高を下げたいため、小屋へは寄らず休まず進むこととしました。ここでもNHKの取材を受けました。
暴風雨と雷のなか、
「お金をもらってもこんなことはやらない。上位でもないのに、なぜ普通の会社員の人がここまでやるのか?」というような質問を受けました。
ここでなかなかきつい質問!?私もそう思います(内心)。苦笑
ただ、自然と口から出てきたのは、
「妻と娘が大浜海岸で待っているから進む、挑戦・完走したい気持ちにかわりはない」そんな回答をしました。優しく見送ってくれました。

聖平にて
NHKの取材。厳しい質問。
豪雨のなか、茶臼小屋を目指して進みました。

聖平から茶臼小屋へ

雷は少し止み、暴風雨のなか茶臼小屋へ向かいました。登り基調のトレイルですが、今の足だと登りのほうが少し楽。時折、後から撮影されている雰囲気を感じますがマイペースに進みました。思ったより長い。
足はもちろん水浸し、ケアも何もあったものではない。ただ、前へ。
茶臼小屋に近づき安心。ただ、下り基調になるとやっぱりきつい。
以下、茶臼岳到着の写真です。弱弱しい。

目はまだ生きている感じです。by staff instagram
小屋のなかでみんなサイン。by staff instagram
by staff instagram
痛くて降りられない。 by staff instagram

暴風雨下の茶臼岳までの移動は長く感じ、消耗したが、茶臼小屋について、スタッフ・小屋の方と話し、少し気が楽になった。ここでもチェックを受けた後すぐに出発。ゆっくりゆっくり進む自分に対し、見えなくなるまで、皆さんが手を振って大きな声で応援してくれた。本当に嬉しかった。とてもゴールできるような姿にはみえなかったと思うが、自分の中ではここでも完走はできると思っていた。

2022報告書

茶臼小屋からの下りは、覚悟していました。
ただ、時間はある、ここさえ下りれば平地。
微かな希望を旨に、休まず下り始めました。
みなさんの応援が嬉しかった。今でも、光景ははっきりと思い出せます。

続く

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